vol.161 Rd.17 Brazilian GP

07.10.26

予想を超える気温/路面温度の上昇により、
エンジンが壊れてしまいました

2007年最終戦のブラジルGPは、母国グランプリとなるルーベンス・バリチェロが11番グリッド、ジェンソン・バトンは16番手からのレーススタートとなった。しかし2人は相次いでリタイアを喫し、不本意なシーズンの締めくくりとなってしまった。

 今回は2台ともリタイアという残念な結果になってしまいました。原因はともにエンジンのオーバーヒートでした。車体の戦闘力を100%発揮させたいので、エンジン冷却はいつもギリギリのところまで抑えています。それが今回は、事前の予報より気温が7℃前後高かったために、エンジンの水温油温が上がってしまい、最後にはエンジンが壊れてしまいました。

−レース中は、いろいろ対策を施したと思うのですが。
 もちろんです。回転数を下げたり、混合気を濃いめにしたり、あるいは点火時期をずらしたりといったことをこまめにやったのですが、最後まで持ちませんでした。ジェンソンの方は症状が出てすぐに大きくパワーダウンしてしまったのに対して、ルーベンスの方は20周弱走れましたが、症状としてはほぼ同じです。

−気温が上がると同時に、路面温度も相当高かったですね。
  ええ。路面温度は60℃以上の表示が出ていましたからね。舗装を全面的にやり直していて、表面がかなり黒い色になりました。それもあって、気温より30℃近く上がったのでしょう。ダクトに入ってくる空気は完全に熱風でしたね。こんなに熱かったのは初めての経験です。しかし壊れたのはHondaだけですから、冷却性能のマネージメントなどを含めて我々は弱かったということです。

−レース中のペースはどうでしたか。
 2台とも、アンダーステアがひどかったですね。ジェンソンは1周目にフィジケラと接触して、マシンが上を飛び越えていったらしいのですが、そのときにフロントウイングが壊れたのかと思ったそうです。それぐらいマシン前部のダウンフォースがないと言っていました。ルーベンスのマシンバランスも、同じような感じでしたね。
 ジェンソンは前半、琢磨選手のマシンにくっついて走っていました。以前にも言いましたが、RA107は前のクルマにくっついていると、いっそうフロントのダウンフォースが抜けてしまいます。それで抜きあぐねている間に、いっそうアンダーステアが強くなってしまうという状況でした。

−2007年は田辺さんにとって、どんな1年でしたか。
 そうですね。大きな前進を狙ってマシンを開発してきたわけですが、フタを開けてみるとどうもうまくいっていない。それはどういうことなのか、どうやったら戦闘力が回復するのか。その解析と対応に追われた1年でしたね。
 終盤に向けては、徐々にいい形で来れたかなとは思うのですが、とはいえフェラーリやマクラーレンのレベルには届いていません。これから来季用RA108の開発に集中して、必ず今年の雪辱を果たすつもりです。

【プロフィール】 田辺 豊治(たなべ・とよはる)
1960年5月12日生まれ、東京都出身。
1984年Honda入社。入社直後の1年間を除き、常にF1、CARTなどのレース現場の第一線で活躍。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)レーステストマネージャー兼ジェンソン・バトン担当エンジンエンジニア