現実はきちんと受け止めるしかない。今季開幕から2戦は、ホンダ・レーシング・F1・チームにとって期待外れのレースとなった。シーズン前に期待していた結果とは程遠い。
RA107に関して一番の問題は、グリップ不足だ。特にブレーキングの時がひどい。状況を改善するためいろいろセットアップをいじってみたけれど、結局、ライバルたちより早目にブレーキを踏まなければならず、タイムを大きくロスする。去年の最終レースと同じレベル、つまりグリッドの前列に復帰するためには、ファクトリーから最新パーツが送られてくるのを待つしかない。
チームでは24時間、解決策を検討している。マシンの問題点は分かっているけれど、新しいパーツが出来るまでには時間がかかるだろうから、今のところはまだ手元にあるもので戦わなければならない。
ポジティブな面では、RA807Eが素晴らしいエンジンだということ。ギアボックスの信頼性はとても高い。それから、実戦ではレースチームが効率の良い仕事をしてくれた。マレーシアは気温も湿度も高く、誰にとってもタフなレースだったが、冷静に効率よく戦うことができた。もう少しダウンフォースが得られれば、もっとやれるはずだ。
今年の開幕2戦は、2005年を思い起こさせる。あの年もスタートは厳しかったけれど、シーズンが進むに連れて徐々に挽回し、ポールポジションをゲットして表彰台に上ることができた。2007年も同じようにやれる自信がある。
サーキット以外では、前回このコラムを書いてから後、忙しいひと月だった。テスト続きの冬が終わり、オーストラリアGPへ向かう途中、東京に寄った。Hondaの記者会見があったからだ。でもほんのわずかしかいられなかったのは残念だった。月曜の朝に日本に着いて、その夕方には日本を飛び立たなければならなかったから。でも、良いイベントだったし楽しかった。
レースの週の火曜日にメルボルンに到着。早速トレーニングだ。サーキットでの活動がスタートするまでは、海岸に沿って自転車を走らせたりして楽しんだ。レースへの準備の合間にはPRイベントもこなした。街一番のレストラン「ストーク・ハウス」でメディア・ディナーがあったり、アルバート・パークの小学校を訪問して子どもたちがエネルギー効率の良い電球を取り付けるのを手伝ったり。チームの環境問題への取り組みの一環だ。
僕の2006年はオーストラリアGPのポールポジションで幕開けした。それを考えると、今年14番手からのスタートというのは悔しかった。でもそれが今のレベルだ。そんな中でも出来るだけ頑張ったが15位が精一杯だった。
メルボルンからゴールドコーストに向かった。セパンは高温多湿だから少しでもそういう状況に慣れておこうというわけだ。バイロン湾に5日間滞在した。家族と一緒にビーチ近くの田舎に家を借りて過ごした。トレーニングがないときは、スキューバダイビングを習った。あれは素晴らしい。水の中には全く別世界が広がっている。魅力的だ。海ガメやドチザメやたくさんの魚を見ることができた。
3月24日の日曜日、クアラルンプールへ飛んで、翌週のセパンでの3日間のテストに備えた。水、木、金とサーキットでテストをし、その後タイのプーケット島で何日か休暇を過ごした。ピピ島でのスキューバダイビングは最高だった。
クアラルンプールに戻ったのが、マレーシアGPの週の水曜日。そのままホンダ・マレーシアのPRイベントに参加した。良いイベントだった。
それが終わるとGPに向けて集中することができた。とにかく気温が高くタフなGPだった。僕のコックピットの中はレース中、とても暑く、もう汗だく。出来るだけ水分を取ろうとはしていたのだが、ドリンクボトルの水もあっという間に熱くなってまるでお茶。参ったよ。でもそういう状況でも戦うのが僕らの仕事。とにかくレースが終わって新鮮な空気を吸った瞬間が嬉しかった。
今は、レースとレースの間、つかの間の休息だ。バーレーンでも僕のベストを尽くすよ。それは約束する。
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