HondaモータースポーツF1中本修平レポート
vol.91 長丁場のレースで、悪いところがそのまま出てしまった。



Hondaワークスとしては、1968年以来38年ぶりとなるポールポジションを獲得。初優勝の期待が一気に高まった。しかしジェンソン・バトンはスタート直後こそ首位を堅持できたものの、度重なるセーフティカー導入のたびに順位を落としていく。最後はフィニッシュ間際のエンジンブローで、リタイヤを喫した(10位完走扱い)。16番手出走のルーベンス・バリチェロは、ねばり強い走りで7位入賞を果たした。

−エンジンは突然壊れたんですか?
 突然でした。あのまま惰性で走らせてゴールすることもできたのですが、止めさせました。6位で完走したら、ゴール後のエンジン交換によるペナルティで、次のレースではグリッドが10番落ちてしまいますから。エンジントラブルの原因については、現在調査中です。

−レース中のペースが上がらなかったのは、タイヤが温まりにくかったから?
 もともとタイヤの温度が上がらない問題を抱えていたのですが、セーフティカー導入でさらにひどくなりました。走り始めて数周は、グリップしなくてタイムが出ないんです。やっと温まり出したら、セーフティカーが入ってきて、低速走行のためにまた温度が下がります。それが2度続き、セーフティカーが抜けた直後の、メインストレートから1コーナーへの進入のブレーキングで、それぞれアロンソとライコネンに抜かれてしまいました。3回目のセーフティカーの時もやはりタイヤが温まらず、後続車に右から左から抜かれて、どうしようもなかったということです。
 それ以外では、2セット目のリアタイヤにひどいグレーニング(ささくれ摩耗)が出てしまって、まったくタイムが伸びませんでした。とにかくタイヤ温度をいかに短期間に高めるかというのが、われわれの今の課題なのですが、その欠点がそのままレースに出てしまいましたね。

−タイヤが温まらなかったのは、決勝レース時の路面温度が低すぎたからですか?
 予選での路面温度は、バトンがアタックした時点で30度近くありました。レース中も全般的には予選とそれほど変わらなかったですが、レース序盤には路面温度が25度まで下がってしまいました。セーフティカーが入ったことも、悪い方向に転がってしまいました。予選の時はタイヤウォーマーの設定温度を高くしたり、空気圧も高めにしたりして、タイヤを温まりやすくします。でもそういう状態で、レース中に20周近く走らせるわけにいきません。その辺は、予選とは状況が違いました。
 予選ではごまかせても、長丁場のレースでは悪いところがそのまま出てしまいます。それが今回のレースだったということです。この3戦、毎回同じことを言っていますが、タイヤが温まりにくいというのが、われわれの一番の課題で、いち早く直していかないといけません。
 それとルーベンスはほぼ計画通りだったのですが、ブレーキのコントロール性が悪かったです。だいぶ良くはなっているのですが、まだ長く走ると症状が出ます。琢磨選手の後ろに長く付いてしまったのは、ブレーキのコントロールがうまく行かずに、スパッと抜くことができなかったからです。もう少し上に行きたかったのですが。

−次戦までの3週間で、ある程度解決はできそうですか?
 ダウンフォースを付けるだけでも、タイヤ温度は上がりますから、そういうことをやっていこうと思っています。ルノーと比較すると、やはりダウンフォースが足りていません。そこの部分を今までは、メカニカルグリップで何とか帳尻を合わせようとしていたのですけれど、結局ダウンフォースの足りない部分が、そのままタイヤのグリップに出てしまっていますね。イモラに向けては空力改良版と、エンジンのバージョンアップも考えています。

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