vol.151 Rd.10 European GP

07.06.26

いい仕上がりだっただけに、バトンのリタイアは残念でした

それまでの青空から一転、スタート直後に大雨となったヨーロッパGP。天候変化は事前に予測していたとはいえ、あまりの土砂降りのためにジェンソン・バトンは1コーナーで飛び出してリタイア。ルーベンス・バリチェロはそれ以前に追突され、ペースが伸びないまま11位完走に終わった。

 バトンはスタート直後の混乱をうまく抜けて、1周目を終えてタイヤ交換に入ってきた時には、5番手まで上がっていました。それだけにあのコースアウトは、ちょっともったいなかったですね。とはいえレインタイヤに履き替えて1周した時にはもう大雨で、1コーナー手前のあの地点は、すでにコース上が川になって流れていました。路面の水の層の上に乗ってしまうアクアプレーニング状態で、コントロール不能でした。立て続けに6台、飛び出したぐらいでしたし。初日のロングランのペースがかなりよかったですし、クルマの仕上がりもよかったですから、「たら、れば」を言ってもしょうがないのですが、あのままいけていれば面白い戦いができたと思いますね。

−同じく1コーナーでコースアウトしたハミルトン(マクラーレン)が、クレーンに釣られてコース復帰したのは驚きました。バトンはコース復帰できなかったのですか?
 残念ながら、バトンはタイヤバリアに衝突し、右前のサスペンションが壊れていて、もう走れない状態でした。

−予選が思ったより悪かったのは、どういう原因だったんでしょう?
 今回は予選で履いたソフトタイヤの温め方が、非常に難しかったですね。1回目のアタックは、終盤でもうタレていましたから、2回目の時は、コースに出た周での走行を抑え気味にするよう指示しました。そうしたら今度は、冷えすぎてしまったんですね。それでグリップが、上がりませんでした。

−バリチェロは完走したとはいえ、ペースが伸びませんでした。
 ええ。レース序盤、ロズベルグ(ウィリアムズ)に追突されたのが、痛かったですね。アンダーフロアに損傷を受けていました。赤旗中断中にできる限りの修復を行ったのですが、やはり空力性能に悪影響を及ぼしていたようです。ブレーキングですぐにロックしてしまうようになって、タイムを上げられませんでした。

−今週からは、ヘレステストですね。
 はい。次のハンガリーGP、さらにその先のレースを見据えて、大きめの改良パーツをテストすることになると思います。課題である空力性能向上のための、いろいろな形状変更などですね。これからもほぼ毎戦、新しいものを投入していくつもりです。

【プロフィール】 田辺 豊治(たなべ・とよはる)
1960年5月12日生まれ、東京都出身。
1984年Honda入社。入社直後の1年間を除き、常にF1、CARTなどのレース現場の第一線で活躍。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)レーステストマネージャー兼ジェンソン・バトン担当エンジンエンジニア