HondaモータースポーツF1 〉2006年の意気込み
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――まずは、2006年シーズンへの想いをお聞かせください。
 我々携わっている者はもちろんのこと、すべてのHondaファンの方々が待ち望んでいる一勝を挙げることに尽きますね。とにかく早い時期に一勝したい。それが開幕前に想い描いているところです。まず一勝しないと、何も語れない。とにかく一勝。それだけです。


――勝利するためのマシンづくり、チームづくりは。
 まず、開幕の時点で他チームに対して優位に立つことです。昨シーズンは、開幕の時点では横並びというか、トップチームと比べても抜きん出てはいませんでした。その後はかなりのハイペースで改良を重ねて、シーズン中のマシン進化の速度は、トップレベルだったのですが、他のチームも進化するためどうしても追いつき、追い越すことは出来ませんでした。したがって、開幕時点での競争力を他チームよりも高いレベルにすることがきわめて重要と考え、そのためのマシンづくりに取り組んでいます。
 そのために今年は、開幕戦に向けて今まで以上に高い目標値を設定し、それに向けて、開幕戦に間に合う限界まで性能アップができる体制を作って、マシン開発に取り組んでいます。今までは、間に合わないと感じた場合、とりあえずつくってから後で手を加えるという手法でした。シーズン中に改良すればいいじゃないかと。

 その姿勢を変えました。ブラックリーのファクトリーも“つくりの方は何とかする”と言ってくれています。Hondaの研究所のメンバーも増やし、設計とファクトリーが相当ギリギリまで仕様を詰める取り組み体制を実現しました。
 約束した通り、ブラックリーのファクトリーのスタッフも、つくりの部分についてきわめて積極的に取り組んでいます。これは今までになかった体制です。それで、テスト車を2台同時にシェイクダウンすることができたのです。非常に短い期間で、なおかつ2台同時にシェイクダウンしてくれたので、とても感謝しています。

 

――今までより時間をかけたわけではないのですね。
 ええ。設計の段階で今までより練って練って練り上げて、一回出した図面にも変更をかけて、つくりの部分を短縮させてマシンを仕上げたということです。

――ある意味チャレンジですよね。それは関野さんの考え方ですか?
 我々Hondaのスタッフの考え方に、ジェフ・ウィリスが同調してくれたんです。つくりの部分のほとんどはブラックリーで担当しますので、彼らがつくりのスピードはあげるからと。そのキャパシティも増やしたので大丈夫だと。だったら、“もう一度変更をかけたいが、残りの期間でつくってくれるか”と聞いたら大丈夫だと心強い返事をもらいました。そういう関係ができて、今年のマシンが仕上がっていると思います。

 

――ギリギリまでつくり込むのは、まさにHondaイズムですね。
 私も長年そういう土壌で育ってきましたから、そういう傾向はありますが、そこにブラックリーが協力してくれたのが大きかったですね。逆に、こっちが心配になってしまうくらい。そろそろ限界・・・と思った壁も乗り越えてくれました。彼らは、つくりについて非常に自信を持っていますね。

――今年のマシンのコンセプトは。
 
V8になるということで絶対的なエンジンのパフォーマンスはダウンします。その中で、2005年と同じくらいトップスピードを出したいとか、ラップタイムは縮めたいと考えたときに、もちろんエンジン側でがんばってもらうことはやってもらうし、それができるのがHondaのエンジン開発だと思っています。
 しかし、パワーはどうしてもダウンしますから、車体でどうリカバーするかというところが今年のマシンづくりのテーマです。

 中心となるのは空力性能です。空気抵抗(以下ドラッグ)を大幅に減らさないと、パワーのダウンしたエンジンで同じだけの最高速度は出せません。そもそも2005年のマシンはドラッグが多かったので、今年は開幕から高いレベルに行くには尋常でないドラッグの低減が必要だと考えました。一方で、空力によるダウンフォース(走行中にマシンを地面に押さえつける力)まで削ってしまうとコーナリングできなくなってしまうので、ダウンフォースは減らさず、むしろ増やすぐらいの気持ちで空力の効率向上に取り組んだわけです。低ドラッグでダウンフォースを稼ぐには、基本フォルムから設計し直さなければいけない。きわめて難しいテーマです。エンジンがコンパクトなV8になってスペースに余裕が出る分を使い、いろいろ基礎的なパッケージングのパターンで実験を重ねて、それをうまく反映したのが今年のマシンだといえますね。

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