バトンは4コーナーでスピンを喫し、アンチストールモードに入っていたので、エンジンは切れませんでした。ところがそこから再発進しようとしたら、エンジンが止まってしまいました。
一方のバリチェロは、燃料をいっぱい積んで長いスティントにしましたが、リアタイヤの内圧が上がりすぎて、マシンとしてはひどいオーバーステアになってしまいました。長いスティント中、ずっとペースが伸ばせず、それでレースは終わってしまいましたね。
ブレーキング時の挙動不安定を対症療法的に直すには、ウイングを重くする(ダウンフォースを付ける)のが一番手っ取り早いんですが、そうすると、最高速が遅くなってしまいます。たとえばルノーのフィジケラも決して速くはないですが、直線でわれわれを抜いて行くでしょう。あるいは自分のペースより遅いと思うクルマの後ろについても、絶対抜けませんしね。でもそういう犠牲を払ってでも、ブレーキング時の不安定さを何とかしないといけません。
それは長い直線の先での、フルブレーキングに限らないんですね。1コーナー後の短い区間でも、ブレーキング時の挙動不安定を直せないと、タイムロスが非常に大きくなってしまいます。冬にバーレーンで行ったテストでは、全部で1秒分くらい遅くなるほどダウンフォースを積まないと、ブレーキング時の挙動不安定は直らなかったんです。それが今では、コンマ6秒程度のロスで済むくらいまでは改善はしていますが、本質的には直っていません。
去年のカウルやノーズを使ってみるとか、そういうテストもすでにしています。せめて去年並みにブレーキング時に安定してくれれば、直線だけでコンマ数秒もロスするほどのダウンフォースを積む必要もないんですけどね。最高速は遅くなるし、燃費は悪くなるし、いいことは何もありません。それはわかっていますが、それくらいやらないとどうしようもないんですね。1周だけを考えれば、タイヤ自体のグリップがありますから、軽めのダウンフォースでもブレーキングも何とかなりますが、レースではダメです。ここはとにかくブレーキが厳しいので、ごまかしようがなかったですね。
この3戦、外から見る分には同じように見えるかもしれませんが、細かい改良を重ねています。リアウイングにしても、良く似ていますが、毎レース違う仕様を使っていますし、次のスペインGPまでにも、さまざまな変更を行います。空力が一番の問題なので、その関連が一番多くなるでしょう。