HondaモータースポーツF1中本修平レポート
vol.123「ドライバー篇・その1 〜トップドライバーに成長したバトン、適応に苦労したバリチェロ」



バトン、バリチェロというラインアップで戦った2006年。両者は性格からドライビングスタイル、レースに臨む姿勢と、何から何まで異なったドライバーだと、中本STDは言う。そんな2人の今シーズンを、振り返ってもらおう。

―まずバトンですが、今年はどうでしたか。
 だいぶよくなって来たと思います。クルマやエンジンに対しても、「もっと、こうして欲しい」と、ずいぶん言うようになってきました。

―本人も、勝ちたい気持ちが強かったんでしょうね。
 少なくとも、かたわらから見る限りでは、そういうプレッシャーを感じているようには見えませんでした。でも、勝ったから言うわけではありませんが、客観的に見ても、M.シューマッハ、アロンソ、ライコネンと来て、その次に続くドライバーは誰かといえば、やっぱり間違いなくバトンだと思います。

―その意味では各チームのチーム力と、彼らが抱えるドライバーの力量とが、比例しているといえますか?
 それは、どうでしょう。たとえばシーズン後半だけを見た場合、もしルノーにアロンソがいなかったら、バトンは実力でルノーに勝てたと思います。前半についていえば、純粋にクルマが負けていました。そういう意味で来年のルノーを見た場合、コバライネンがどこまで走れるかは未知数ですが、ガチンコ勝負ができる可能性は高いと思います。

―バトンはクルマがちゃんと走ってくれないときでも、ちゃんとタイムを出すドライバーですか。
 その時々の状況の中で、それなりに走らせようとします。その点は、優勝した後のレースでも変わっていません。それが技術者には、困るところでもあるのですが。

―クルマの何が問題なのか、見えにくいと?
 そうですね。

―それに比べると、バリチェロは優れたテスターといえますか?
 はい。クルマのよし悪しが、すぐにタイムに反映します。何が悪い、ここはこんな感じと、いろいろと言ってきます。非常にわかりやすいです。

―今年のバリチェロを見ると、Hondaへの適応にずいぶん苦労した印象です。
 それはありました。ただし、フェラーリからHondaというだけではなくて、V10エンジンからV8エンジンへの適応にも、かなりてこずっていました。V8になって排気量が小さくなるのだから、トルクも減るに決まっていますが、なかなかそれに合わせた走りをしませんでした。とにかく頑固なんです。デビッドソンやバトンの走行データを見せて、「ほらスロットルワークが違うでしょ」と言っても、「いや、この方が速く走れると信じている」と言っていました(笑)。

(次回は、「ドライバー篇その2」です)

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