「2005年シーズンに向けて」(その2)
 新年第1回目の中本レポートは、「2005年シーズンに向けて」その2をお送りします。今年も開幕戦まであと2ヵ月。B・A・R Hondaはそれまでに、何を目標にどんな準備を進めていくのか。今回は、1月からの具体的なスケジュールを中心にお話しいただこう。

 明けましておめでとうございます。今年は昨年以上の、飛躍の年にしたいと思っています。
 
 さて、毎年この時期は、ニューマシン製作の最後の追い込みにかかっている時で、ファクトリーのスタッフはクリスマスの前後にわずかな休みを取っただけで、あとは年末年始もほとんど返上で働いていました。日本の研究所も同様です。一方、レースやテストチームといった実戦部隊は、この時が1年のうちでも唯一休めるときですから、それぞれ家族水入らずの休暇を楽しみました。
 
 とは言え、1月の2週目からはスペイン・ヘレスでウインターテストも再開されますので、今はもう臨戦態勢に入っています。年明けはまず、2台の2005年仕様のコンセプトカーを走らせます。これはエンジン、ギアボックス、リアサスペンションなど、マシン後部がそっくり新しくなったもので、空力パッケージも大部分は2005年のレギュレーションに合わせたものです。すでに年末のテストで1台は走らせていたわけですが、これから2台体制でフルに、信頼性や性能確認、そしてタイヤテストなどを続けて行います。
 
 そして1月16日には、待望の新車が出てきます。同時にミシュランからも、予選+レース距離の350kmを走り切ることを見据えたタイヤが出てきますから、ロングランテストを行います。そして2月に入ったら、もう開幕戦がすぐ先ですから、そのための最終的な性能確認ということになります。
 
―空力、エンジン、タイヤのレギュレーションが大きく変わることから、やることは山ほどありますね。空力は前年比30%ほど落ちるようですが、3月の開幕戦までにはどの程度まで挽回できると考えていますか?
 
 まあ最悪でも、前年比で15%落ちまでは挽回したいと思っています。ただし、もともと我々とフェラーリとは空力性能に関してかなりの差があるでしょう。だから、仮にフェラーリの空力が前年比で15%落ちていたら、我々は去年と同等レベルの空力性能まで持っていかないと、なかなか勝負にはならないでしょうね。別に両者の空力性能の差が15%あると言っているわけではないのですが、それぐらいの気持ちでいかないと勝てないだろうと思っています。
 
―エンジンはどうですか?
 
 ニューエンジンは、去年型に比べても一層の軽量化、低重心化を実現しています。実際に2つを並べて見れば、あまりに低くなっていてびっくりすると思いますよ。ただ今はまだ、2レース分の距離を走れるものではありません。実戦仕様が登場するのはやはり2月ですね。研究所で今、次に投入する仕様を大車輪で開発しているところです。
 
―まだちょっと早いかもしれませんが、今年の目標は?

 
 確かにまだお答えするには少し早いですね。去年は「選手権3位、複数回の表彰台、初優勝」という目標を掲げたわけですが。
 
 エンジニアというのは、数値目標が命なんですね。数値目標には、「何グラム軽くした」「何馬力パワーを上げた」という技術的なものと、「シーズン中1勝」「表彰台に何回」という結果的なものとがあります。そういう数字だけを目指して、頑張るわけです。その2つの数値目標にはもちろん密接な関係があって、「1勝するためには、技術的にはこのレベルに達していなければいけない」というものがあります。それはボルト1本の重さ、強度に至るまで、あらゆるパーツに数値目標を立てるということです。
 
 それらを突き詰めていくことで、具体的な結果に手が届くようになるわけです。去年の目標の中では、初優勝だけが達成できませんでしたから、今年は少なくともそれは手に入れたいですね。(この項続く)
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