vol.145 Rd.6 Canadian GP

07.06.14

ひんぱんなセーフティカー導入が大きな誤算でした

カナダGP決勝レースはクラッシュの続発で、計4度もセーフティカーが導入されるという、非常に荒れた展開となった。そんな中、ジェンソン・バトンはスタートで1速に入れられず、そのままリタイア。ルーベンス・バリチェロも完走こそ果たしたものの、12位という結果に終わった。レーステストマネージャーの田辺豊治(たなべ・とよはる)に聞いた。

 バトンはグリッド上でギアボックスの不具合が出てしまい、ニュートラルから1速に入れることができませんでした。すでにギアボックス自体に損傷を負っていて、ピットから再スタートさせようとしても不可能な状況でした。今回のトラブルは直接的には操作上の手違いなんですが、構造上起こりうることでもあるんですね。スタート直前のドライバー心理も含め、僕らの方ももう少し配慮すべきでした。次戦インディアナポリスでは、とりあえず操作上での対応を行い、その後根本的な対応策を採るつもりです。

−残ったバリチェロは完走こそしたものの、残念な結果でした。
 カナダは例年、セーフティカーが出る荒れたレースになりやすいところですよね。それを考慮して、2人は違った燃料搭載量で決勝に臨みました。ただ軽い方のバリチェロにしても、 他に比べればけっこう積んでいましたから、1回目のセーフティカーが出たときにはまだ十分燃料が残っていたので、ピットインさせずにそのまま走らせました。そのままレースが続いていたら、かなりいいポジションまで上がれていたはずです。ただ、その後2回目のセーフティカー導入は大きな誤算でした。第2スティントも、同様の展開でしたね。さらに3回目のセーフティカーが入ったときには、まだ燃料が十分ありましたし、タイヤが安定した性能を発揮できている最中でしたからそのまま走らせたのですが、その後4回目のセーフティカーが入ってしまい、ピットインのタイミングを完全に失って、3番手から最下位まで落ちてしまいました。4回目のセーフティカーがなかったら、少なくともポイントは取れていたでしょう。それから、バトンは1回ストップも視野に入れた2回ストップ作戦でした。ですから、もしちゃんとスタートできていたら、こちらもいいところまでいけたはずです。もちろんどちらも結果論で、実際にはノーポイントだったわけですが。

−次戦インディアナポリスは、どのような手応えを得ていますか。
 予選の速さでいえば、トップ10に残れそうなところまでクルマは出来上がってきました。ブレーキング時の挙動不安定の問題も、ほぼ解決してきていますしね。 インディアナポリスは直線が非常に長いのと同時に、低速のインフィールド区間もあります。ダウンフォースをどれぐらいのレベルに設定するかが、カギを握ることになるでしょう。全体的にいい感じに仕上がってきていますから、ある程度の手応えはありますよ。

【プロフィール】 田辺 豊治(たなべ・とよはる)
1960年5月12日生まれ、東京都出身。
1984年Honda入社。入社直後の1年間を除き、常にF1、CARTなどのレース現場の第一線で活躍。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)レーステストマネージャー兼ジェンソン・バトン担当エンジンエンジニア