タイヤの温まりの問題はルノーを別にすれば、Hondaも含めて全てのチームが多かれ少なかれ対応に苦慮しているという。それはやはり、ダウンフォース不足に起因することなのだろうか。
−ルノーより作動温度が低くても、遜色のないタイムで走れることはわかりました。とすると、オーストラリアGPでペースが上がらなかったのは、どういう問題だったんでしょう?
あれはセーフティカーが出て来て、低速走行する間に、急速にタイヤ温度が下がってしまったからです。あの最中のタイヤ温度は、大体40℃ぐらいまで落ちました。そこから上げるのが、すごく大変だったということです。通常のスタート時のように80℃から上げるのと、セーフティカーが抜けた後の40℃から上げるのとでは、ずいぶん違います。40℃近い差がありますからね。タイヤ温度が40℃というのは、F1ではほとんど氷の上を走っているようなものなので、ものすごく滑ります。当然コーナリングスピードも上がらないために、温めるのに何周もかかってしまうわけです。
−でもルノーは、すぐに温まった印象です。
われわれもリアタイヤについては、わざと空転させたりすることで、それなりに温度を上げられます。問題は、フロントタイヤです。それをアロンソは車体を激しく振って温めたりすることで、セーフティカーが引っ込んだ直後のタイヤ温度が、すでにウチより上がっているんです。
ただ先週のバレルンガ、今週のバルセロナテストで、われわれもアロンソにかなり近い温め方を会得できました。次戦サンマリノも涼しいレースになるでしょうが、テストの成果が活かせるのではないかと期待しています。
−走行中のタイヤ温度がルノーに比べて低いのは、やはりダウンフォースが足りないからですか?
それが一番の理由です。ダウンフォースが出れば、タイヤ温度が上がることはわかっています。そしてタイヤ温度の平均値が低いのは、ダウンフォースの足りなさを裏返してるようなものです。それだけルノーとのダウンフォースの差が、あるということです。
でも言い換えれば、それでも通常のレースペースで遜色ない走りができるのは、メカニカルグリップの方で補っているわけです。機械的な部分では、ウチの方が上回ってる可能性が高いですね。
−他のチーム、たとえばマクラーレンは、タイヤの温まりの問題はない?
メルボルンではセーフティカーが抜けた直後に、アロンソには簡単に抜かれましたけれど、ライコネンに対してはけっこう頑張りましたよね。やはりタイヤの温まりで、彼らもある程度は苦しんでいるのでしょう。一方レース終盤では、ライコネンはそれまで1周2秒ぐらいアロンソに離されていたのが、4周ぐらいしたら猛烈に差を詰めていきました。あれはアロンソが流していたことも若干はありますが、タイヤ温度が上がって、適正なグリップが出始めた性質のタイムの上がり方でした。
今はとにかく、タイヤ温度に関してはルノーだけが特別だと言えます。初期的な温度が高いんです。クルマとしても、温まりやすい特徴を持っています。ダウンフォース不足での温まりの悪さは、われわれがトップ3チーム中一番悪いです。けれどもマクラーレンとの差は、かなり詰まっています。そして走り方によってはタイヤ温度をキープできることがわかったし、クルマとしてもその温め方に耐えられることが、今回のテストでわかりました。
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