HondaモータースポーツF1ジェンソン・バトン ダイアリー
§Q:今年は表彰台が遠くに感じたりはしないですか?

 A:サンマリノGPでなんとか開幕からのパフォーマンスを挽回しようと、ファクトリーで働く全スタッフが一生懸命頑張ってくれたおかげで、バーレーンとイモラの間の3週間で、B・A・R Honda 007はまるでまったく新しいクルマみたいに生まれ変わっていた。エンジン、Honda RA005Eの最新バージョンは、どんな回転数でもきちんとパワーが出せるようになったし、エアロダイナミクスにもいろいろ改良が加わって、それまでのように突然オーバーステアになってしまうこともなくなった。実際、テストではグランプリディスタンスを20回もこなして信頼性に関する問題はほとんど発生しなかった。すごいことだよね。ポールリカールのテストでは、なんと750kmも走ったんだ。1日でだよ!こんなに走ったのは初めてだったし、テストセッションの成果としても、僕がこのチームでこれまでやってきた中で最高の部類に入るんじゃないかなと思う。

 僕たちはこんなに一生懸命だ。だから、このみんなの努力を、今後のレースで絶対証明したいと思っている。B・A・R Hondaは今年、絶対に勝てるはずなんだからね。

§全員、サンマリノGPに自信を持って臨んだんだよ

 バーレーンGPがあった日曜の夜に、前回のこのコラムを書き終えてすぐ、マクラーレンの株主、マンスール・オジェの奥さん、キャシーのバースデーパーティに出席するためマナマに向かった。パーティには、F1関係者も大勢かけつけていて、ミハエル(・シューマッハ)も来ていたよ。そういうライバルたちとレース以外の場所でしゃべることができたのは楽しかったな。素晴らしい夜だった。

 翌日にはモナコへ行き、そこで2日ほどトレーニングをしてから、スペインのバルセロナで2日間のテストをこなした。1日目は信頼性とタイヤのテストで、2日目はエンジンとエアロダイナミクスのテストだった。これまでのマシンに比べて長距離走行でも安定していたし、セットアップを変えた分だけしっかりと応えてくれた。そうした反応から、エンジンもエアロダイナミクスも、ものすごく進化したってことがすぐに分かったよ。新しいタイヤでアタックしたとき、非公式だったけれどラップレコードを記録したんだよ。チームの誰もがレースへ向けて自信を持って、とてもハッピーな気持ちでテストを終えたんだ。

 テストのあと、僕はスペインから、姉のターニャの結婚式のためにイギリスへ戻った。前回のコラムに書いたとおり、花嫁を教会まで送り迎えする大役を仰せつかっていたからね。ターニャが少しでもリラックスできるように、FMラジオのクラッシック番組をずっとかけて、なるべくゆっくり走ったよ。

 実は、結婚式までの1週間は本当に大変だったんだ。ターニャは、式の3日前になってウェディングドレスが気に入らないと言い始め、それでなんと、もう一着買いに出かけたり! 周りのみんなまでやきもきしているみたいだった。でも何とか望みどおりのドレスを手に入れて・・・まあ結局、最後にはうまくいったんだけどね。

 ターニャの結婚式の翌日には、別の結婚式に出席するために車を走らせた。もうひとつの結婚式の主役は、僕の療法士をやってくれているフィル・ヤング。花嫁さんはオーストラリアの人だった。レース仲間がたくさん来ていて、くつろいだ雰囲気のとてもすばらしい結婚式だったよ。

 次の日には、イスタンブールでラッキーストライクのPRの仕事が入っていた。今年のはじめにこの仕事のオファーがあったとき、ぜひやりたいと思ったんだ。8月21日にトルコGPが行われる新しいサーキット「イスタンブール・オートドロモ」を見る絶好のチャンスだったからね。

 僕が行ったとき、オートドロモはまだ完全にはでき上がっていなかった。でも乗用車で走ってみることはできたから、レイアウトの感じをつかめたよ。かなり良くできたコースだと思った。優れたサーキットに必要な要素、つまり、高速コーナーとオーバーテークのポイントがすべて盛り込まれていた。ジュニアフォーミュラ時代に何度もレースで走ったイギリスのオールトン・パークに似ていると思った。起伏の多いコースだから、F1マシンで走ったらスリルいっぱいだろう。

 その後はポールリカールで1日のテストを行った。このテストで、さっきも言ったように1日で750kmを走り抜いて、信頼性は問題なし。僕も疲れを全く感じなかった。つまり、今の僕の体調も最高だっていうことだね。新しくスポーティング・ディレクターになったジル・ド・フェランとは、ここで初めて一緒に仕事をした。彼がチームに加わってくれて本当にうれしい。人生に対してものすごく前向きで、レース経験も豊か。それにアメリカでHondaと組んでいい成績を残してきているしね。彼の存在はチームにとって大きな財産になると思うよ。

 僕たちB・A・R Hondaのチーム全員が、イモラでの勢いをこのまま持ち込んで、これまでの努力を続けていくことができれば、これからも必ずポイントを重ねていけると思っている。そしてもちろん、初勝利だってね。さあ、かかってこい!

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