グランプリレースの現場を支えるメカニックやエンジニアが所属するレースチームに対し、テスト現場を切り盛りするのがテストチーム。「テストチームがあってこそレースができる」そう語る中本は、Hondaのテストチームを仕切るリーダーに絶大な信頼を寄せている。

 例えばテスト中、最高速が5km/h落ちたとします。それが、エンジンが原因で5km/h落ちたとしたら、30馬力も40馬力もパワーが低下したことになります。5馬力程度だったら、使っているうちにロスすることもあり得ることですが、30馬力もパワーが低下したエンジンというのは、すでにもう壊れていると考えられます。ですから、ベンチテストでエンジンが壊れる状況などを間近で見て理解しているエンジニアは、エンジンが原因で5km/h遅くなったなんてことはあり得ないと考えます。
 
 でも、それを知らない人は、エンジンが原因ではないかと言ってきたりすることがあります。それに対して、テストチームリーダーは的確な方向性を与えることができるんです。
 
―そうすると、車体エンジニアもエンジンのことを良く知り、エンジンエンジニアも車体のことをしっかりと理解しているのがベストですか。
 
 それが理想ですね。私はもともと車体設計の出身で、今はエンジンを見ています。だから、エンジンに対する知識や経験は、今一緒に仕事をしている仲間よりは少ないんです。ですが、全体を見るという点においては長けていると思います。
 
 そして、テストチームのリーダーは、バックボーンはエンジンなんだけど、いろんな経験の中で、車体全体を非常に高いレベルで見られるようになっています。そういう人は、テストにもレース現場にも、絶対に必要なんですね。
 
―その意味で中本さんとは、良いコンビというか、相互補完的な関係ですね。
 
 補完というのとはちょっと違っていて、全部を任せられるんですよ。例えば彼にレース現場を担当してくれと言っても、完璧にできるでしょう。実際今までやってきたわけですから。むしろ、僕より良いやり方をするかもしれない、それぐらいの人ですよ。そのような人がテスト現場を仕切ってくれているというのは、非常に心強いです。僕はいつもテストを見に行ってしまうんですけれど、そこで何の口を出す必要もないくらいです。
 
 次回は、具体的にテスト現場でどんなことが行われているか、お話しましょう。
 
※今週末9月26日(日)は、第16戦、初開催の中国GP(上海サーキット)です。皆様のご声援をよろしくお願いいたします。
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