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 「10年に1度くらいの周期でその現象は起こる、そして我々は今まさにその現象について語っているのだと思う」

  このコメントは、2000年の初めに行われた、ウィリアムズF1チームのトライアウト(入団テスト)でのジェンソン・バトンの最初のラップを見た時の元F1レーサー、ゲルハルト・ベルガーの感想である。ベルガーがけっして社交辞令やお世辞を言うような人物ではないことはF1界では良く知られているだけに、彼のコメントは重みがある。
 ベルガーが見守っていたのは、ウィリアムズのセカンド・ドライバーズシート獲得のためのシュートアウト(一騎打ち)で、ウィリアムズのF1マシン、FW21のコックピット内で果敢にコースを攻める無名の新人、ジェンソン・バトンであった。ジェンソンはプレッシャーをものともせず、とてつもない速さでセカンドシートを勝ち獲った。弱冠20歳のF1ドライバーの誕生である。
 ジェンソンの才能を認めてシートを与えたウィリアムズ・チームの選択が正しかったことは、彼がF1を始めてわずか2戦目のブラジルGPで入賞したことによって証明される。そのシーズンの終盤では、チームメイトで、ウィリアムズのファースト・ドライバーでもあった、ラルフ・シューマッハよりもコンスタントに速いタイムを記録していた。ジェンソンは期待に応えたのではなく、期待を超える活躍をしたのだった。
 ジェンソン・バトンの操るF1のスピードは素晴らしく、特にベルガーのように、F1で実際に戦ったことのある人々にとっては驚き以外の何ものでもなかた。その20歳の青年はフォーミュラ・フォードとフォーミュラ3の、たった2年のレース経験しかないにもかかわらず、速いだけでなくF1を自在に操っている。
 1996年F1チャンピオン、デイモン・ヒルも彼ジェンソンの才能を認めて、『もしウィリアムズの仕上がりが良ければ今年中に彼はレースに勝てると思う』と2000年シーズン直前に語っていた。他にもヒルと同様な発言をする関係者は多数いた。
 しかし温かい言葉ばかりでもなかった。中にはジェンソンの才能に対するねたみもあって、誹謗中傷する面々もいた。彼らは決まってジェンソンの経験の浅さをなじり、F1レーサーとしての資格にけちをつけた。
 彼らの主張は、「我々はF1に参加するために必要とされる経験を積み、資格を得てきた。それに引き換え経験も資格もないジェンソンがF1にいとも簡単に入れたのはどう考えてみてもおかしい。彼が最初のレースで大きな事故を起さないように切に願うのみだ」というようなものだった。しかし、ジェンソンに対する批判は経験がないことばかりを指摘してはいるものの、彼が遅いとは決して言っていないのだ。速いがゆえにウィリアムズは彼を雇ったのだし、 B・A・R Honda が2003年から雇った理由もジェンソンが速いということに尽きる。
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