vol.144

07.06.08

どれだけ戦闘力を発揮してくれるか非常に楽しみです

今回からは中本レポートに代わって、Honda F1現場レポートと題し、現場のエンジニアたちに最前線の様子を語ってもらう。今回は田辺豊治(たなべ・とよはる)レーステストマネージャー。Honda F1活動の第2期から携わり、第3期の現在では、ジェンソン・バトンのエンジンエンジニアを担当するとともに、実走現場を統括する立場である。

−モナコではポイントこそ取れなかったものの、予選では今季初めてトップ10内に入れました。
 あれはライコネンとか、本来前にいるべきドライバーがいなくなったこともありましたからね。ただ、その前のポールリカールテストでいろいろなパーツを試して、ある程度の手応えは得ていました。その結果、レースでは両ドライバーとも、「3セットのタイヤを通じて、マシンバランスはよかった」と言ってくれました。ブレーキング時の挙動不安定の問題も、だいぶ解消されてきました。もちろん、モナコではダウンフォースを目一杯つけることで欠点が隠せたところもあるわけですが、週末を通じて大きな問題が出なかったことで、僕らも力づけられましたね。
 この問題が本当に解決されたかどうかは、ダウンフォースレベルが中くらいの次のカナダで、はっきりすると思いますよ。

−先週はスペインのミノルカ島でテストを行いましたね。
 空港の滑走路を使って、直線での空力テストを行いました。風洞で得たデータの実走確認の位置づけで、現在膨大なデータを解析中です。その結果を踏まえて、今週からの北米2連戦、さらにその先のGPを見据えて、今後の開発の方向性を見出していくことが狙いです。

−カナダGPの手応えはいかがでしょう。
 前回のポールリカールテストでカナダ仕様を試した際も、クルマとしてはそこそこまとまっている感触を得ていますからね。その時のセッティング、そしてミノルカ島でのテスト結果を踏まえて、さらにいくつかの改良を加え、カナダGPに挑みます。空力以外の、皆さんの目に見えない部分もいろいろと改良を加えていますから、その辺りも含めて、どれだけ戦闘力を発揮してくれるか、僕らとしても非常に楽しみにしています。

【プロフィール】 田辺 豊治(たなべ・とよはる)
1960年5月12日生まれ、東京都出身。
1984年Honda入社。入社直後の1年間を除き、常にF1、CARTなどのレース現場の第一線で活躍。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)レーステストマネージャー兼ジェンソン・バトン担当エンジンエンジニア