HondaモータースポーツF1 〉2005年 序盤戦総括
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「これで何とか今年のスタートラインに立てたという感じですね・・・」。第4戦サンマリノGP後のインタビューで、Honda F1の木内健雄プロジェクトリーダーはそう語った。昨年のコンストラクターズランキング2位を受け、「勝利」を最重要課題に設定して臨んだ2005年のF1グランプリ。だが「打倒フェラーリ」を目指したB・A・R Hondaは、シーズン序盤から予想外の苦戦を強いられることになった。 
 
「去年の結果をふまえ、今年はもう1レベル高いところを目指していたのですが、その意気込みが空回りしてしまったというのが率直な印象です。
 
エンジンに関して言えば、去年、フェラーリとの間にあった差を考えた結果、これまでのものを熟成するのではなく、来年からレギュレーションが変わってV8になるのを承知の上で、敢えて新設計のエンジンを投入するというチャレンジを選んだわけですが、ハイブリッドカーを使ってテストした段階で見つかった課題を新車がデビューしてからシーズン開幕までに十分直し切れなかったという反省がひとつ。
 
一方、車体は新車が実際に出来上がってから空力面での問題が見つかり、結果として十分に対応しきれないままの状態で序盤戦を戦うことになってしまいました」
 
 今年からテクニカルレギュレーションが改正され、前後のウイングやディフューザーなど、空力パーツの規制が厳しくなったF1グランプリ。これによって失われたダウンフォースをどこまで取り戻せるかが2005年のニューマシンを開発する上での大きなポイントとなっていたのだが、開幕当初のB・A・R Honda 007が苦しんだのがこの空力の「安定性」だった。
 
「風洞実験のように単独でストレートを走っている状態のダウンフォースはライバルに対してそれほど遜色ないのですが、他のマシンの後ろを走行したり、ブレーキング時や風の影響を受ける・・・など、いくつかの条件でダウンフォースレベルが足りなかったり、安定しないというのがシーズン序盤の状況でした。
 
木内プロジェクトリーダー
 それでも第2戦のマレーシアでは比較的コンディションも合っていて、パフォーマンス的にも悪くなかったはずなのに、今度はエンジンの信頼性の問題で足を引っ張ってしまうなど全体的にチグハクな戦い。セパンで起きたトラブルもエンジン本体の問題ではなく、これまで気にもしていなかった小さな部分が原因だったのですが、結果的にそれを見落としてしまっていたというのは、自分たちがどれだけエンジン全体に対してキチッと気配りができていただろうか?という反省に繋がりました。
 
 ただ、敢えてポジティブに捉えるならば、序盤の3戦という短い間に様々な問題が一気に露呈した結果、それを取り返すための緊張感や危機感をチーム全体が共有できたと言うのは、これから長いシーズン全体を通してポロポロと問題が出るよりも、かえって良かったのかもしれません」
 
 度重なるトラブルに噛みあわない歯車・・・。第3戦のバーレーンGPまで完走すらままならないという苦しい状況はしかし、3週間のインターバルを経て臨んだ第4戦のサンマリノGPで一気に好転の兆しを見せ始める。2度のテストを経て投入された新しい空力パッケージと、バージョンアップされたHonda V10を得たB・A・R Honda 007が、ヨーロッパラウンド緒戦のイモラでようやくそのポテンシャルの片鱗を発揮し始めたのだ。
 
「シーズン序盤の苦しい戦いで生じた危機感を持った結果、B・A・RとHondaの両方がもう一度ゼロに戻って基本的なところからすべてを見直そう、足りないところだけでなく、悪くないように見える部分も、勝つために何が必要なのか根本から考えて取り組もう・・・というアプローチを取れたことで、ようやく戦うための“足腰”ができたと考えています。
 
 もちろん、勝つことを考えればまだまだパフォーマンス的に不足しているのは明らかで、これから取り組むべき課題も多いのですが、とりあえずはしっかりと地に足を着けてファイティングポーズが取れるようになったというのは大きいですね。
 
 今年はレギュレーションの関係で、前のレース結果が次のGPの予選の出走順にも影響してしまうため、一度つまずくと、どうしてもそれを後に引きずってしまうことになるのですが、そうした悪い流れもサンマリノGPで断ち切ることができました。我々同様、序盤戦を苦しんだフェラーリもいよいよ本領を発揮してきましたし、ルノーやマクラーレン、ウイリアムズなど、今年のF1はこれまで以上に接近した戦いになりそうですが、そうした中で我々もここから更に気を引き締めて、全力を尽くしたいと思っています」
 
 B・A・R Hondaは、第7戦ヨーロッパGP(5月29日決勝)からF1にチャレンジする。
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