HondaモータースポーツF1中本修平レポート
vol.128「「2007年始動!」



1月第2週、スーパーアグリやルノーなどがプライベートテストを行っているスペイン・ヘレスサーキットに、中本修平シニア・テクニカル・ディレクターも姿を見せた。

 今回は、スーパーアグリの様子を見に来ました。私はHonda F1活動全体の総責任者でもあるので、スーパーアグリの現状把握をする必要もある。うちからは他にも、エンジン制御を担当しているエンジニアなども立ち会っています。

−テストをご覧になって、どんな印象ですか。
 エンジン制御は、どんどん進んでますよ。19000回転ギリギリでシフトアップして使うようにするために、いかにスムーズに回すか。その制御を、今一生懸命やってるところです。もうちょっと具体的に言うと、実際に19000まで回して点火制御を働かせると、一気に回転が落ちてしまいます。しかしそれを避けるために制御が働く直前でシフトしようとすると、19000回転よりも数百回転手前が限界になってしまいます。それはパワーで言えばごくわずかですし、ドライバーもまったく感知できるようなものではないんですね。
 でもエンジニアとしては、それでは面白くありません。そこを何とか、できるだけスムーズな曲線を描きたいわけです。ラップタイムでいえば、それができたとしても1000分の1秒ぐらいです。でも100周したらコンマ1秒の短縮になります。できるだけのことはしたいですからね。他にもトラクション・コントロールのセッティングとか、ドライバビリティとか、ドライバーによって好みもいろいろ違いますから、彼らの要求を聞きながら、いろいろやっているところです。

−いよいよ来週、新車が走ります。
 これまで言ってますが、僕自身はフォーミュラカーの設計経験はありません。だから基本的には、(部下たちへ)権限委譲して、できるだけ自由にやらせる。全体のデザインには、いっさい口を出していません。ただもっと上の、抽象的な上位概念のようなものは、僕が作りました。でもそれらの言葉の中に、具体的な形を暗示させるようなものはいっさいないんです。それを読んで、開発陣に噛み砕いてほしいと言いました。言い換えれば、どうしようと悩んだ時、この言葉だけ思い出してほしいと。

−全体的な概念があって、それを基に仕事をさせたと。
 そうです。Hondaは挑戦者ですから、失うものは何もありません。もし仮に今年ランキング最下位になったとしても構わないんです。そうなってしまったら、その原因を分析して来年もっといいクルマを作ればいいんです。でも最初から、4、5位狙いだけはするなと。それを何年作っていても、決してトップにはなれませんから。

−今回のクルマは、その上位概念に従ってできたクルマになりましたか。
 そうですね。やりたいことをやれって言われて作ったら、こういうクルマになるんだなって感じでしょうか。

−発表を、楽しみにしています。

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