vol.152

07.08.01

へレステスト「期待した結果は得られなかったが、
次戦はいい戦いができるはずです。」

Honda Racing F1 TeamはヨーロッパGP後、スペイン・ヘレスでの3日間の合同テストに参加した。スペイン、モナコ、そしてフランスに続く大きな改良バージョンがここでテストされたものの、残念ながら期待したような結果を出すことはできなかった。ただし低速のコース特性、メカニカルグリップ重視の次戦ハンガリーGPに向けては、確かな手応えを得られたようだ。

 今回のヘレステストは、3日間ともかなり暑かったです。日によっては気温が35℃を超えたこともありましたし、路面温度も午後は50℃以上になりました。そうすると路面コンディションが、どんどん悪化してしまいます。こちらとしては純粋な性能比較をしたいんですが、そのあたりはちょっと厳しかったですね。パッケージやセットアップを変更して比べる場合、やはり一定のコンディション下で行うのが最善ですから。

−今回は新しいパッケージを試したわけですが、いかがでしたか?
 正直言って、あまりうまくはいきませんでした。一番期待していた変更部分が、思ったような性能を発揮してくれなかったですね。しかし、細かいものでは、いくつかうまくいきました。

−それは風洞測定と実走テストの結果とが、食い違ってしまったということですか。
 いいえ。風洞で詰め切れない部分、ステアリングを切った際の挙動変化とか、そのあたりを今回のテストで確認したのですが、思ったような性能向上が見込めませんでした。コンディションが悪かったこともありましたが、それを差し引いても今ひとつでした。

−テスト最終日のルーベンス・バリチェロのタイムは、総合4番手と決して悪くありませんでしたが。
 ええ。2日目まで新しいパッケージをいろいろ試していて、どうもうまくないということで最終日はハンガリーGPに向けてのセットアップに集中したんです。その結果が、あのタイムに結実したといっていいでしょう。

−今年のハンガリーGPは未曾有の暑さに見舞われそうですが、その意味でもヘレスはいい予行演習になったのでは?
 そうですね。エンジンは今回高外気温下での冷却性能の見極めと、信頼性の確認が目的でした。あの暑さで2レース分の距離を問題なく走りきれましたから、そこはよかったですね。ハンガリーはマレーシアやバーレーンをしのぐくらい、暑いGPになることがありますから。次のトルコも、それに劣らず気温は高いでしょうし。
 今回のテストを総括すると、一番大きな変更部分は期待したような結果が得られませんでしたが、いくつかのアップデートとハンガリーGPに向けての基本セットアップでは、いいものが見つかりました。これらはレース本番に投入していく予定です。ハンガロリンクは空力よりも、メカニカル性能の優劣が重要で、その部分に関してRA107は決して悪くないですから、マニクール(フランスGP)と同等の戦闘力は、発揮できると思います。

【プロフィール】 長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)チーフテストエンジニアとして、テスト全般を統括する立場である。