HondaモータースポーツF1中本修平レポート

vol.95 クルマのペースが、予想外に遅かった。



ヨーロッパGPのHonda勢は、ルーベンス・バリチェロが5位入賞を果たしたものの、ジェンソン・バトンはエンジントラブルでリタイア。なによりバトンはそれ以前から、原因不明のペースダウンに見舞われていた。フェラーリが完全復活し、トップ争いがいっそう熾烈さを増す中、Hondaは期待したような速さを発揮できない状況だ。

 バトンはエンジンが壊れたようですが、詳しいことはまだよくわかっていません。イギリスのHRDに送って原因を調べます。ただし、エンジンが壊れていなくても、良くて5位でした。クルマのペースが、全然遅かったです。最初のタイヤ交換後は、バリチェロの方が速かったですね。その原因についても、これから分析します。

−決して、予想したような展開ではなかった?
 そうです。(第3ドライバーの)アンソニー・デビッドソンが初日に出した速さを、再現できていませんから。アンソニーは1分33秒から34秒台のペースで走っていました。それなのに、レース中のバトンは、1分34秒から35秒台が精一杯でした。

−原因は?レース中のタイヤの暖まりが悪かった?
 非接触センサーで見た走行中のタイヤ温度は、特に低いようには見えませんでした。ミシュランにタイヤを戻すと、タイヤ温度が低い時の摩耗形態と、そうではない時との違いがわかるので、調べてもらいます。

−初日のデビッドソンのペースを見る限り、レースに向けてはもうちょっと手応えを感じていた?
 もう少し期待はしていました。結果は同じ5位でも、こんなに離されるとは思っていませんでした。ただウチだけではなく、モントーヤやフィジケラも、速いペースでは走れていませんね。フェラーリは2台とも速かったから、完全復活したんでしょう。クルマ自体が速かったです。ミハエル・シューマッハも、ドライバーとして素晴らしかった。
 ミシュラン勢は今回、全車同じタイヤだったんです。その中でアロンソとライコネンは何とかしましたけれど、他はわれわれ2台も含め、苦しんでいました。ルノー、マクラーレンともフィジケラ、モントーヤは、予選アタックのタイムや、レース中の前が空いている状態での周回ペースを見ると、決して速くはありませんでした。タイヤがうまく使えてないということなのでしょう。

−原因がよくわからずペースが遅いというのは、厄介ですね。
 そうですね。ドライバーを含めたセッティングの問題とか、タイヤをうまく使えていない問題が、何かあるんでしょう。でも次戦は、コースの性格がガラッと変わります。バルセロナは、フロントタイヤに厳しいコースですから、今回とはちょっと違った展開になると思っています。
 風洞も、ようやくできあがりました。予定よりちょっと早いですが、早速今週から動かしますよ。本格的にデータが使えるようになるには、まだ半年ぐらいかかりますが、その間にも、いいものが見つかれば、どんどん実戦で使っていくつもりです。これで風洞は、やっと他チーム並みになりました。



 F1現場監督・中本修平レポート
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