ヘレステストでは空力を中心に、車体の改良効果がどのようなものかを確認しました。すでに風洞測定などでいい結果が出ていたのですが、実際にサーキットを走ってみて、非常に手応えがありましたね。とてもよかったです。今年からのレギュレーションで、シーズン中のテストは1台しか走れません。それで2台を同時に走らせての比較ができなかったんですが、ただ時間差で旧車と比較した限りでは、明らかなアドバンテージが確認できましたね。
−具体的には?
タイムももちろんよかったのですが、ドライバーからも、「これまできつかったアンダーステア傾向がすっかり消えている」というコメントをもらいました。 特にコーナリング中の安定した挙動を、気に入ってくれましたね。コーナリング中のアンダーステア/オーバーステアの特性が、より自然なものになり、コーナーへの進入もよりクイックに入って行けるようになっています。
−フランスGPでわれわれが目にして、変更点はすぐにわかりますか。
前回(第5戦モナコGP)の改良では、たとえばサイドポッドの大きな絞り込みとか、外観からも目に付く変化でした。今回の改良もそれと同じぐらい大きなものなんですが、外からは見えにくいものが大部分です。とはいえ今年のクルマの懸案だった空力的なナーバスさは、このアップデートでかなり回避されたといっていいと思います。
−今週末からの2連戦が、楽しみですね。
そうですね。ただ非常に収穫のあるテストだったとはいえ、ヘレスで走ったのはうちとスーパーアグリだけでしたよね。ほかのチームと一緒に走って、比較ができたわけではありません。ですから相対的にどれだけ進化してるのかは、まずは今週のマニクールで見ることができるでしょう。
もちろん他チームも、立ち止まっているわけじゃないですからね。ただわれわれは今回、自分たちのマシンの性能確認に専念したかったんです。ほかと一緒に走ると、赤旗中断などで走行に集中できないことがたびたびあります。そういう意味では、単独テストを選んだことは正解だったと思いますよ。
−手応えは?
トップに追い付いたとまでは言いません。でも中団グループから抜け出て、その先の上位チームをうかがえる位置まではいけてるんじゃないかと。そのあたりを狙っていきたいですね。
【プロフィール】長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)チーフテストエンジニアとして、テスト全般を統括する立場である。