<BACK1234NEXT>
(HRD-B・A・R主任研究員、F1車体開発LPL代行:外村明男)
「F1の人たちは特に、限られた資源(お金)の中でやらざるを得ないから、どちらかと言うと、シミュレーションや台上試験を優先して、それで結果が出ないとなかなか『作る』という方向にはいかないですよね。
 我々自動車屋さんというのはどうなっているかと言うと、わりと科学的に段階を経ていろいろできていくわけです。作りながらやるわけです。そうすると、シミュレーションでは分からなかった、シミュレーションでは絶対表せないようなことが、やっぱり現物を作ってみると分かるということをよく知っているので。
 だから、どちらかと言うと、『おい、早いとこ作ろうぜ、やろうぜ』と言っているのが我々で、向こうにしてみたら、『いや、ちょっと資源も限られているので、もう少しよく考えてからにしよう』というようなところで、意見を戦わせているというところでしょうかね」

 
 当初、量産車の技術はF1に通用しないと考えていたB・A・Rのエンジニア達。しかしHondaには、乗用車開発のための基礎技術、つまり、走る、曲がる、止まる、といったクルマの基本性能に関わる解析技術がある。栃木研究所のメンバーは、様々な解析ツールを駆使し分析することで、F1マシンの世界で言われている常識を覆していったのだ。

 HondaのF1現場監督を務めるHRDの中本は、そんな研究所の技術者達の苦労を見続けてきた。
 
(中本)
「正直言って、栃木研究所の車体メンバーは、出だしの段階では、F1というレーシングカーに対しては素人でした。ただ、ベースのポテンシャルは彼らはすごく高いものを持っているので、1年も一緒にやれば、F1マシンってこんなもんだって感触は掴んでくるし、そこに量産車を開発した経験値や技術的な知識を入れ込んでいきました。
 ある領域を見ると、今までF1マシンの常識だと言われていたようなことを、『常識ではないんだよ』っていうところまで押し上げてくれたのは、栃木研究所の車体のメンバーの大きな功績なんじゃないかなと思いますよ」

 
 量産車開発のための基礎技術は、F1マシンの設計に大きく貢献することが認められたのだった。
 
 2003年のマシン、B・A・R 005は、ウィリスの手によりデザインされシーズンを戦ったが、思った通りの結果に結びつかなかった。
 
(佐藤)
「2003年は、確かにクルマとしてはすごくドライバー・フレンドリーで、どのサーキットにいても、いつでも、運転するのは比較的やさしいクルマだったんですけど、やはりその速さという意味で、一歩抜きん出たものはなかったですよね」

 
 それまでの不安定な走行性能を飛躍的に高めた005だったが、トップに立つパフォーマンスまでは得ることはできなかったのだ。
 
 2004年に向けての開発は、レギュレーションが大きく変更されることもあり、エンジンにも新たな課題が要求された。レースウィーク中のエンジン交換が基本的に認められなくなり、交換した場合ペナルティが課されるようになったのだ。他のエンジンサプライヤーが耐久性を見越したエンジンを開発してくると考えたHondaは、エンジンの軽量化とさらなるパワーの追求が必然と考えたのだ。
 
(橋本)
「F1はもともとリアに付いてますよね、エンジンが。その重量物をいかに、そしてどこに付けるかというのがあって、専門用語でバラストウエイトって言うんだけど、それが30何kgぐらいしかなかった。バラストを前寄りに持っていくともっと性能が上がるんだけど・・・」

 
 レギュレーションで決められている車体の最低重量は、600kg。しかし、現在のF1マシンは、はるかに軽量化が進みそれ以下の重量になっている。そこで、規定の600kgにするために、錘、つまり、バラストウエイトで調整しているのだ。このバラストを効果的に配置することによって、操縦特性に幅を持たせることができる。
 
(橋本)
「バラストを、最初の年に倍にしたんですよ。と言うことは、クルマの持っているポテンシャルがサーキットによって融通が効くようになる。特性を十分出せるようになる。だから最初は徹底的に軽量化したわけです」

 
 操縦性をアップさせるための軽量化。本田技術研究所栃木研究所のモータースポーツ開発部門「MS」では、エンジンのパワーアップと軽量化という相反する性能を求めて開発が行われた。
<BACK 1234 NEXT>
フッタ
ホームへ 検索へ お客様窓口へ ご意見・ご感想へ マップへ ホットニュースへ ホームへ モータースポーツ Honda F1 モータースポーツ モータースポーツ Honda F1 モータースポーツ