HondaモータースポーツF1ジェンソン・バトン ダイアリー
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 3月
 ついにシーズンが始まる。これを書いているいま、ホンダ・レーシングF1・チームの貨物は開幕のためバーレーンに向かっているところだ。僕も間もなくドバイに向かう。トレーニングをしながら現地の気候に慣れ、サーキットでチームと合流する予定だ。
 チームのスタッフは皆、今シーズンに静かな闘志を燃やしている。他のチームと比べてどうかということは実際にバーレーンで戦ってみなければ何とも言えないけれど、これまでの状況を考えると、今年はいいところまで行けるんじゃないかな。
 開幕に向けて僕は大忙しだ。2月はテストからテストへとあちこち飛び回っていた。その合間には英国にあるチームのファクトリーへ行きPRの仕事。きついスケジュールだったけれど楽しかったよ。だんだんとチームがまとまっていくのが感じられたからね。
 2月はまずバレンシアでのテストからスタートした。この冬最初の大きな合同テストで、3日間に24人のドライバーがタイムアタックした。僕らは上位のタイムが出せたし、かなり長い距離もこなせた。RA106が完成してから1週間もたたないうちでのテストだったというのにここまでの成果が出せたんだ。チームも活気づいているよ。
 2月3日にはバレンシアから英国に戻り、トレーナーのマイルス・ジョンソンとトレーニング。その後5日の日曜日にチームの2006年用グッズカタログの撮影でヘレスへと飛んだ。カメラマンは有名なファッションフォトグラファーのエリザベス・ホフ。僕はファッションが好きだから楽しかったよ。出来上がった写真はどれも壮観で、素晴らしいカタログになった。
 バーレーンでは2月14〜16日にテストも行っていて、すごく意味のテストができたんだ。僕はテストと言えども、中東の暑さに慣れておいてから臨みたかったので、少し早めに行ってたんだけど、ここではウチのチームを含めて3チームしか参加していなかった。なぜ他チームが参加しなかったのか不思議だったよ。バーレーンは気候も路面温度もものすごく高いから、タイヤやマシンの冷やし方をいろいろ研究できるからね。開幕戦にはこれがかなり役に立ってくれると思うよ。
 バーレーンにいる間、いろいろなPR活動にも参加した。そのなかにはサーキット主催のサイン会もあったんだけど、たくさんの人が来てくれた。この国でF1が受け入れられ始めていることを実感したね。
 テスト最終日の翌日、早朝6時に僕とルーベンスは一緒に英国に戻って、そのままブラックリーのチームファクトリーに直行した。ファクトリーにはスタッフが全員集まっていて、皆でバーレーンでのテストのことや新シーズンの抱負を話し合った。
 午後、2つほどインタビューを受けてから夜にはロンドンに向かい、そして翌日僕がいた場所はバルセロナ。チームPRの仕事があったからね。この業界では休暇なんていうものは存在しないんだ。でもバルセロナでは、やることは多かったけど、楽しかったよ。
 2月20日月曜日は皇太子基金の表彰式のためロンドンに戻った。チャールズ皇太子とカミラ夫人も出席していたよ。この基金は英国の恵まれない子供のためのもので、僕は親善大使なんだ。式では、俳優のピアース・ブロスナン、ジョセフ・ファインズ、ジェームズ・レマー、元サッカー選手のゲイリー・リネカーといった人たちが表彰されていた。
 その日の夜は同じくロンドンで開かれた雑誌「エル」のスタイル・アワードに出席した。僕のその日のファッションは、ドルチェ&ガッパーナの黒のスーツと白いシャツ。すごく楽しかったよ。
 次の日はバルセロナに舞い戻り、2日間のテストを行った。それを終えてようやくモナコの自宅に帰ることができたんだけど、それは何と1ヶ月以上ぶりのこと!久々に自分のベッドでゆっくり眠ったよ。もちろんモナコでもトレーニングは欠かさない。南フランスは少しずつ暖かくなっている。トレーニングにはうってつけの季節だね。
 2月28日には、ジュネーブ・モーターショーのためにスイスに飛んだ。Hondaの福井威夫社長と一緒にシビックの新しい「タイプR」を発表したんだ。これは素晴らしい車だよ。実際、僕自身もここ2年はモナコでシビックの「タイプR」に乗っているんだけれど、大のお気に入り。新しいモデルも抜群の車みたいだから、早く運転したいよ。
 福井社長はHondaのF1プログラムを強力にサポートしてくれている。モーターショーのおかげで福井社長に冬のテストの進み具合や新シーズンへの抱負を話すことができた。社長もバーレーンでの開幕戦から優勝を狙っていけるだろうって期待してくれた。もちろん、僕やほかのスタッフも同じ気持ちだよ。
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