HondaモータースポーツF1中本修平レポート
vol.111「真っ向勝負では、まだかなわない。でも、いい線だったかなと思ってます。」



ハンガリーGPで第3期初優勝を果たし、その次戦となったトルコGP。ジェンソン・バトンは安定したペースで周回を続けながら、わずかに表彰台に届かず。しかしルーベンス・バリチェロも8位に入り、今季3度目のダブル入賞となった。

 今回のレースは、何よりも序盤にセーフティカーが入ったのが痛かったです。(2位表彰台の)アロンソよりは、燃料を多く積んでいたはずでした。いったんは5秒ぐらい離されましたが、盛り返して来て、さあこれからという時に、セーフティカーに入られてしまいました。

−レース中のペースは、どうでしたか?
 (バトンの)1分29秒台から28秒台後半というペースは、ほぼ想定通りでした。ただし1分30秒台の周回が何周かあり、その部分は課題として残りますね。グレーニング(ささくれ摩耗)もあるし、燃料を多く積んでいてクルマが重かった、というのはあるにしても、あそこは改良ポイントです。
 レースは路面温度も50℃を超えて、かなり厳しいコンディションでした。そのあたりを想定して、僕らはハードコンパウンドを選択しました。それもあって、予選ではソフトを履いたBMWザウバーに前のグリッドに行かれたわけですが、彼らは案の定レースでは苦労していましたね。
 今回のタイヤについて言うと、ハードはグレーニングの消え方がよかったです。ロングランでのペースが安定していました。それに対してソフトは、一発は速いことは速いのですが、せいぜいコンマ1、2秒でした。だからタイヤ選択は、わりとすんなりと決まりました。

−フェラーリが2台同時に入れた戦略は、妥当なものだったのでしょうか。
 あれ自体は、間違いではなかったと思います。ただ序盤のあの時点にセーフティカーが入った時に2台入れたということは、思ったよりも燃料が軽かったのでしょうね。もしも20周以上(走れるだけの燃料)だったら、1台はそのまま行かせていたでしょう。100%確実ではないですが、バトンの方が前の3台(2台のフェラーリとアロンソ)より燃料を積んでいたと思っています。それだけに、あのセーフティカーは本当に痛かった。とは言っても、たとえセーフティカーが入らなかったとしても、フェラーリ2台を抜くことはまずできなかったでしょう。アロンソについては、もしかしたら前に出られたかもしれませんが。
 セーフティカー導入が13周目というのは、タイミングとして実に微妙でした。うちの方は、バリチェロはかなり燃料を積んでいたので、ピットに入れないことはすんなり決まりました。それでは、バトンはどうするか。微妙な燃料搭載量だったんですよ。でも結局入れたのが、正解だったと思っています。
 今の力では、まだ真っ向勝負でシューマッハ、アロンソをやっつけるところまでは行っていません。今日の結果には決して満足していませんが、でもまあ、いい線かなとは思っています。もちろんハンガリーで勝っていますから、今回も表彰台に上がれれば最高でした。でも、そう思う通りにさせてくれないのが、この世界ですから。

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