HondaモータースポーツF1中本修平レポート
VOL.81「ヘレステストを終え、25日からの新車投入を待つばかり」
Honda Racing F1 Teamは1月第2第3週と、スペイン・ヘレスサーキットでテストを重ねた。最初のテストでは、ルーベンス・バリチェロがHondaマシンで初走行。そして翌週には、ジェンソン・バトンも加わった。ハイブリッドカーでのテストはこれで終了し、25日からはいよいよ新車での走り込みが始まる。

 最初のヘレステストは、バリチェロの初走行がメインでした。まずはV10エンジンを積んだ去年のクルマで、フェラーリとの比較をしてもらいましたが、いくつか興味深い指摘をしてくれました。おかげで両メーカーのエンジンが、開発コンセプトの点で違うこともよくわかりました。どちらがいい悪いと言うことではなく、やはり違うエンジンなんですね。ひとことで言えば、Honda V10エンジンは高回転高出力。一方フェラーリV10は、中速トルクがモリモリと出るエンジン。とはいえわれわれがドライバビリティの点で劣っているとか、そういうことではありません。
 車体に関しては、これまた制御の仕方がまったく違いました。ともに一長一短があるのですが、ひとつ言えるのは、あらゆるサーキットでそのコース特性にクルマを合わせ込んでいく技術は、フェラーリの方が優れているようです。
 その後V8エンジンに初めて乗った時は、とまどいが大きかったようです。もともとV8はV10に比べてトルクが細い上に、可変吸気システムが使えないために、中速域のトルクがうねってしまいます。トルクに山谷ができると言った方が、わかりやすいでしょうか。その辺はバルブの開閉タイミングやエキゾーストパイプの取り回しとかで調整するんですが、可変システムがあった時のようなきれいなカーブは描けません。ある場所でトルクが抜けて、その先でまたガバッと盛り返したりするので、クルマの挙動がスナップオーバーステア(急激にリヤ荷重が抜けて、スピンモードに陥る状態)になってしまったりするんですね。
 それでも今週の3日目には、1000分の2秒とはいえジェンソンより速いタイムを出しました。

−クルマにもエンジンにも、かなり慣れてきた?
 そうですね。フィードバックも正確で、わかりやすいです。でもミシュランタイヤにまだ手こずっています。おいしいところが、まだ使い切れていないというか。ブリヂストンの方が、その領域が広かったようですね。

−シートが合わなかったようですが。
 先週はかなり影響があったようです。フェラーリの方がシートが立っていて、うちはより寝そべった形になっています。それでブレーキングの際に、どうしてもずり落ちてしまうようです。いろいろと調整をして、今週はずいぶんよくなったようです。

−2台とも連日、多くの周回数をこなしていますね。
 そうですね。霧が出たりして、走れない時間が多かった割りには、2台ともよく走っていますね。19日にルーベンスのエンジンにトラブルが出ましたが、これはベンチ段階から確認していたものです。原因はわかっていて対策部品を作っています。

−その辺を除くと、テストは順調ですか?
 もうちょっと、馬力がほしいです。今週一緒に走っていたウィリアムズのコスワースエンジンは、3周だけでしたけれど高回転で回して、速かったですね。19400回転ぐらい回っているようです。そうすると、うちより馬力も出ているんじゃないかな。

 今月の25日からは、いよいよ新車を走らせます。最初から、新車2台を投入する予定です。テストもここまでは一応順調ですが、新車は空力も足回りもガラッと変わるので、はたしてどこまで行けるかですね。少なくともあと1秒はタイムを縮めないといけません。ルノーは新車で、1分17秒台で走っていますからね。どこで詰めていくかというところです。
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