「2004年シーズンを振り返る」(その5)
 シーズン後半のB・A・R Honda は、ドイツGPで復活の糸口をつかみ、再びコンスタントに上位入賞を重ねていく。しかしイタリアGPのレース展開が端的に示すように、フェラーリとの差は依然として大きかった。

 モンツァ(イタリアGP)は高速コースですよね。ああいった、ダウンフォースを効かせる必要がなくウイングを軽くできるサーキットは、空力効率に優れるフェラーリにすごく有利になるんです。逆にたくさんのダウンフォースを必要とするコースだと、フェラーリもウイングを重くしなければならず、我々との差が出にくいんですけどね。モンツァではその空力性能差があからさまに出る。
 
 我々は、フェラーリよりウイングを重くしないと、コーナーリングスピードで大きく差をつけられてしまう。だから、結果として最高速で大きな差がでてしまうんです。
 
―B・A・R Hondaがフェラーリと同じ最高速を出そうとすると、ウイングを相当軽くせざるを得ず、そうするとコーナーで曲がらないマシンになり、大きく遅れをとってしまう・・・
 そう。その辺の改良が、来年に向けての一番の課題ですね。とにかく空力が遅れている。
 
―中国はどうでした?
 初開催のGPとしては上手く行ったほうですね。結局バリチェロにやられてしまいましたが。
 
―そして鈴鹿GPの敗因は、経験の差が出てしまったということでしょうか?
 経験というか、台風による悪天候続きで、セッティングが決まっていないクルマで走りましたよね。だから、サーキットに持ち込んできた時のクルマの性能差が、そのまま結果に出てしまったレースでした。
 
 我々も今季、サーキットによっては、持ってきた状態からほとんどセッティングを変更しなくても速さを発揮できたことも少なからずあった。でも逆に、車高からサスペンションのバネからウイングのダウンフォースレベルから、全部変えてしまう場合もある。初めてのバーレーンがそうだったし、前回話したフランスとイギリスは、セッティングが決まらずに1日中作業していた。空力の問題で、ドライバーから「クルマが壊れているみたいだ」って言われた程でしたからね。
 
 そんな中で鈴鹿GPは、1日でもいいからドライ路面で走れていたら、車高やサスペンションなどセッティングを詰められて、もっと良い成績が上げられていたんでしょうけどね。ただ、バトンも琢磨も、まだかなり濡れている路面状態で1回目予選を走って、結構良いポジションを取れた。他の上位ドライバーが、かなり苦労している中でね。2回目予選も、2人ともガンと順位を上げましたよね。そしてドライ路面ぶっつけ本番の決勝で、3−4位を獲得した。もっと良いコンディションで走ったモントーヤもライコネンも、これだけの走りはできていない。その意味でバトンと琢磨は、あのような状況の中、随分良い仕事をしてくれたと思います。(この項続く)
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