ハートレーの持つ、F1への原動力とは

2018.03.23

ハートレーの持つ、F1への原動力とは

今週末に行われている開幕戦オーストラリアGPは、Honda F1の歴史のなかで、新たな1ページの始まりを意味します。Toro Rossoとのパートナーシップが、2018年シーズンの幕開けとともに、本当の意味でスタートすることとなるからです。

Red Bull Toro Rosso Hondaは、メルボルンで初めてレースに挑むことになりますが、それは今週末にチームが迎える数多くの“初体験”の一つでしかありません。ドライバーのピエール・ガスリーとブレンドン・ハートレーは、どちらもルーキーで、F1ドライバーとして初めてのシーズンフル参戦を経験することになります。

ハートレーにとっては、今週末はより忙しい週末となるかもしれません。タスマン海を越えた先にある、ニュージーランドのパーマストンノースという町で生まれた彼にとって、開幕戦が行われるメルボルンは自身の故郷に最も近く、第二のホームグランプリとも言える大会になるからです。

ブレンドン・ハートレー
「シーズンの開幕戦を迎えられることにすごくワクワクしています」

「とにかく、シーズンの開幕戦を迎えられることをすごくワクワクにしています。しかも、メルボルンという、僕の生まれ故郷に最も近い場所でのレースなので、なおさらに楽しみです」

「厳密に言えばホームグランプリではないですよね。オーストラリアはニュージーランドとは違う国ですから(笑)。でも、去年のシーズンオフにニュージーランドに戻ったときには、本当にいろいろな人から『レースを観にいくよ』と言われました」

「ですので、オーストラリア国旗ほどではないにせよ、今週末はスタンドにニュージーランド国旗がはためくのを見られると思います。私の友達や家族もレースを観に来てくれるので、僕にとって、とても特別なレースになりますね」

ハートレーの持つ、F1への原動力とは

彼の父親は開幕戦の舞台となるアルバート・パークを走った経験もあるドライバーですし、ハートレーにはもともと、レーサーの血が流れているようです。彼は自分の父親のことをこんな風に語っています。

「父は、四輪であればほぼすべてのカテゴリーでレースをしていました。ダートトラックや、アデレード市街地サーキットで行われたオーストラリアGP、さらにはメルボルンで初めて開催されたグランプリにも、フォーミュラ・ホールデン・カーを駆って参戦しています。よくマーク・ウェバーと優勝をかけて争っていたらしいです。自分が世界耐久選手権に一緒に参戦していたチームメートが父のかつてのライバルだなんて、おもしろいですよね(笑)」

「僕の一番古い記憶は、父がレースしているのをスタンドから見ていた場面です。4歳上の兄は、僕より早くゴーカートに乗り始めたので、それもよくスタンドから眺めていました。6歳になってからは自分でもレースをするようになり、それ以来、レースが僕のすべてになりました」

「6歳から8歳の間、僕はよく周りに、いつかF1ドライバーになると豪語していたらしいです。今になって振り返ると、ニュージーランドのごく普通の家庭に生まれた子供が、よくそんな大それた夢物語を言っていたなと思いますが、どうにかここまでたどり着くことができました」

ハートレーの持つ、F1への原動力とは

「いくつものチャンスをつかんで、ようやくここまで来られたんだと思います。15歳のときにRed Bullに選ばれて、友達や学校、家族を残してヨーロッパへ旅立ちました。紆余曲折ありましたが、ル・マン24時間レースで勝利をつかんだり、いくつかの世界選手権で優勝を果たしたりして、28歳でようやくF1ドライバーへの切符を手にすることができたんです」

「数年前だったら、こうしてF1のパドックへまた戻れる日が来るとは、とても想像できなかったかもしれません。でも、いつのときもその瞬間を思い描いていたんです」

ハートレーがF1ドライバーになるまでの道のりは、かなり異例と言えるかもしれません。8年前にはRed BullからF1へ挑戦するチャンスを与えられながら、シーズン途中でプログラムから外れ、F1のシートを獲得するという夢は叶いませんでした。しかし、若きニュージ―ランド人ドライバーは、その野望を諦めはしませんでした。

「2009年に、僕はF1のリザーブドライバーだったのですが、チームメートのハイメ・アルグエルスアリが代わりにF1のシートを獲得したことがありました。あれが一番のショックな出来事でしたね。あれだけF1ドライバーの夢に近いポジションにいたにもかかわらず、結果的にそれを逃してしまったわけですから」

「その頃、僕はあまりいいレースをできていませんでした。精神的にも未熟で、夢を逃してしまったんです。チャンスを逃して初めて、自分が夢の実現にあと少しのところまで近づいていたことに気づきました」

「それからはさまざまな面で努力を続け、結果的にドライバーとして大きく成長を果たすことができました。今振り返ると、多くのカテゴリーで経験を積めたこと、そしていくつかの試練を味わえて、本当によかったなと思います」

ハートレーとHondaは、レースに関して、同じスピリットを持っていると言えるでしょう。Hondaが長年のブランクを経てF1に復帰した際も、幾多の苦難を経験しましたが、それでもいつの日か勝利を得るためのチャレンジングスピリットが消えることはありません。Hondaが続けてきたダイナモテストやファクトリーでの開発は、ハートレーが成し遂げたル・マン24時間レースでの勝利や、世界耐久選手権でのタイトル獲得のように輝かしいものではないかもしれません。ただ、どちらもF1から離れたところで積み重ねられた努力による結晶であることに変わりはありません。

HondaとToro Rossoとが新たなパートナーシップを結ぶにあたり、Honda F1の拠点であるHRDさくらとミルトンキーンズも、新しいスタートを迎えることになります。新シーズンの開幕を控え、ハートレーは、過去の経験から学び、未来の成長に繋げることが大切だと語ります。

ハートレーの持つ、F1への原動力とは

「成功のためには、失敗が必要なこともあります。僕がF1のシートを逃したときに言われたことですが、これはドライバーだけでなく、チーム、企業にとっても同じだと思います。誰にでも失敗はあります。でも、そこから学び、前を向いて進んでいくことが大事なんだと思います。僕も、失敗を通して自分自身について学び、それによって、より強くなることができました」

再びF1のトップ集団に加わることを目指して、これまで3年間にわたって奮闘を続けてきたHondaは、Toro Rossoと新たにパートナーシップを組み、ウインターテストで好調な滑り出しをみせています。それは、ハートレーが失敗を経て、多様なレースカテゴリーを経験してついにF1という夢を掴んだ道のりと似ているかもしれません。ハートレーは、この新しいパートナーシップに明るい未来が待っていることを強く信じている、と話します。

「HondaにはF1での輝かしい歴史があります。いま、僕はその歴史についてより深く知ろうとしているところです。HondaはF1の歴史に残るような勝利をいくつも挙げていますから。当時の自分はまだ幼く、よく分かっていなかったですが(笑)」

ハートレーの持つ、F1への原動力とは

「ここまで、Red Bull Toro Rosso Hondaは非常に順調なスタートを切ることができています。一カ月半前にトロロッソのファクトリーを訪れた際に感じたことですが、チームの皆が、このパートナーシップについて確かな自信を持っています。Toro Rossoにとって、エンジンのマニファクチャラーから単独供給を受けること、また、Hondaが持つ豊富なリソースへのアクセスを得ることは、本当にすばらしい機会です」

「HondaとToro Rossoのパートナーシップは、互いにとって非常にポジティブなものです。密に連携を取って動けていますし、お互いを思いやって、譲歩すべきところは譲歩しています。双方が驚くべき情熱と決意を持ち、日々の仕事に取り組んでいるんです」

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