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1. 設計
 F1マシンの設計が行われるのが、設計ルームだ。車体の開発に関しては、B・A・Rと共同で行われており、ここでは先行開発的な要素も含まれている。量産車開発で培った様々なシミュレーション技術を駆使して、F1の設計が進められているのだ。
 
「私の担当は、グループ的にはサスペンション設計です。B・A・Rが提案するものに対して、我々はより良いものを、B・A・Rはもっとより良いものを、という、切磋琢磨する形で、サスペンションの設計業務というのは進んでいると言っていいと思います」
 
 3Dプロッターとは、CADデータをもとに、ノズルから射出した樹脂を積み重ねるようにしてモデルを製作する、最新鋭のマシンだ。設計した部品を、コンピューター上だけではなく、現物として確認できることで、直感的に設計が正しいか判断できるという。
 
 グランプリごとに仕様が変わるといわれるF1マシンの設計。その膨大な数の部品一つ一つの開発がここから始まる。
 
2. 鋳造
 エンジンの骨格を成すクランクケースやシリンダーブロックなどは、この鋳造セクションでつくられる。量産車と違い、絶え間なく変化するレーシングエンジンは、木型を使った砂型鋳造※2でつくられている。
 
※2:砂型鋳造とは、木型をオスとし砂で固めたものをメスとして鋳造する方法
 
「砂型ですと、短期で製作できるという面がありまして、テストを行ってダメなところをまた直しましょう、となった時に、短期間で動けるというのが、砂型の一番のメリットであると思います。肉が薄くなるとか複雑形状になるのは、ハードル的に高いのですが、それがここ数年の課題でもあるので、その辺は一つ一つ克服して、これから先ももっと高いハードルが要求されると思うので、がんばっていこうと思います」
 
 F1のエンジンには、アルミを主体として添加剤などを加えた特殊合金を使用する。およそ700度に加熱されたアルミは、木型をもとにつくられた砂型に流し込まれる。冷えたところで、砂を壊すことで鋳造が完成するのだ。クランクケースなど大型のものは、自動注入する機械によって鋳造される。そして完成した鋳造品は、X線によって不具合がないか検査される。
 
3. 加工
 鋳造されたクランクケースなども含め、部品の切削加工を行うのが加工セクションだ。ここでは量産車と同様のカーニングセッターが使用され、金属加工が施されていく。
 
「最近特にそうなんですけれども、開発のスピードがかなり上がってきている中で、同じものをつくっているだけじゃ全然他のチームに勝てない、っていうことで、いいものを早く出す、というのが一番頭に入れている課題でもあります」
 
Q:量産車と違い、毎回つくるものが異なる大変さは?
「そこが一番苦しんでいるところでもあります。ただ、妥協してしまったらそれで終わりなんで、何とかがんばって、早くてっぺんに立てるように、みんなでベクトルを合わせてがんばる、そういう時ですね」
 
 クランクシャフトのプラズマ窒化処理。クランク表面をプラズマにより熱処理することで、高い強度を与えるのだ。そして、最後の仕上げは、やはり人間の手で行われる。昔からの熟練作業員の手により、一本一本丹念に磨かれることで、1ミクロンの精度を出すことができるという。巧の技は、現在のF1マシンにも生きているのだ。
 
 また、インジェクターのノズルは、微細放電加工により、ミクロン単位の穴が開けられる。
 
 こういったF1エンジンの部品の製作は、量産車とさほど変わらないのがお分かりだろうか。量産車との一番の違いは、日々変化していること。仕様の変わる部品を、一分でも早く、高い精度で製作することが求められているのだ。
 
4. 検査
 加工されたパーツは全て、厳重な検査が行われる。
 
「私は、主に耐久投入前の部品の精度検査とか、不具合があった時のその部品の精度、どこが原因なのかとかを確認するために測定を行っています」
 
Q:組み立て前と、使用後の部品の検査を行う?
「当然、耐久後その部品がどういう磨耗形態にあるのかとか、今後の、次の参考になるデータがその中にいっぱい詰まっています。いっぱい計る情報というのはあるんですけれども、問題があったときに、その原因が分かるような結果をなるべく簡単に出すというか、分かりやすく出すのが重要になってきます」
 
 外部で製作されたパーツも、顕微鏡を使って徹底的な精度検証が行われる。このように、ミクロン単位の検査に合格したパーツを使って、エンジンが組み立てられていくのだ。
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