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ハンガリーGPの後、前回のコラムを書いてからしばらくは地に足が着いていないような感じだった。上海から東京、パリ、ロンドン、イビサ島、そしてイスタンブールへ。長い時間、宙を漂っていた気がする。
もちろん、ハンガリーGPは僕のキャリアの中で最高の出来事だった。F1での優勝はF1ドライバーなら誰もが願うことだし、僕にとっても夢が現実になった瞬間だった。でも、あれが始まりであってほしいね。
優勝したことでホンダ・レーシング・F1チームの皆も大興奮だった。何年も、優勝の瞬間を目指して頑張ってきたのだから。レース後のピットガレージは沸き返っていたよ。ブラックリーと日本、両方のスタッフ全員の努力が実ったんだ。
ハンガリーの後、最初のスケジュールは上海でのPRイベント。上海にはレース後の月曜午後に着いた。
翌日の朝は、中国のプロボートチームと一緒にドラゴンボートをこいだ。38度の気温の中ではかなりきつい運動だったけれど、ボートの先端の人が太鼓をたたくから、それに合わせてこぎ続けなくちゃならないんだ。午後は記者会見。100人もの地元ジャーナリストが集まっていた。その後、インタビューが4時間。どのジャーナリストからも同じ質問をされたよ。「初優勝の感想は?」と。いい気分だった。100回聞かれたけど、今でも聞かれれば嬉しいよ!
水曜日の午後5時には東京行きの飛行機に乗った。元々は日本まで行く予定はなかったのだけれど、頑張って支えてくれている日本のHondaのスタッフにもありがとうって言いたくてね。
Hondaの本社に行ったのは木曜朝。何とも言えないすごい体験だった。ビルの外側に4フロア分もの長さの大きな垂れ幕が飾ってあって“ジェンソンおめでとう”って日本語で書いてあったんだ。それから福井威夫社長が本社内を案内してくれて、400人の人たちが熱狂的に迎えてくれた。
午後、栃木研究所に行ったらここでも大歓迎。休日に入っていたのにわざわざ僕のために駆けつけてくれた人もたくさんいて、すごく嬉しかった。
日本にはほんのちょっとしかいられなかった。木曜の夜にはヨーロッパに戻らなくてはならなかったんだ。ロンドンに着いたのが金曜の朝9時。翌日までロンドンで過ごした。その夜は、家族や友達のためにパーティを企画したんだ。最高に楽しかった。来てくれた人全員と、ほとんど夜通ししゃべっていた。
土曜の朝、地中海のイビサ島へ。別荘を借りて、3週間のサマーブレーク最後の数日を満喫した。友達も何人か来て、太陽の下、リラックスして過ごしたよ。
少し休んでリラックスして(もちろん、ハンガリーGPのビデオを何度も見て!)、それからトルコGPに気持ちを集中させた。イスタンブールは左回りのサーキット。今季F1の中ではたった3つしかないうちの1つだ。だからこのレースに備えて、いつもの心肺機能や筋力のトレーニングの他に、首を鍛えておくことが大切なんだ。
レース前の水曜にはイビサから直接イスタンブールへ。到着早々、インターコンチネンタルホテルでインタビューを受け、それからイスタンブール・パークに向かった。木曜日にはFIAの記者会見に出席。友達のデビッド・クルサードもいた。彼と会えて嬉しかった。ハンガリーの後、彼も入れて5人の現役F1ドライバーがおめでとうのメッセージを送ってくれたんだ。
この日のPRの仕事はまだ続く。夜はチームのニック・フライCEOと一緒にヘリコプターに乗り込んでイスタンブールの中心街に行った。SEIKOのイベントに出席するためだ。ボスボラス海峡を一望できる素晴らしい眺めの場所だった。限定バージョンの時計ももらったよ。
で、いよいよ金曜日。RA106は最初からスピードを見せ付けた。1時間のセッションが2回あったんだけれど、どちらでも3番目に速いタイムを記録した。これなら予選や本番も期待できると嬉しくなったね。プラクティスであれだけ速かっただけに、予選6位はがっかりだった。でも古いタイヤでもかなりスピードが出せていたから、レースではミシュラン勢の中でトップになれるだろうって自信を持ったよ。
この日の夜もボスボラスの岸でPRイベントがあったから、サーキットからまたヘリコプターに乗った。それが終わってモーターホームに帰ってきて、食事をしながら映画を見た。ウェズリー・スナイプスの「ブレイド」だ。
レースでは、思っていた通りトップレベルのペースで走れた。最後の20周は上位のラップタイムを刻みながら、マクラーレンのペドロ・デ・ラ・ロサより33秒速くゴールできた。
今シーズンもあと4レース。最後まで楽しみだね。 |
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