「2004年シーズンを振り返る」(その6)
 最終戦ブラジルGPでは、これまでのようなフェラーリの圧倒的な強さは影を潜め、上位チームがほぼ同じペースで周回を重ねていく。B・A・R Hondaにも十分な勝機はあったが、トラブルでジェンソン・バトンが早々に戦線離脱。一人残った琢磨は6位入賞を果たし、チームのコンストラクターズ選手権2位が確定した。

―ブラジルはフェラーリが、初日からいきなり速くはなかったですね。
 やはりタイヤだったんでしょう。ブリヂストンは、もう少し高い温度を設定していたんでしょうね。
 
―レースでも、トップ勢のラップタイムはほとんど互角でした。

 そうでしたね。でも、琢磨君はもっと速いペースで走ることもできた。その典型的な例が、最終ピットアウトしたときの順位ですね。あの時ラルフの前に出るとは思わなかったでしょう?
 
―ええ。アロンソ、ラルフ、ミハエルと数珠繋ぎになっていたので、その一番後ろにならなくて良かったと思いました。
 ところが、僕らは逆に、アロンソの前の4番手でコース復帰できると思っていた。それができなくて、「ああー、残念!」と思ったんです。チームから「抑えて走れ」の指示が出ていたのですが、コンマ5秒分だけペースを落とさず普通に走っていたら、それも十分可能だったんです。バトンが序盤にリタイヤして、選手権2位を確実にするために、チームもかなり慎重になっていたんです。
 
―シーズンを通してみると、今季B・A・R Hondaは初優勝を逃しましたが、勝っておかしくないGPもいくつかありましたね。
 そう。勝っておかしくなかったのは、アメリカとブラジルでしたね。その二つほどではないけど、上海は勝たないといけなかったし、モンツァ(イタリア)もチャンスはあった。天候に恵まれていたにもかかわらず、という意味ですけどね。もしも完全ドライ路面で戦われていたら、全く話にもならなかったでしょう。
 
―今年も結局、クルマとかチーム力でいうと、フェラーリの優位が目立った。しかしそんな中で、B・A・R Hondaが食い込めるチャンスも、いくつかあったと。
 そういうことですね。食い込むというか、勝てるチャンスのあったレースですね。あと、前半戦、例年なら路面温度がすごく上がるグランプリが、今年に限って涼しいレースが続いたのも我々には痛かった。メルボルン(オーストラリア)とか、セパン(マレーシア)とかね。初開催のバーレーンも、決勝日だけ涼しくて、年に3日しか降らないという雨が降ったし。
 
―今シーズンを振り返ると、コンストラクターズ選手権2位という成績は妥当といえますか。
 出来過ぎだと思いますよ。マクラーレンは明らかに前半戦で苦戦している。ウィリアムズも同じような感じで、中盤から巻き返してきた。そのあたりにも、かなりの部分助けられました。ルノーは逆に、中盤以降低迷したようなところもあった。でも彼らはみんな、1勝ずつしている。ところが、2位の我々だけが、未勝利に終わった。Hondaとして最も重視する勝利を、逃してしまったんです。(次回はいよいよ、シーズン・レビューの最終回です。)
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