vol.157 Rd.14 Belgium GP

07.09.20

予想はしていたものの、苦しい戦いでした。

2年ぶりに開催された、伝統のベルギーGP。Honda Racing F1 Teamは前戦イタリアGPで今季2度目の入賞を果たし、その勢いを持ち込みたかったところだ。しかしトップ集団との戦闘力の差は大きく、予選はトップ10に届かず。さらにレースではジェンソン・バトンが油圧トラブルでリタイヤ。ルーベンス・バリチェロも13位完走が精いっぱいだった。

−これまでは予選一発の速さがダメでも、レースペースはそこそこ良かったわけですが。
 どうしても悪いところが顕著に出て、ペースが上がらなかったですね。特に初日はセットアップの方向性が決まらなくて、どうしようかという感じでした。いつものようにタイヤ比較をしたのですが、クルマのバランスは悪い、路面にはラバーが乗っていないなどで難しい状態でした。土曜日には、なんとかまとまってきたものの、安定した速さで周回を重ねるところまでは行かなかったですね。

−それでもタイヤに関しては、たとえソフトでも何とか使えるメドがついた?
 ええ。ソフトは当初、前後にグレーニング(めくれ摩耗)が出て、タイムの落ちがひどかったんですが、路面コンディションがよくなる決勝レースの、特に後半では、長い周回でも行けるだろうと判断し、それで1回ストップ作戦を選択しました。

−実際のレースを見てみると、ソフトタイヤもかなり安定して性能を発揮していた印象です。
 チームによっては、そうでしたね。でもうちの場合、バリチェロは終盤に向け徐々にバランスが向上して安定してきたんですが、バトンの方は最後までバランスがまとまらなかったですね。

−バトンのトラブルは、突然だった?
 そうですね。ドライバーも気付いて、僕らのテレメトリーにも異常が出ました。油圧システムが正常に作動しなくなって、シフトができなくなるなどの症状につながりました。最悪の場合、エンジンも止まってしまいます。

−次戦はいよいよ、日本GPです。
 ええ。それに備えてスペイン・ヘレスで、3日間のテストを行います。主に空力関係で大きく見直したパーツを、いろいろ試すつもりです。効果があれば、積極的に実戦投入していきます。次戦の富士スピードウェイに限らず、その先の上海、インテルラゴスにもつながる改良になるはずです。

【プロフィール】 田辺 豊治(たなべ・とよはる)
1960年5月12日生まれ、東京都出身。
1984年Honda入社。入社直後の1年間を除き、常にF1、CARTなどのレース現場の第一線で活躍。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)レーステストマネージャー兼ジェンソン・バトン担当エンジンエンジニア