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§ 木内健雄プロジェクトリーダー インタビュー
「ここから先は頂点を狙うだけ、今年は何よりも“勝利”に重点を置いた攻めの戦いをしたい」
今シーズンの開幕に際して、高々とこう宣言した2005年のB・A・R Honda。だが、そうした期待とは裏腹に、シーズン前半戦は予想外の厳しい戦いを強いられることになった。果たしてその原因はどこにあったのだろうか?木内健雄プロジェクトリーダーの答えは驚くほどに率直だ。
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「正直に言って、シーズン開幕当初に立てた自分たちの目標設定が“甘かった”という事だと思います。
今年はレギュレーションが大きく変わり、当然、それによって失われるパフォーマンスが出てくるわけですが、それを冬の間にどこまでカバーして開幕に臨めるか、というのが勝負になってきます。もちろん、今シーズンの終わりまでには、去年並の性能に戻ってしまうだろうとは思っていたんですが、開幕時点では、その半分ぐらいまで戻しておければ大丈夫かな?という、甘い読みをしてしまいました。
でも、F1というのはやはりそういう世界じゃなくてね、レギュレーションがどう変わっても、また、自分たちにそれが可能であろうがなかろうが、ともかく進歩を目指して進み続けなきゃいけなかったんです。こうした部分で、我々の読みが甘かった。それがまず第一の失敗でした」
そして、それに追い討ちを加えたのが、サンマリノGPで起きた「燃料タンク問題」によるペナルティだ。序盤戦の苦しい戦いからようやく上昇気流に乗り始め、バトン、琢磨がダブル入賞を飾ったイモラのレースで、レギュレーションの解釈の問題からバトンのマシンが車重規定違反に問われてしまい、結果的に2台揃ってポイント剥奪。その上、バルセロナ、モナコの2戦出場停止という重いペナルティを課されてしまう。イモラとその後のテストで、マシンの大きな進歩を確信し、自信を持って臨むはずだったバルセロナ、モナコでの欠場もまた、B・A・R
Hondaの前半戦に大きな影響を与えることになったという。
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「もうひとつの問題は、今年のレギュレーションでポイントになっているタイヤの使い方で、ピットストップごとにニュータイヤに交換できた去年までは、ある程度タイヤの性能に頼った走りが可能だったのが、今年はもっと上手にタイヤを使わなければいけなくなりました。
もちろん、タイヤを労わるためにも空力は大切な要素ですが、やはりそれだけではダメで、今年はよりタイヤに優しいクルマを作るためのサスペンションやメカニカルグリップの確保に、より大きな重点が置かれるようになっているのに、バルセロナとモナコの2戦を走れなかったことで、結果的にそうした点を意識するのに時間が掛かり、ニュルブルクリンクで痛い目に遭ってようやく気が付いた。
ところが、他のトップチームはもう少し早い段階で、そうした痛い目に遭って、既に対策を講じ始めていたんです。そういう意味でも、あの2戦欠場は痛かったと言えるでしょうね・・・」
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こうして、苦しいシーズン前半戦を経験したB・A・R Hondaだが、エンジンの面では、比較的順調な開発が進んでいるといって良さそうだ。
「エンジンに関しては、開幕前にちょっとドタバタした部分があるけれど、全体としては順調で、欠場明けのニュルブルクリンクでも新スペックが使えなかった分、研究所にも無理をしてもらってフランス、イギリスの2連戦には、当初の予定を前倒しにして新しいバージョンを投入することができたし、この後も、シーズン終盤の鈴鹿に向けて、何段階かバージョンアップを予定しています。
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ポイントランキングでは、まだかなり下のほうだし、マクラーレンの速さも別世界ですが、我々もここ数戦でだいぶまともなレースができるようになってきていて、内容的にはトップ2チームに次ぐ3番目のポジションにいられるようになってきていると思います。いくらランキングは気にしないと言っても、まずは、今の『3番手のポジション』をキープすることが最低限の目標。
もちろん、シーズン当初に立てた『一番上を狙う』というテーマは捨てずに持っていたいし、それを目標にして努力し続けることが大切なのですが、かといって“ホームランか三振か”といった形ではなく、まずはコンスタントに2塁打が狙えるような戦い方をしていかなければならないと思っています。
序盤にいろいろと躓いてしまったけれど、立ち上がってようやくファイティングポーズを取れるところまでは戻ってきました。フランスGP以降、バトンも4戦連続で入賞していますし、琢磨君もようやく初ポイントを挙げることができましたから、マクラーレンはちょっと難しいかもしれないけれど、ここから後数戦のあいだには何とかしてルノーに並びたいですね」 |
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