ROUND11
ハンガリー
ハンガロリンク
2017.07.27(木)
Hondaは、FIA※フォーミュラ・ワン世界選手権(以下、F1)の第11戦ハンガリーGP(開催地:ブダペスト、7月28日~30日)に向けて準備を進めています。今大会のサーキット情報や、今週末のレースの見どころなどをレポートします。
※ FIAとは、Fédération Internationale de l'Automobile(国際自動車連盟)の略称
長谷川 祐介 (株)本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
「善戦するもポイントにつながらず厳しいシーズンが続いていますが、ここ数戦ではパフォーマンスが向上している手応えはあり、期待を持ってサマーブレイク前の戦いとなるハンガリーに向かいます。
ハンガロリンクは、ワインディングとアップダウンが多いクラシックなトラックレイアウトです。パワーサーキットではありませんが、正確なパワーマネジメントが求められますし、オーバーテイクが難しいため、予選でのポジションが非常に重要になります。
我々のマシンとの相性がいいサーキットだと考えており、ある程度の速さを見せられると思っていますし、2台のマシンともに確実にQ3に進出し、ポイント獲得を狙います。ここはフェルナンドがF1での初勝利を飾り、ストフェルが2014年のGP2で優勝しているコースであり、ドライバーにとって得意なサーキットでもあるので、好結果を期待しています。
前半戦最後の戦いになりますが、ここでいい結果を残せればベルギー以降の後半戦に向けていい流れを作れると思います。みなさんにいいレースを見せられることを楽しみにしています」
フェルナンド・アロンソ
#FA14 MCL32-05
「シミュレーション上では、今回のハンガロリンクが、我々にとって今年一番のチャンスがあるサーキットのはずです。距離が短く、コーナーの多いツイスティなコースなので、そこまでパワーが必要ではなく、シャシー性能で勝負できるからです。
ブダペストでのレースは、毎年楽しみにしています。美しい川を眺められる街の中心部に宿泊し、まるで自分が街の一部になったかのような気分で過ごせます。気温が高いので、チームにもドライバーにも厳しい週末になると思いますが、サマーブレイク前最後のレースでいい結果が出せれば、全員にとって休み前の大きな後押しになるでしょう。
なによりも重要なのは信頼性です。ハンガリーで我々のマシンがいいパフォーマンスを見せられたとしても、そのチャンスを最大限に活かすためにもトラブルなしで過ごすことが必要です。このレースに向けて、シルバーストーンではグリッドペナルティーを受けるという大きな決断をしたので、それが報われるようにできるだけ上位でポイントを獲得したいと思います」
ストフェル・バンドーン
#SV2 MCL32-04
「ハンガロリンクが大好きです。スピードは低いかもしれませんが、テクニカルなレイアウトで一周を通じて100%の集中が要求されるコースです。速いコーナリングがたくさんあり、ツイスティなコースでラップタイムを向上させるには、ラインをきっちりトレースしなければなりません。
このレイアウトに高い気温が加わり、マシンにとっては厳しい環境となります。連続するコーナーを鋭く切り返し、うまく抜けていくためにも、強く安定したシャシーが必要です。ストレートは短いので、コーナリングのためにできるだけ多くのダウンフォースをつけたセットアップとなります。
GP2時代にハンガリーで優勝したこともあり、このコースでのドライビングを楽しめています。ここまで不運なレースが続いていますが、レースを重ねるごとに成長し、安定したパフォーマンスを発揮できていると思います。これまでエンジニアと懸命に取り組み、自信もついてきました。前半戦は毎週のように進化を見せてきました。私たちは辛抱強くがんばっていかなければなりません。私たちの努力が報われることを願っています」
エリック・ブーリエ McLaren-Honda Racing Director
「サマーブレイク前最後の戦いとなるハンガリーへ向かっています。難しいチャレンジを強いられていますが、開幕前からこれまで休みなく取り組んでくれたMcLaren-Hondaの仲間全員へ、心から“ありがとう”を伝えたいと思います。もうすぐ家族と過ごせる夏休みがやってきますが、その前にブダペストではいい結果を持ち帰らなければなりません。
パワーサーキットでは困難な戦いになると思っていましたが、シルバーストーンでのペースは想定を上回っていました。ハンガリーは全く異なる特性で、我々の強みを発揮してライバルたちといい戦いができる見込みです。
グリッドペナルティーを避けるためにも、Hondaとともに信頼性の向上に取り組んでいます。特に、我々のマシンが力を発揮できるこのコースではポイントを大量に獲得できる可能性がありますし、そうするために全員モチベーションを高く持っています。ピレリとのタイヤテストもうまくいったので、この勢いをブダペストでの好結果につなげるとともに、後半戦に向けてさらなる開発を進めるためにも、レース後のインシーズンテストで走行距離を稼げればと思っています」
名称 | ハンガロリンク |
初開催 | 1986年 |
優勝者 | 2016 ルイス・ハミルトン |
2015 セバスチャン・ベッテル | |
2014 ダニエル・リカルド |
1986年にカレンダーに登場したハンガリーGP。開催地であるハンガロリンクは、昨年、グランプリ30戦を開催した10番目のサーキットとなりました。同地は、初GP前にわずか9カ月で完成し、F1の開催される常設コースとしては最も低速ながら、ドライバーからの評判は上々です。
サーキットは14のコーナーで構成され、600m以上のストレートは1本のみと、ドライバーを苦しめるコースです。また、真夏のレースとなるため、気温は35℃を超え、マシンと人の双方に限界を強います。
真夏にシーズン中盤戦として行われるのが恒例となっていますが、1992年のナイジェル・マンセルと2001年のミハエル・シューマッハは、チャンピオンシップを独走し、このハンガリーGPでタイトルを確定させています。
McLarenは、ハンガリーGPで11勝と過去30戦のうち3分の1以上を勝利で飾っています。なかでも、1988年にタイトル争いの真っただ中でのレースは印象的で、アイルトン・セナとアラン・プロストが熾烈な争いを繰り広げました。ポールポジションを獲得したセナに対して、プロストは予選7位。スタートからリードを広げにかかるセナでしたが、プロストが猛烈な追い上げで2番手まで浮上。最後は0.5秒差まで迫り、McLarenが1-2フィニッシュを果たしました。
ちなみに、2009年の予選では、コントロールライン上のタイミングセンサーが故障し、Q3終了時に順位が不明となるハプニングがありました。その後、バックアップ用のセンサーでデータが復旧し、数分後にフェルナンド・アロンソがポールポジションを獲得したことが明らかになりました。
全長 | 4.381㎞※カレンダー中15番目の長さ。 |
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2016ポールポジション | ニコ・ロズベルグ 1分19秒968 |
2016ファステストラップ | キミ・ライコネン 1分23秒068(52周目) |
ラップレコード | 1分19秒071 (ミハエル・シューマッハ、2004年) |
エンジニアリング | 高速走行時の安定性が重要となる。特にセクター2には高速コーナーがあり、かなりのロングコーナーも存在するため、タイムアップにはマシンの応答性と、コーナー進入から脱出までバランスよく走れることが必要。 |
ドライビング | ターン4の出口でどれだけ縁石に乗るかがカギ。全開で抜ける左コーナーだが、次に控える右コーナーに向けて左に寄っておきたい箇所。ターン4脱出時に縁石に乗りすぎると、その後激しくマシンを振って左寄せをせざるを得なくなる。また、昨年に再舗装が行われ路面はスムーズになったが、ターン5の中ほどにバンプが残っており、サスペンションが硬いとマシンが跳ね上がって大きなタイムロスにつながる。 |
マシンセットアップ | ダウンフォースを最大にする。908mのメインストレート以外は、コーナーばかりのいわゆる“ツイスティ”なサーキット。14のコーナーのうち、5つが180度コーナーで、エイペックス(コーナー頂点)で時速200㎞を超えるのは2カ所しかないため、ダウンフォースが重要。 |
グリップレベル | 中程度。昨年の再舗装でグリップが向上し、ウイークが進むにつれて路面が改善する度合いも比較的高い。年間通じてあまり多く使われているサーキットではないので、走行時間が増えて路面がキレイになり、ラバーが乗るとタイムが大きく向上する。 |
タイヤ | スーパーソフト(赤)、ソフト(黄)、ミディアム(白) ※この組み合わせは今季5回目 |
ターン1までの距離 | 610m(カレンダー中最長はバルセロナの730m) |
最長ストレート | 908m ※ターン1へ向かう直線 |
トップスピード | 時速305㎞(ターン1への進入時) |
スロットル全開率 | 55% ※カレンダー中最大はモンツァの75% |
ブレーキ負荷 | 低い。大きなブレーキングポイントはターン1のみで、一周のうち14パーセントしかブレーキを使わない。 |
燃費 | 1周あたり1.5㎏を消費。燃費に優しい |
ERSの影響 | 中程度。運動エネルギー回生を行えるブレーキングポイントが少ないため |
ギアチェンジ | 48回/1ラップ、3360回/レース |
周回数 | 70ラップ |
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スタート時間 | 現地時間14時(日本時間21時) |
グリッド | ポールポジションはコース左側で、グリップの高いレーシングライン上。ラインを外すとほこりや土があり、ターン1までの距離も長いのでアドバンテージは大きい。 |
DRS | ゾーンは2つ。ターン1へ向かうピット前のストレートと、その後のターン2へ向かうストレート。 |
ピットストップ | 昨年トップ10でフィニッシュしたドライバーは全員2ストップ作戦を採用。予選14番手のキミ・ライコネンはスタートでソフト、その後2スティントをスーパーソフトで走り、6位フィニッシュ。他のドライバーはその反対でスタートをスーパーソフト、2スティントをソフトで走った。今季はタイヤの持久力が伸びているため、30周前後でタイヤ交換を行い、1ストップにトライするチームがあるかもしれない。 |
ピットレーン | 360m。1回のストップでのタイムロスは約19秒。 |
セーフティカー | 出動率は10%。低速サーキットであり、アクシデントが起きても大きなデブリが飛ぶことは少ない |
注目ポイント | 一周の流れを左右するターン4。6速を使って時速225㎞で抜けていくブラインドコーナーで、進入は上り坂となっている。フロントのセッティングが決まり、ドライバーの意志が強ければスロットルを踏み込んでいけるポイント。 |
見どころ | 真夏の開催となるため、ドライバー、マシン双方に高い気温が負荷をかける。ロングストレートが1本しかなく、全開で走行できる時間が短いため、高温多湿のマレーシアよりも冷却が難しい。 |