初優勝を遂げたとはいえ、ルノーやフェラーリとの差は、厳然としてある。しかし彼らに追い付き、追い越すためにも、今回の初勝利の意味は大きい。「言葉だけでは理解しきれない部分を、特に優勝未経験だった若いスタッフが、感じ取ってくれるんじゃないか」と、現場監督は言う。
次は、速いドライバーがリタイアしなくても勝てるクルマを作って、早い段階で2勝目を挙げたいと思っています。速いクルマを持っていれば、戦略を考える必要はほとんどないんです。軽めの燃料で予選でポールポジションを取って、レースはスタート直後に後続と差を付けて、そのまま逃げ切れます。われわれのクルマは、ライバルと比べても圧倒的な速さはないから、いろんなことを考えないといけないんです。
―レース後、ジェンソンとはどんな話を?
抱き合っただけです(笑)。
―ここまでの道のりは、長かったですか?
あっという間のような気もしますけれど、振り返ると長いですね。皆さんからは、まだか、まだかと言われ続けていましたし。うん、長いんでしょうね。
―今回の初勝利は、チームにどんな好影響を?
チームに戻って、見てみないとわかりません。ただし、スタッフの中には日本人も含めて、勝利を経験してない人間が少なからずいます。彼らが『勝つ』とはどういうことなのか、その一部分でも理解してくれればいいと思います。2位になるのは実は簡単だということが、今まではなかなかわかってもらえませんでした。そういうのは、勝ったことがないとわからないんです。今回勝利を経験したことで、現場スタッフに限らず、日本のサポート部隊やイギリスのファクトリーの人たちも、今までとは違うということを感じてくれていると思います。
Hondaのレーシングスピリットは、「ネバー・ギブアップ、決してあきらめないこと」だと言い続けているんです。それは言葉ではわかっていても、現実にフェラーリ、ルノーとあれだけの差を見せつけられると、技術者であるからいっそう、「何を言ってるんだ」と思ってしまいます。自分たちの実力を、冷静、客観的に評価してしまいますから。それを、「追っかけるぞ、追いつめるぞ」という気にさせるには、言葉だけではなかなか通じません。今回の結果を通して、僕が言いたかったことを理解してくれればいいなと思います。
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