HondaモータースポーツF1中本修平レポート
vol.118 「実力でもう1勝という宿題は、来年に持ち越しです」(最終戦ブラジルGP)



予選でトラブルに見舞われ、後方14番グリッドからスタートしたジェンソン・バトンは、すばらしい追い上げで3位表彰台を獲得した。ルーベンス・バリチェロも7位に入り、今シーズン6度目のダブル入賞を果たした。バトンのペースは、ミシュラン勢最速といっていいもの。しかしハンガリーGPに続いての、「実力でもう1勝」という目標は、達成することができなかった。

 レース自体は特にトラブルもなく、予選で出たトラクションコントロールセンサーの問題もうまく解決できました。たらればを言ってもしょうがないのですが、実力どおりに上位グリッドからスタートできれば、アロンソの前ではフィニッシュできていたと思います。でもフェラーリの速さには、かなわなかったです。今回はブリヂストンが、非常によかったですね。一方ミシュラン勢の中では、かなりのレベルで走ることができました。
 シーズン中盤にはルノーやマクラーレンに差をつけられていたわけですが、終盤ここまでばん回してきました。この流れは、来シーズンにはつながるでしょう。ただし今回ルノーは、われわれとは違うタイヤを選んでいました。もし同じタイヤだったら、状況は変わっていたと思います。その意味で純粋にクルマそのものの戦闘力を比べた場合、ルノーに追い付いたとは思っていません。

−マクラーレンとは?
 最近は、いい勝負ができています。三者を比べると、われわれは、ルノーとマクラーレンの間にいるような感じでしょうか。

−2人のドライバーの最終戦を、振り返っていただけますか。
 ルーベンスは、あまりタイムが安定していませんでした。最初の5周ぐらいはペースが伸びませんでしたが、そのあとはフィジケラよりもいいタイムを出していました。ところが2セット目のタイヤでは、また遅くなってしまいました。特にはっきりとした原因があるわけではないのですが、そういう傾向はずっと昔のジョーダンの頃からだったようです。
 バトンは予選14番手だったので、燃料をがつんと積んで、納豆走行で地道に順位を上げていく選択肢もありました。でも予選の前から、クルマがすごくいい仕上がりでしたし、ここは抜けるコースですから、燃料をたくさん積むのではなく、抜けるだけ抜こうという作戦にしました。

−目論見通りの結果になりましたか?
 結果だけ見れば、そうなりました。もちろんレースで全然抜けない可能性もあったわけですけれど、失うものは何もなかったですから。すでにコンストラクターズ選手権4位は確定していましたしね。それならば、レースを思いっきり楽しみたかった。ジェンソンも、思う存分走ってくれましたよね。1周目に4台、それからもガンガン抜いていきましたし。
 マクラーレンの2台でいうと、ライコネンは低速区間でタイムを稼ぐセッティングでした。だから彼は抜けると踏んでいました。逆にデ・ラ・ロサは、最高速重視のクルマでした。ですから、デ・ラ・ロサの後ろでてこずってしまったら、3位まで上がるのは難しかったです。それをジェンソンは、前半のうちにパンと抜いたんで、そのあとは楽でした。

−簡単にシーズン全体を振り返っていただけますか。
 最後は、ミシュラン勢トップの成績で終わりたいと思っていました。その目標に近いところまでは、なんとか到達できたとは思います。でも、もうちょっと行きたかったですね。実力でもう1勝したかったです。その宿題は、来年に持ち越されました。とにかく来年に向けては、いいクルマを作るしかありません。そのつもりで、準備を進めています。
 最後になりましたが、ファンの皆さん、この1年間応援して下さって、ありがとうございました。来年はぜひ、期待に応えられるシーズンにしたいと思います。
(次回からは、恒例の「今シーズンを振り返る」シリーズをお送りします。)

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