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- March - |
ホンダ・レーシング・F1・チームは、2008年シーズンに向け、全力で準備してきた。1月終わりのシェイクダウン以来、毎週のようにRA108をテスト。メルボルンの前の週には、ヘレスでプライベートテストも行い、開幕戦を前に空力パッケージがさらに向上した。着実に力をつけている。
シェイクダウンしてからずっと開発を重ねてきたけれど、次々にやらなければならないことが出てくるのがF1だ。どのチームもそれは同じ。RA108は、ドライバビリティも信頼性も全体的なパフォーマンスも良くなったけれど、もちろんそれで満足なんてしていられない。ブラックリーでの新車発表でも言ったように、今年は、レースのたびに進化していきたいと思っている。
前回のコラムを書いてから、チームは3度のテストを行った。最初は2月12日から14日のヘレス。ここでは、ドライバビリティと信頼性の向上に集中した。
このテストではかなりの距離をこなすことができてよかった。2日目には、僕が121周、テスト兼リザーブドライバーのアレックス・ブルツがRA108のセカンドカーで103周。多くのデータが収集できた。これが本拠地で研究され、開発に生かされる。
ヘレスのあとは1週間ほどモナコに戻り、冬の間やってきた様々なトレーニング・プログラムを継続してこなした。これからは、遠征とテストで思うようにトレーニングの時間が取れなくなるから、すでに集中してつけた体力と心肺レベルを維持していくためのトレーニングをしていく。最近では、ランニングと、スコットのロード自転車やマウンテンバイクでのサイクリングをやっている。もう少し海が暖かくなったら、海での水泳も始めるつもりだ。
さて、話を戻そう。次のテストに入る前に、僕は東京に飛んで、Hondaのモータースポーツ体制発表記者会見に出席した。これは毎年恒例の会見で、Hondaのモータースポーツ関係者が世界各国から集まってくる。F1からは、僕と、チームメートのルーベンス・バリチェロ、チーム・プリンシパルのロス・ブロウン、CEOのニック・フライ、中本修平というメンバーだった。
MotoGPや、IRLなど、 F1以外でHondaのモータースポーツに関わっている人たちと会えるうれしい機会だ。今のHondaが世界中に大きく展開していることを改めて感じる。創始者の本田宗一郎氏が言っていたように、レースはHondaの遺伝子の一部なんだ。
テストを終え、モナコに戻ってまた少しトレーニング。南フランスの天気は定まらず、何日かは雨が降ったけれど、外に出て身体を動かすこともできたから、調子はよかった。
日本からモナコに帰ったのはバルセロナでのテスト直前。2月26日火曜日と27日水曜日に行われたこのテストでは、雨も降り、マシンのドライバビリティを高める作業ができた。また、様々なレースを想定したテストも行った。予選やレースの練習をしたことで、スタッフ全員、目前のオーストラリアGPへの意識がさらに高まった。ピットストップも含めたレースのシミュレーションもあったから、ピットクルーは本番さながらの練習ができたと思う。
テストの後、療法士のマイク・コリアーと一緒にモナコへ戻った。4日間ずっと天気に恵まれ、次のテストまできっちりトレーニングができた。マイクとは11月から一緒にやり始めたばかりだけれど、彼はもう、僕の身体が何を必要としているのかをきちんと把握してくれている。僕も、彼の能力に全幅の信頼を置いている。開幕前の本格的なトレーニングはこれが最後だったから、彼も僕も、この機会を最大限生かそうと懸命にトレーニングに励んだ。
3月3日月曜日。ヘレスでこの冬最後のテスト。現地にはお昼に着いて、午後はスポンサーやチーム関係の撮影があった。
翌日から2日間、RA108を走らせた。このとき初めてメルボルン仕様の空力パッケージを使った。空力関係はこれからどんどん進化していくはずで、これが第一歩だ。ハンドリングは格段に変わっていたけれど、各チームの中で僕らがどのレベルにいるのかについては、メルボルンでほかのマシンを相手に走ってみるまでは何とも言えない。
最後のテストが終わってから、PRの大きな仕事がいろいろ入っていた。最初は、3月6日木曜日、ロンドンのデザイン博物館。「earthdreams」の仕事始めだ。翌日は東京へ。1カ月弱の間に2度目の来日だ。このときは、Hondaの環境CM撮影。出演は、僕とビーチバレーの浅尾美和選手。彼女はすごくいい人で、楽しく過ごせた。
3月10日月曜日には、ルーベンスと東京でのF1記者会見に出席した。そのあと、一晩飛行機に乗り、オーストラリアへ。いよいよ開幕戦だ。メルボルンはシーズンの幕開けにはうってつけの町だと思う。天気はいつもすばらしいし、雰囲気も最高。地元の人たちはレースを心から歓迎してくれている。今シーズン、いいスタートが切れますように。
ではまた。