vol.148 Rd.8 French GP

07.07.05

レースペースの速さが、うれしかったですね。

新たな空力パッケージや足回りなどを搭載したマシンで臨んだ、第8戦フランスGP。予選こそジェンソン・バトン12番手、ルーベンス・バリチェロ13番手だったが、レースでは特にバトンが安定した速さを発揮した。上位陣が1台もリタイアしない中、バトンは8位でチェッカー。今季初ポイントを獲得した。

 1ポイント取れたということで、戦闘力向上が結果の上でも確認できたレースでした。レースではルーベンスが、スタート直後からグリップ不足を訴えて、ペースが伸びませんでした。一方でジェンソンは、まだトップには届かないとはいえ、 レースができているというレベルまでは、なんとかラップタイムを刻むことができました。その結果として、8位入賞となったわけです。今後は特に予選での速さを主眼に置いて、さらに前に進んでいきたいですね。

−予選のタイムが早くないというのは、具体的にどの部分が劣っているんでしょう?
 予選は一発のタイムが要求されるため、ニュータイヤのグリップを生かしきれていないことが、最大の問題だと思います。しかし、どうすればそれが改善されるかというところまでは、まだ解明できていないというのが正直なところです。タイヤが温まりにくいとか、そういうことではないんですが。

−今回は2人とも、スタートしてから最初のピットインまでのいわゆる第1スティントを、かなり長く引っ張りました。
 ええ。予選トップ10内のクルマは、長くても25周目までにはピットに入ると予想していたんですね。ならばそれよりも引っ張って、燃料が軽くなった状態で攻めて順位を上げようとしたわけです。硬い方のミディアムタイヤで、長い周回でも安定していいペースで走れることは、事前に確認できていましたからね。

−レース終盤に履いたソフトタイヤの感触は?
 初日の走行では、ミディアムとソフトであまり差がないということでした。ただレース後半、路面にラバーが載った状態では、ソフトがかなりよくなるだろうということは予想できていました。とはいえどこまで使えるか、何周走れるかまでは、フリー走行の段階では見極めきれなかったですね。

−バトンはもっと早く、ソフトタイヤを使いたかったと言っていました。
 そうですね。うちは確かに終盤のソフトが、かなり速かったです。グリップも良かったし、ブレーキングもかなり突っ込めたと、ドライバーは評価していましたね。 ただレースのどの段階から、ソフトを使えるコンディションになっていたかは、これからデータを分析してみないとわかりません。たとえばレース中盤でソフトを履いていたら、早すぎた可能性もあります。

−ポイントを取れて、とりあえずホッとしましたか。
 それはそうなんですが、それよりもレースペース、特に終盤のペースですね。そこでいいところを走っていたことが、うれしかったですね。開発の方向性がより明確に見えたという感じです。

【プロフィール】 田辺 豊治(たなべ・とよはる)
1960年5月12日生まれ、東京都出身。
1984年Honda入社。入社直後の1年間を除き、常にF1、CARTなどのレース現場の第一線で活躍。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)レーステストマネージャー兼ジェンソン・バトン担当エンジンエンジニア