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F1世界選手権第18戦日本グランプリを週末に控えた10月4日、B・A・R Hondaは都内のホテルでの記者会見を行った。
株式会社本田技術研究所 F1プロジェクトリーダー 木内健雄が自身のF1日本GPの思い出と、今季F1日本GPへの思いを語った。
■もうまもなくF1日本GPです。今まで数多くの名場面があったF1日本GPですが一番印象的だったレースはいつですか。
良い意味で一番印象に残っているのは91年です。 当時ウィリアムズのマンセルとタイトル争いをやってまして、ベルガーが先行して、セナが安全なペースをキープして、2コーナーでマンセルがコースアウトした時点でタイトルが決まりました。そのあと30秒近くあったベルガーとの差をセナが追い上げて、最後の最後にベルガーがセナに譲ったような形でワンツーフィニッシュで終わりましたけれども、あれが一番良かったです。 鈴鹿って、すんなりいったレースってあんまりないんですよね。そういう意味では、91年は割とスタッフもストレスなくワンツーフィニッシュができ非常に良い思い出ですね。
―あれは凄く印象的なレースでした。
一方、翌年の92年第2期最後のレースは、セナが3周目でしたか、コースオフしてしまったんだけれども、あれは私の責任も含めて凄く印象深い悔いが残るレースでした。天候がコロコロ変わった週末で、土曜日はストレートがすごく追い風だったんですね。風向きでストレートのスピードって非常に変わっちゃうんですね。土曜日は向かい風に合わせてセッティングしたんだけれども、日曜日は追い風になるのが分かってましたから、回転が上がり過ぎないようにギアレシオを調整したかったんです。 通常であればギアレシオ1枚か2枚調整すればいいんだけれども、あの調子だとエンジンの回転数が1000回転くらい変わっちゃいそうだねと。1000回転も余計に回しちゃうとエンジンが壊れちゃうんで、5枚か6枚という大きな調整をしたかった。土曜の夜、チームとセナと話をしたんだけれども、彼は全く信じてくれないわけです。それで、あまり大きな調整ができませんでした。
ベルガーは、例えば「ストレートでその回転が来たらこうしてくれ」というのをうまくやってくれないケースが多くて、実はベルガーのそういう部分を心配していたんだけれども、ベルガーはキチッとやってくれた。ところがセナの方が何ラップか高回転域を試してエンジンがブローしてしまいました。レース前に急遽スペアエンジンに取り替えたんだけれども、そのスペアエンジンがスタートからだんだんエアが抜けてリタイヤでした。従って結果は結果で仕方が無いんだけれども、自分的には土曜日にもっと強く言って、日曜に向けてキチッとしたセッティングをさせていればああいうことは起こさなかったよな、と凄く後悔してますね。
―その第2期Hondaを経験したメンバーはそのような事を踏まえて第3期を戦っているのでしょうか。
そうですね。
■2005年までのジェンソン・バトン選手と佐藤琢磨選手はいかがでしたか。
ジェンソンは、前のシーズン非常に安定した走りでランキングの上の方にいて、その状態をキープしてくれている感じです。
琢磨選手の方は去年エンジントラブルがいくつかあって足を引っ張っちゃったのもあるんだけれども、レギュラードライバー1年目っていうことで、多少ムラがあったと思うんですね。でも、今シーズン確かにいろんなことがあって結果には残せてないんだけれども、やっぱり琢磨選手の安定感っていうのは非常に高いところへステップアップして来たなと感じているし、本来の開発能力も非常に高いものがあって、チームに貢献してくれています。残念ながら結果が今シーズンは伴ってないんですけれど、どちらも順調に育っていると思っています。
―レースウイーク中琢磨選手は色々と話しかけてくるのでしょうか。
僕は、開発は開発の責任、ドライバーはドライバーの責任っていうのがあると思うんですよ。もちろん相談しながら高い次元へチームを持って行くっていう作業は必要なんだけれど、今回駄目だったのをどうするんだとか、そういうのはもう分かりあってチームとしてやっていますんでね。
―「もう言わなくても分かる二人」という関係なのでしょうか。
それもあるだろうしそれぞれがお互いの期待に応えるようにキチッとやりましょうねっていうのが暗黙の了解になっていると思うんですよね。
―本当にプロ対プロっていう感じなのでしょうね。
じゃないとね、オジさんと息子みたいになっちゃいますからね。
■日本人ドライバーがいるとファンも凄く盛り上がるわけですが、F1日本GPに向けての琢磨選手はいかがですか。
少し水を掛けてクールダウンさせたいなっていうくらいですね。今シーズン結果が出てないから、なおさらファンの皆さんへ応えたいという思いが強いと思うんですけれども。
チームも、鈴鹿は我々のホームコースっていうことで、全てをリセットして組み上げて、鈴鹿のベストはどんな走りかということを、もう1回考えて構築したものを持ち込んでいるし、ドライバーも気分を新たに何とかここで良い結果を出すという気持ちで、日本に乗り込んできています。
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