ジェンソン・バトン ダイアリー 2007
3月

 イタリアGPは本当に良かった。8位でフィニッシュできたことで、ホンダ・レーシング・F1・チームも俄然活気付いている。特に喜んでくれたのが、ガレージで作業しているスタッフだ。今年、彼らがどんなに一生懸命やってきたかを知っているから、レース後マシンを降りたとき、彼らの晴れ晴れとした笑顔が目に入って、僕も気分が良かった。モンツァでのRA107は上々だった。新しいフロントとリアのサスペンションパーツのおかげで、燃料の量にもかかわらず、マシンバランスが良かった。だからすぐに速いタイムを刻むことができた。予選では、今季2度目のトップ10内に入ることができた。
 予選後、レースでリアタイヤをいたわるためフロントウイングの一部を取り除いた。おかげでその目的は達成したが、アンダーステアがきつくなってしまい、タイムに響いた。もしそれがなければ、ヘイキ・コバライネンよりも前にいけたと思う。でも、「もし」を言い始めたらきりがない。
 モンツァ用のローダウンフォースのセットアップは特殊なものだ。だが、フロントとリアの新しいサスペンションが全てのタイプのサーキットで僕らのパフォーマンスを良くしてくれればと思う。
 この夏、チームの全員がRA107のパフォーマンスを上げようと全力を尽くしてきた。夏のブレイク期間は3週間あったけれど、デザインや製造チームのスタッフは全員、休日返上で作業した。これだけ見ても、チームのモチベーションがいかに高いかが分かってもらえるのではないかな。
 僕は、そのハンガリーGP後の3週間、体力トレーニングに集中していた。もちろん、電話では常にチームと連絡を取っていた。

 そんな中、何日かは休みをとって、ガールフレンドのフローレンスと英国からモナコまでドライブ旅行をした。その間、毎晩テントに泊まったんだ。ただ問題は、フローレンスも僕もテント設営が初めてだったこと。最初の夜の設営には1時間半もかかってしまった!
 そのおかげで、トルコに着いたときはとてもリラックスした気分だった。体調も万全。焼け付くような天候の下でこれは助かった。RA107もまあまあの状態だった。特にロングランが良かった。ハンガリーGPからすれば長足の進歩だ。予選は15位だったけれど、予選後のセッションでエンジンを換えてペナルティを受けたので、21番手に降格となってしまった。後ろからのスタートだからもちろんやりきれない思いはあった。でもそんな中で良いレースが出来たと思う。10台を抜いて13位でフィニッシュできたわけだから。
 レース後にはデビッド・クルサードとアレックス・ブルツと一緒にモナコに戻った。2日ほど自宅で過ごしトレーニングをして、水曜の夜、モンツァへ向けてクルマで出発した。イタリアGP前のテストがあったからだ。元々は1日だけ参加することになっていたのだけれど、雨で木曜日は半日がつぶれてしまったから、もう1日残ることにした。他のチームもほとんどが姿を見せていた。このテストで、僕らは新しいサスペンションパーツを初めて試した。マシン全体のバランスが一気に良くなったのを感じた。
 金曜のテストが終わると英国に飛んだ。翌日にロンドンの近くのメイデンヘッドで友人の結婚式があったからだ。しかも式はこれだけじゃなくて、すぐに今度はサマーセットのフロームまで車を飛ばして、日曜日には友人の子供の洗礼式に出席した。たった2日の間にすごくたくさんの友人に会えて有意義な時間だった。
 次の週の月曜日の朝ドイツに飛んで、20kmもあるニュルブルクリンクの北コースを、Hondaのシビック TYPE Rで走った。このコースは初めてだったが、大好きになった。特別な場所だ。普通なら、僕は何周か走れば新しいコースでも把握できる。でもここは違った。100近くのコーナーがあって、とにかく長い。市販車に乗っていても、体感スピードはかなりのものだ。すごく狭くて、壁が間近に迫っている。
 さて、火曜の夜にはモナコに戻ってきた。翌日は、友達とトレーニング。それから木曜の朝に父と合流し、イタリアGPのため、僕の愛車でモンツァを目指した。
 この後のレースについて書くと、まずスパ・フランコルシャン。ここでのGPがF1に復活してくれて嬉しい。オールージュ以外にもチャレンジングなコーナーがたくさんある。ベルギーGPには是非モンツァでの勢いを持ち込みたい。このサーキットで7月にテストをした時は今ひとつだったけれど、マシンはそれから進化しているからね。
 その後はいよいよ日本GPだ。チームの地元レース。富士には行ったことがないから、サーキットについては良く分からない。すごく長いストレートがあると聞いたことくらいかな。このレースで、僕らは空力関係をアップグレードする予定だから、地元ファンに良い走りが見せられると思う。

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