ROUND05
スペイン
カタルニア・サーキット
2017.05.11(木)
Hondaは、FIA※フォーミュラ・ワン世界選手権(以下、F1)の第5戦スペインGP(開催地:カタルニア、5月12日~14日)に向けて準備を進めています。今大会のサーキット情報や、今週末のレースの見どころなどをレポートします。
※ FIAとは、Fédération Internationale de l'Automobile(国際自動車連盟)の略称
長谷川 祐介 (株)本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
「シーズン序盤に欧州以外で開催するフライアウェイレース4戦を終え、今度はヨーロッパラウンドを戦うためにスペインに向かいます。
ここ数戦はいくつかの信頼性の問題を抱え、難しいレースが続いていますが、この状況を打開するために、現在チームは信頼性とパフォーマンスの向上を目指して懸命に開発を続けています。
カタルニア・サーキットは、さまざまなタイプのコーナーが入り混じったテクニカルなサーキットです。パワーサーキットとして知られていたここまで数戦のサーキットとは異なる特徴を持っており、パワーユニットに対しては負担が少ないと考えています。最も大事になるのはマシン全体のバランスだと思うので、プラクティスの時間を最大限に利用し、McLarenと協力してセッティングを進め、ベストなバランスを見つけられればと思います。
この後に続くヨーロッパラウンドでいい流れを作るためにも、まずはここスペインでいいレースをする必要があります。また、フェルナンドにとってはホームレースになりますし、彼が母国の観衆の前でいいパフォーマンスを見せられるよう、レース前の準備にベストを尽くします」
フェルナンド・アロンソ
#FA14 MCL32-03
「スペインGPのためにバルセロナに戻ってくることに、とてもワクワクしています。スペインGPは私のホームレースで、今までに素晴らしい思い出があり、サーキットの雰囲気はいつも熱狂的です。私たちはプレシーズンテストの際に多くの時間をバルセロナで過ごしましたが、地元ファンの前でレースをするときには全く違う気持ちで、特別な感情を抱きます。
前戦までの難しいレースのあとで、今週末どこまでできるかは分かりません。私たちは新しいパーツをいくつか導入するとは思いますが、信頼性の問題が解決するまでは、本当の意味でパフォーマンスに注力することはできません。
最近起こっている問題の原因を突き止めるために、チームが懸命に取り組んでいることは分かっています。スムーズなレースができて、問題の少ない週末を過ごせることを期待しています。私にとって、ここ数戦の予選はエキサイティングなものでした。バルセロナでも同じような走りができることを期待しています。しかし、土曜日の予選でどんなグリッドを獲得したとしても、決勝でそれを活かせるようにすることが最も大事だと思っています」
ストフェル・バンドーン
#SV2 MCL32-01
「ロシアGPでのパフォーマンスはあまり誇ることができるものではありませんでしたが、それでも私たちは前戦からポジティブな感触を得ています。タフなレースが続いたあとでレースを完走できたことには満足しています。走行距離を伸ばし、出来る限り多くの情報を集めることが重要です。それが、私たちが今シーズンを戦い抜くために、シャシーとパワーユニットを改良するために大事になってきます。
スペインGPから始まるヨーロッパラウンドを楽しみにしています。今までに参加したレースやプレシーズンテストで、バルセロナのサーキットのことはよく知っています。私たちは、このトラックと、そこでマシンがどのような動きを見せるかについての、参考にできるデータをたくさん持っているので、それを活かしてポジティブでスムーズな週末を迎えられることを期待しています。
カタルニア・サーキットは楽しく走ることができ、とても速く、マシンにとってもドライバーにとっても非常に厳しいトラックです。オーバーテイクするのはとても難しいですし、高速トラックなので平均速度は非常に速く、私たちの能力を試されるものになるでしょう。伝統的にタイヤにとってタフなサーキットですが、新しいコンパウンドがレース展開をどのように変えるのか、興味深く見ています。私はいつも通り、挑戦する準備はできていますし、再びレースすることに興奮しています」
エリック・ブーリエ McLaren-Honda Racing Director
「今シーズン序盤のフライアウェイラウンドは、McLaren-Hondaにとって簡単なものではありませんでした。スペインGPでバルセロナ・カタルニア・サーキットに戻ってきて、ヨーロッパラウンドをスタートすることを楽しみにしています。
私たちは、このレースで現状大きく好転するとは思っていません。しかし、ストフェルがソチで完走できたことは、信頼性の問題が指摘される中で自分たちが努力を重ねてきた結果だと考えています。そして、チームにさらにポジティブなことをもたらすサインだと期待しています。
他の多くのチームと同じように、このレースを新しいパーツを導入する上でいい機会だと考えています。スペインのファンによる熱狂的な応援を背に、レースを完走して、信頼性が改善したことを見せられるように期待しています。ヨーロッパラウンドをポジティブな形でスタートできればいいですし、情熱的なファンがサポートしてくれるスペインGPは、それにうってつけの場所です」
名称 | カタルニア・サーキット |
初開催 | 1951年 |
優勝者 | 2016 マックス・フェルスタッペン |
2015 ニコ・ロズベルグ | |
2014 ルイス・ハミルトン |
スペインGPは、F1世界選手権がスタートした翌年に初開催された、伝統あるグランプリで、1993年からはヨーロッパラウンドの初戦として定着しました。開催地のバルセロナ・カタルニア・サーキットは、中低速と高速コーナーがバランスよく配置され、テストの舞台としても好条件がそろっていることで知られています。16のコーナーのうち、時速100km以下で通過するのは3つしかなく、平均速度は時速約200㎞にものぼります。
カタルニア・サーキットは、四輪・二輪のレースが数多く開催されていますが、同サーキットは1992年のバルセロナオリンピックで自転車競技のタイムトライアル会場の跡地に建設されたこともあり、陸上や自転車競技の会場としても使われています。
これまでスペインでF1が開催されたのは、バルセロナを含めて6会場。過去にはぺドラルべス、モンジュイック・パーク、ハラマ、ヘレス、バレンシアで開催されました。その長い歴史の中で着々と人気を増していましたが、2001年に同国出身のフェルナンド・アロンソがF1にデビューしたことで、さらなる盛り上がりをみせるようになりました。例年、McLaren-Hondaのピット前スタンドには、アロンソを応援する横断幕や出身のアストゥリアス州旗が掲げられ、多くの熱狂的なファンが押し寄せます。
1986年にヘレスで開催された同GPでは、アイルトン・セナがナイジェル・マンセルをわずか0.014秒差で下しました。これは、F1史上最小の着差で、終盤にピットストップを行ったマンセルは、一時20秒差をつけられたものの、猛然と追い上げてセナに詰め寄りました。
McLarenは、これまでスペインGPで8勝を挙げていますが、カタルニアでの初勝利は1998年でした。ミカ・ハッキネンとデビッド・クルサードのコンビが予選から圧倒的な走りをみせ、フロントローを独占。決勝でも1-2フィニッシュを果たし、ウイナーのハッキネンは3位のミハエル・シューマッハに47秒という大差をつけました。
ちなみに、2005年以前は、バルセロナで勝利を挙げたのはチャンピオン経験者しかいませんでした。その記録はキミ・ライコネンによって破られますが、同選手も2007年にタイトルを獲得しています。
また、母国GPを勝利で飾ったスペイン人ドライバーはフェルナンド・アロンソただ一人で、2006年と13年の2回優勝を果たしています。
全長 | 4.655㎞ ※カレンダー中14番目の長さ。最長はスパ・フランコルシャン、最短はモナコ |
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2016ポールポジション | ルイス・ハミルトン 1分22秒000 |
2016ファステストラップ | ダニール・クビアト 1分26秒948(53周目) |
ラップレコード | 1分21秒670(キミ・ライコネン、2008年) |
エンジニアリング | 一周の中に高速部分と低速部分が混在するので、バランスが重要。セクター1と2は右コーナーのターン3と9など比較的スピードが速いが、セクター3は一転して低速セクションとなり、一周を通じてタイヤを持たせるのが難しい。 |
ドライビング | ポイントは2つ。ターン1でアンダーステアが出ないように内側を通ることと、ターン5のブレーキングでロックせずに左フロントをしっかりと切れ込ませること。カタルニア・サーキットは、タイヤに厳しいので、しっかりと持たせる走りが求められる。ラップ前半は高速コーナーが多く左フロントタイヤに負荷がかかるが、セクター3の低速コーナーまでにタイヤのライフを残しておけるかがタイムアップのカギを握る。 |
マシンセットアップ | ダウンフォースを最大化することが重要。高速コーナーや長いストレートが多いが、ラップタイムはダウンフォースの有効性に左右される。高速コーナーを素早く通過し、ラップ終盤の低速セクションをスムーズにクリアできるようにすることがポイント。 |
グリップレベル | 高い。アスファルトは古く、タイヤへの負担が大きいため、ピレリは最も硬いコンパウンド3種を指定している。 |
タイヤ | ソフト(黄)、ミディアム(白)、ハード(オレンジ) ※この組み合わせは今季初めて |
ターン1までの距離 | 730m(カレンダー中最長) |
最長ストレート | 1047m ※カレンダー中最長は中国の1170m |
トップスピード | 時速335㎞(ターン1への進入時) ※カレンダー中最速はモンツァの時速350㎞ |
スロットル全開率 | 65% ※カレンダー中最大はモンツァの75% |
ブレーキパッド | ミディアム。ブレーキングポイントは8カ所だが、ハードブレーキングが必要なのはターン1と10の2カ所のみ。 |
燃費 | 1周あたり1.7㎏を消費。カレンダー中では平均に近い。 |
ERSの影響 | 中程度 |
ギアチェンジ | 44回/1ラップ、2904回/レース |
周回数 | 66ラップ |
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スタート時間 | 現地時間14時(日本時間21時) |
グリッド | ポールポジションがコース左側のレーシングライン上にある。この左側の奇数グリッドのほうがグリップは高いが、ターン1までは730mあるため、スタート後の直線区間でポジションが変わることも多い。 |
DRS | ゾーンは2つ。ターン1とターン10の手前にそれぞれ設けられている。 |
ピットストップ | 昨年は12周目と34周目の2ストップが主流だったが、セバスチャン・ベッテルが3ストップを選択して3位に入賞。今季はタイヤのライフが長くなるように改良されているため、戦略に影響を与えるかに注目が集まる。もし1ストップで走りきる場合には、25周目以降のピットストップが予想される。 |
ピットレーン | 330m。1回のストップでのタイムロスは約21秒と比較的短い。 |
セーフティカー | 出動率は37%と低め。もしセーフティカーが導入されるとしたら、激しいポジション争いが繰り広げられる1周目の可能性が高い。昨年はメルセデスの2台がチームメート同士でクラッシュし、セーフティカーランとなった。 |
注目ポイント | ターン9。時速210kmで駆け抜ける右コーナーで、ターン10へのロングストレートに向けてなるべくスピードを落としたくない箇所。シーズン前のテストでもここでスピンを喫するドライバーが多くいた。 |
見どころ | ターン3と9の出口はブラインドになっており、ドライビングの難所。また、戦略が予測できず、最速のタイヤはソフトだが、ルール上ミディアムかハードを装着しなければならないため、各チーム・ドライバーがどちらを選択するかも目が離せない。 |