2017年11月27日(月)

Honda Racing Insights - McLarenからToro Rossoへ

新たな旅の始まり

2017年シーズンの最終戦であるアブダビGPは、HondaがF1に取り組んできた長い年月の中でも非常に重要な瞬間となりました。McLarenとともに挑んだ3年間のチャレンジに終止符を打ち、2018年からのToro Rossoとの新たなスタートを意味するものだからです。

過去50年の中で、Hondaのエンジンを積んだマシンは72回の勝利を飾っています。1965年のメキシコGPで初勝利を挙げたあとは、圧倒的な強さを誇るエンジンサプライヤーとして2期にわたり君臨。1980年代の半ばには、Williams-Hondaとして3年間で23回の勝利を果たしました。また、1988年から1992年の5年間に、McLaren-Hondaとして80戦で44回の勝利を挙げました。

Honda Racing Insights

2015年、HondaはMcLarenと再びタッグを組んでF1に復帰。しかし、このパートナーシップは、過去に成し遂げた輝かしい黄金時代の再来とすることができませんでした。Honda F1プロジェクトの総責任者である長谷川祐介は、この3年間を振り返って、最終戦のファイナルラップに至るまでチームが続けてきた努力を誇らしく思っていると語りました。

長谷川祐介「確かに厳しい3年でした」と長谷川は言います。「Hondaはほかのマニュファクチャラーに比べて、開発を始めるのがかなり遅かったので、大きなディスアドバンテージを抱えてのスタートとなりました。開発面から見れば、我々は非常にいい仕事をしたと言えますが、競争力という点で見れば、我々が遅れをとっていることは明らかでした」
「それでも、我々が成し遂げたことを誇りに思います。我々は前進し続け、決してあきらめずに、開発を続けてきました。この3年間、常にできる限りのスピードで走り続けてきました。しかし、F1はレースでありスポーツです。傍から見れば、我々が結果を残せなかったことは事実ですし、そのことは非常に残念です」

「その事実は受け入れなくてはいけません。ただ、厳しい状況ではありましたが、McLarenには本当に感謝しています。特にサーキットのメンバーたちは、マシンとPU(パワーユニット)から最大限のパフォーマンスを引き出そうと努力し続けてくれました。彼らもまた、絶対にあきらめませんでした。エンジンに問題があったときも、メカニックたちは問題を解決し、マシンをサーキットに戻そうと懸命に作業を続けました。彼らはプロフェッショナルで、常にすばらしい姿勢で仕事に臨んでいました」

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未来に向けてより大きな進化の余地を残すため、2017年シーズンの始めに新しいパワーユニットを導入しました。シーズン前半はトラブルに苦しめられたものの、最終戦までの7戦では、5レースで入賞を果たしました。

「これは我々にとって必要なチャレンジでした。昨シーズンは、いくつかのレースでまずまずのパフォーマンスを発揮しましたが、表彰台を争える競争力がないことは明らかでした。だからエンジンのコンセプトを変える必要があったのです」と長谷川は言います。「正しい方向に向かっていることは確信していましたが、2017年シーズンが始まる前にパッケージを完成させることができなかったのです」

「それはつまり、残された多くの課題をシーズン中に解決しなければならないことを意味しました。もしも我々がパッケージに修正を加えなければ、長期的に見て、さらなる進化を果たす可能性がないことは明らかでした。この判断について、私は後悔していません」

「もちろんシーズン中、McLarenからはさまざまな要望が出されました。これも非常によかったと思います。チームとさまざまな開発を繰り返していく中で、技術的にも人間としても、我々は大きく成長できたからです。そこにも疑いの余地はありません」

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ドライバーにピエール・ガスリーとブレンドン・ハートレイを迎えて、2018年よりスタートするToro Rossoとのパートナーシップの中でも、その成長は継続され、実を結ぶことになるでしょう。長谷川は、Hondaにとってこの新しいスタートが必要だったと言います。

長谷川祐介 「新しいチャレンジと、新しいパートナーシップはいつもエキサイティングなものです。F1に復帰して以来、Hondaがパートナーを変更するのはこれが初めてです。変化することにより、このF1の世界でなにがスタンダードなのかを理解することもできると思います」
「我々は、まだMcLaren-Hondaとしてのやり方しか知りません。ですからこれは、全く違うやり方について学ぶ、いい機会となるはずです」
「我々には変化が必要だと思います。技術的な側面から言っても、新しい冷却作用や、異なるマシンのデザインと抵抗力が与えるトップスピードへの影響など、異なることを知るのはチームにとっていいことです。スタンダードがなんなのかを知るのは、非常に重要です」

「Toro Rossoはすばらしいチームで、我々に対して非常にオープンです。限られたサイズとリソースのチームですが、高い競争力を持っています。私以外のメンバーがどう見ているかは分かりませんが、これまで何回かミーティングを行ってきた経験で言えば、彼らは技術面でも非常にプロフェッショナルです」

新しいパートナーシップの発表以来、HondaとToro Rossoとの間では初期作業が進められています。冬の間は、2月に行われるプレシーズンテストまでに新しいマシンを準備するという課題に取り組むことになります。

「マシンへのエンジンのインストールが、現在の最も重要な仕事です。エンジンをシャシーに合わせるため、多くの変更を施さなければなりません。この限られた期間で行うには大きな仕事ですが、HondaとToro Rossoはどちらもすばらしい仕事をしています」

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長谷川祐介 「現在は、我々の方から多くの要求を出しているところです。しかし、リーダーシップに関して言えば、McLarenと組んでいたときよりも、より対等な関係が結べていると言えるでしょう。それはチームのサイズ感だけの話ではありません。Hondaは企業としては巨大ですが、ここ数年のF1に関しては限られた経験値しかありません。その点に関してはMcLarenが我々をリードしていましたが、Toro Rossoとはまた違う関係性になるでしょう」
「我々はチームの切り替え作業を迅速に進めています。2月までにマシンの準備を整えなくてはならないので、非常に忙しい冬になります。パワーユニットの開発も進めています。コンセプトは今年と変わらないので、今シーズン使用したものをベースに開発することができます」

McLarenとのパートナーシップからは、現実的な目標を設定するのには時間がかかることが分かりました。Toro Rosso-Hondaでは、ドライバーもチームもキャリアが浅いのであまり楽観的な予測を立てることはしません。

目標が立てられるのはまだ先のこととなりそうです。チームに関わるすべてのメンバーはHondaを再びグリッドの最前線に戻すことを目標としているので、しばらくはチームにとって忙しい時間が続くでしょう。

「我々が最も検討するべきなのは、どこに目標を置くかです。Toro Rossoの代表であるフランツ・トストは、チャンピオンシップ争いはドライバーの肩にかかっていると繰り返し言っています。我々は、ピエールとブレンドンに必要なパフォーマンスを提供することに集中します。もちろん彼らは優秀なドライバーですが、F1の世界ではまだルーキーで、コンストラクターズチャンピオンシップの面から見ても、具体的な目標を設定するにはまだ早いと考えています」

「Toro Rossoとのパートナーシップは、これまでよりも周囲かからのプレッシャーが少ないはずだと皆さんに言われますが、それは違います。我々の仕事はただ一つ、とてもシンプルで、最高のエンジンを開発することに集中していますし、周囲からの影響によりそのスピードが変化するとは考えていません」

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