vol.137 Rd1.Australia GP 開幕戦を終えて(その1)

07.03.26

苦闘したバトン。
後方から追い上げたバリチェロ。

開幕戦オーストラリアGPでのHondaは、2台完走を果たしながらも入賞には届かなかった。緒戦をいかに戦かったのか、今週から2回にわけて、中本修平シニア・テクニカル・ディレクターに語ってもらった。

 今年のオーストラリアGPは結果的にセイフティカーの出ないレースになりましたが、過去にはかなりの確率でセイフティカーが出動しています。そこで二人のドライバーの燃料搭載量を変え、タイヤも違う使い方をするなど戦略を分けました。結果だけを見ると、バリチェロは予選順位より上でフィニッシュでき、一方のバトンはダメだったということです。
 バトンはそれに加えて、スピード違反を犯してしまいました。リミッターを効かせるタイミングがわずかに遅かったのが原因です。ペナルティを課されたことで、大きく順位を落としてしまいました。ちょっとガッカリしてしまいましたね。あまりよくない状況の中で、それなりに踏ん張っていたんですけどね。
 バリチェロは違う作戦で、いわば見えない相手との戦いでした。あとコンマ何秒上げろとか、そのペースで行けとか、こちらの指示に沿ってレースを走りました。途中で周回遅れになりそうだった時は、抜かせる時に数秒ロスしますから、早いタイミングでピットに入れたりして、やれることはみんなやりました。

−第1スティントのバトンのペースは、何よりも重かったことが一番の理由だった?

 そうです。スティント終盤は遅かったですし、その上前が詰まっていたでしょう。だから作戦的にはあと3周くらい走れましたが、早めに入れました。重いクルマだったから、スティントの後半でよけいペースが落ちたというわけではありません。通常スティン トの後半は、ガソリンが減って軽くなるからタイムが上がるのですが、タイヤも厳しくなってくるために、もともと持っているブレーキング時の安定性の問題がより顕著に出てしまいます。それをごまかすためにリヤ側のダウンフォースを重めにしているんですが、そうするとアンダーステアで曲がらない。車速が落ちすぎているので、そこから踏んでいくと今度はお尻が滑るという、一番タイムが出ないパターンでしたね。レース中、バリチェロは305km/hぐらいの最高速を出してたのに対して、バトンは10km/h前後も遅かったです。
 一方のバリチェロは、ブレーキング時の安定性を除き、去年のクルマよりはずいぶん乗りやすくなったという感触を本人も持っています。トラクション・コントロールも、かなり良くなりましたしね。彼は従来、スタートして最初の5,6周にペースが伸びない傾向がありました。でも今回は、スタートで前に行けました。その後もクルマの状態が悪い中で、実力でこれだけ追い上げてきました。それなりに満足していると思いますよ。予選でコースを飛び出してなければ、12,3番手当たりのグリッドに付けていたと思いますから、そうすれば、シングルフィニッシュはできていたでしょう。

−シーズン初レースでしたが、ロングランでのクルマの感触はどうだったんですか。

 バリチェロのタイムを他と比較してもらえばわかると思いますが、フェラーリ、マクラーレン、BMWザウバーに対しては現状ではちょっとかなわないですね。しかしそれ以外のクルマは、前が空いた状態なら互角かそれ以上のペースで走れています。ルノーとも、ほぼ同等でしたしね。今抱えてる問題を早く解決できれば、もうちょっと上で戦えます。1日でも早く解決したいと思ってます。