HondaモータースポーツF1中本修平レポート
vol.89 実力は出し切れたが、ルノーには追いつけず。



開幕2連戦は、メルセデスをのぞく全V8エンジンにトラブルが出るという過酷なものとなった。Hondaもルーベンス・バリチェロが、予選前のエンジン交換で後方グリッドからのスタートを余儀なくされた。ほぼトラブルフリーだったジェンソン・バトンは、最前列グリッドを獲得。レースでは3位表彰台に上がったものの、ルノー勢の後塵を拝したのだった。

 残念ながら、望んでいたような結果は得られませんでした。けれども現時点で持っているわれわれの実力は、出し切れたレースだったと思います。その点では、満足しています。先週の開幕戦はトラブル続きで、実力を出し切ることもできませんでしたからね。
 最初のピットインまでのバトンは、(トップのフィジケラに)途中少し離されることがあっても、付いていけました。それ以降は、ピットから出た時にモントーヤに引っかかって、抜きあぐねたこともあったのですが、じりじりと引き離されてしまいました。昨日の予選時ぐらい路面温度が高ければ、追いつけたと思っていますが。
 昨日は路面温度が50℃近くありましたが、今日はそれよりも10℃以上低かったんです。路面温度が高いとなぜ追いつけたかというと、ルノーとわれわれのタイヤ温度に違いがあるからです。ルノーは、明らかにわれわれよりも、レース中のタイヤの温度が高いんです。一方われわれのクルマは、レース中にタイヤ温度が上がりにくいから、路面温度が低いとルノーと比べると、グリップ力が若干不足して苦しい展開になります。逆に路面温度が40℃を超えると、ルノーはピットインする前の3〜4周でタイヤがタレて、十分なグリップが得られずにペースダウンをします。そうなると、われわれの逆転できるチャンスでした。
 でも言い換えれば、そういう何らかの外的要因による助けがないと、今のルノーは打ち破れないということです。

−彼らに比べて足りないのは、何ですか?
 足りないのは、ダウンフォースです。きのうの予選はダウンフォースを付けるためにウィングを立てて、コーナリングスピードを上げようとしました。その結果、最高速を犠牲にせざるを得ませんでした。
 フォーミュラカーというのは乱暴な言い方をすると、エンジン馬力が十分にあって、ダウンフォースがしっかり付いてれば、それだけでも速く走れるんです。でも具体的にそれを実現するのは、簡単なことではありません。
 ダウンフォースをただ付けるだけならば、悩む必要はないんです。ウィングを立てればいいだけのことですから。けれどもそうするとドラッグ(前面抵抗)が増えてしまいますから、直線スピードも遅くなるし、燃費も悪くなってしまいます。エンジンに関しても、もちろん今よりももっとパワーがほしいですね。
 少しでも空力を良くするために、いいものが見つかればどんどん導入するつもりです。第4戦のイモラあたりでは、比較的大きなバージョンアップをしたいと思っています。

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