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ジェンソン・バトンが初ポールを獲得し2位表彰台に上がったイモラサーキットに似たレイアウト、ジル・ビルヌーブサーキットでのカナダGPは、大きな期待のかかったレースだった。しかしフェラーリの壁は厚く、バトンは4位でチェッカーという今ひとつの結果。ところがレース後の車検でラルフ・シューマッハ(BMWウィリアムズ)が失格となり、今季5度目の3位表彰台が転がり込む。一方の佐藤琢磨は、またもエンジンブローでリタイアとなってしまった。
前戦ニュルブルクリンクでのトラブルも含めて、根本的に直したエンジンが今回のカナダで投入したものだったんです。考えられるあらゆるものを投入して、安全サイドに仕様変更をしました。前のエンジンに比べてパワーも上がっていますが、それ以上に信頼性を重視した「守りのエンジン」とでも言うべきものでした。それが壊れてしまったから、余計にショックです。とにかく琢磨くんに申し訳ない。
― トラブルは琢磨くんにばかり集中している。そうすると、何か特別な理由があるんじゃないかとシロウト考えでは思ってしまうんですが。
そう思ってしまうんですよ。それで全部のデータを、スタッフみんなで手分けして詳細に調べたんです。そうしたら、ジェンソンと琢磨と、エンジンの使い方にほとんど差はなかった。でも、ただひとつだけ、シフトダウンの際の回転数が違っていた。
― 琢磨の方が高い?
いや、低いんです。だからエンジンに対しては、むしろ優しいんです。でも「そこが違うのならば、もっと高いポイントでシフトダウンしてみましょうか」と琢磨くんから申し出てくれて、わざわざ自分のスタイルまで努力して変えてくれた。テストの時だけでなく、今回のカナダGPでもね。これだと乗りにくいって言いながらもね。それなのに、なんで?って。
― 琢磨の方がむしろエンジンに優しい使い方だから、それが原因とは考えにくい。
そう、考えにくい。なのに、違いがそれしかないのならと、あえて変えてくれたんです。オーバーヒートしたわけでもない。Tカー(スペアカー)に代えたので、冷却はもう一段階効く方に振ったし、水温も問題ありませんでした。スピンした数周後にブローしていますが、それは関係ないと思いますよ。
― 一般的に言って、ドライバーが雑な使い方をすることで、エンジンが壊れることはありえるんですか?
ありえますよ。でもシフトアップ側の回転数を見ても、琢磨くんのはまったくバラツキがなく、きれいに並んでいる。スロットルの開け方などは、ジェンソンとはスタイルが違うから違う。でもそれで壊れるなんてことはないでしょう。
― ほんとに、ミステリー。
ミステリーです。これからイギリスか日本に送って原因を調べて、インディアナポリスまでに大急ぎで対策を施さなきゃいけない。
レース前にエンジン交換して、完全なフレッシュエンジンだったんです。まったく使ってないから、高回転頻度も余力がある。使いたい時に、余裕でブン回せるんです。レース展開によっては、もっとコキ使ってもいいように用意していたのに、そうする前に終わってしまった。前を走るクルサードはもう1回ピットに入るし、このままいけば入賞できると思ったんですけどね。その矢先に、でした。ほんとに琢磨くんには、申し訳ないですよ。(終わり)
※F1世界選手権、次戦はRd.9・アメリカGP、6月20日(日)決勝です。皆様のご声援をよろしくお願いいたします。
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