−今季2度目の入賞で、田辺さんもまずはホッとしていますか。
そうですね。フランスGP以来の入賞になったわけですが、あのときのレース同様にロングランのペースが初日からよく、それが結果に結びついてくれました。もちろん上位を走っていたマッサ(フェラーリ)のリタイアにも助けられた面はあります。でもきっちり走った上で、獲得できたポイントだと思っています。すぐ前を走っていたコバライネン(ルノー)にしても、直前にアロンソ(マクラーレン)を抜かせるためにタイムロスしていなければ、向こうのピットイン中に抜けて7位だったでしょうしね。
−ただ自信のあったレース中のペースが、思ったほどよくなかったですね。
ええ。バトンだけでなく、2台ともそうでした。走り始めからアンダーステアがひどくて、初日、2日目のマシンバランスに比べて、レースではかなり変わってしまっていました。一番の理由は、路面コンディションが変わったことだと思いますが、ピットストップでフロントウイングの調整を行ったのですが不十分でした。
−2台ともアンダーに苦しんだとはいえ、バリチェロの方がペースはよさそうでした。
ええ。でも前のクルマにゆく手をふさがれてしまいました。一方のバトンは前は空いていたのですが、アンダーがひどくて高速コーナーでアクセルを踏めませんでした。それでパラボリカでピッタリ後ろにつかれて、仕掛けられるということが何度か続きました。ストレートエンドでパスされるのを防ぐために、ブレーキングをギリギリまで遅らせたせいもあって、フロントタイヤのロックが頻発してしまいました。そのダメージも加わってアンダーがいっそう助長される状況でした。そんな中、バトンは何周にもわたってアタックをしのいでくれていましたね。
−次戦スパは2年ぶりの開催になりますが、どんな展開を予想していますか。
スパもオールージュから続く非常に長いストレートと最終シケイン前の2本のストレートがありますからね。エンジンにとってはモンツァ同様、厳しいサーキットです。直線のあとは、ずっと下り区間になります。下りながらのコーナリングでは、マシンバランスや空力性能の優劣がいっそう明らかになるでしょう。そこを重視すると、最高速が犠牲になってしまいます。最高速が遅い我々としては、モンツァ同様、苦しい戦いには変わりないと思います。
ただ今回投入した前後の新しいサスペンションなどが、効果を発揮してくれています。7月にスパでテストしたときよりもマシン戦闘力は上がっていますから、どこまで戦えるか非常に楽しみにしていますよ。
【プロフィール】 田辺 豊治(たなべ・とよはる)
1960年5月12日生まれ、東京都出身。
1984年Honda入社。入社直後の1年間を除き、常にF1、CARTなどのレース現場の第一線で活躍。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)レーステストマネージャー兼ジェンソン・バトン担当エンジンエンジニア