例年より1ヶ月早い開催。しかも天候不順のシルバーストーンにもかかわらず、今年のイギリスGPは真夏のような暑さの中で戦われた。Honda勢はジェンソン・バトンがオイル漏れによるリタイア、一方のルーベンス・バリチェロも10位完走に終わる。その結果もさることながら、不可解なコンディションに翻弄されたレースだった。
バトンのリタイアは、オイルタンクが壊れたのが原因でした。接着部分から漏れたという、非常に珍しいトラブルです。クルマそのものの、レース用セッティングは悪くなかったです。ブレーキの安定性もしっかりしていました。それで何台か抜けていただけに、残念ですね。
ルーベンスは、どうしてペースが伸びなかったのか…。グリップがないと、終始言っていました。最初はフロントのグリップがなくて、5、6周するとリアが滑り始めて、2度のタイヤ交換後も、それは同じでした。
今回はとにかく、よくわからない現象に悩まされました。4月のシルバーストーンテストのときに比べると、10℃以上路面温度が高かったのですが、終始タイヤグリップがありませんでした。うち以外のチームも、ずいぶん苦労していましたね。ポールポジションを取ったアロンソにしても、一番タイムの長い第2区間のタイムをルーベンスと比べると、ほとんど同じです。ここは低速、高速が混ざり合った区間なんですが、それ以外の高速コーナーの続く第1区間、低速域主体の第3区間では差がついています。これを、どう説明したらいいでしょうか。もしかしたら、アロンソ、つまりルノーは、高速コーナーは捨てて、低速区間に合わせたのかもしれません。予選を見ていても、高速コーナーはすごいアンダーステアで走っているのがわかりました。見るからに曲がりにくそうでしたね。
一方僕らは、高速コーナーを安全に走らないといけないからと、低速コーナーを犠牲にしました。その辺で差がついたということなのかもしれません。ちょっとまだ得心が行きませんが。まあクルマのセットアップがどうこうというより、ドライバー自身の割り切りだったような気もします。この部分はこちらでなんとかするから、低速区間にきっちり合わせてくれ、とかね。
あれぐらい路面温度が上がると、すべてのチームにとって想定外のコンディションですね。そうすると、クルマとかタイヤの方で何とかできる範囲をはるかに超えてしまいます。どうしようもないところは直すにしても、まんべんなく何とかできる状況ではありませんでした。
−走り終わった後のタイヤの状態も、決して悪くない?
悪くないというか、ほとんど摩耗していないですね。ちゃんと作動していません。タイヤ自体の温度が相当低かったようです。あれだけ路面温度が高いんだから、タイヤ温度も上がるはずなんですけどね。レース中は路面にゴムが載ってグリップが良くなるはずなのに、最後までそういうコメントはドライバーからはありませんでした。ただしグリップがないのに、滑って摩耗してしまうとか、そういうこともなかったんです。奇々怪々です。技術的には、説明のつかないレースでした。もちろんこれから詳細にデータを分析して、真の原因を探し出し、今後に反映して行きます。
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