2017年9月2日(土)

Honda Racing Insights-ストフェルのホームグランプリ

2017年、F1フル参戦デビューを果たしたストフェル・バンドーン。ベルギーでホームグランプリを迎えたルーキーが、忙しい日々を語ってくれました。

ヨーロッパラウンドは終わりを迎えましたが、初めてのホーム、ベルギーGPでは、F1キャリアで一番と言えるほどの多忙な週末を過ごしました。そこでは驚くような経験もあり、普段のレースウイークとは違う場面に多く出くわしました。

通常なら、どんなグランプリであっても、準備することは大きく変わりません。ファクトリーに行ってシミュレーターに乗り、エンジニアと話して改善を進めます。ただ、ベルギーでは水曜日から多忙なスケジュールをこなすことになりました……。

月曜日、ウォーキングのMTC(McLaren Technology Centre)に行き、トレーナーのエリオットによるフィットネストレーニングで、一日が始まります。サマーブレイク明けだったので、僕のレースエンジニアであるトム・スタラードもランニングに加わり、そこで週末に向けて少し打ち合わせをすることができました。

Honda Racing Insights

火曜日には、スパに向けた準備を始め、エンジニアリングについて打ち合わせをしました。この日は一日中ファクトリーにいて、多くの時間をシミュレーターで過ごし、ファクトリーに常駐するエンジニアとも相談しました。ハンガリーGPとその後のインシーズンテストで得たデータをシミュレーターと連携させるために、たくさんの項目を再度分析。そこから、ベルギーとモンツァに向けたマシンのベースセットアップを作るのに、シミュレーターのデータをどのくらい活用できるかを判断することができるんです。

そして、水曜日。ここから怒涛の毎日がスタートしました。まずは、ベルギーの首都ブリュッセルでたくさんのイベントに参加。午前中はHondaベルギーに顔を出し、その後、ジョニーウォーカー、ロジテック、ヒルトンといったスポンサーのイベントに出席しました。

さらに、この水曜は2018年の契約が決まった日でもありました。夏休み明けに新たな契約を結べたのはよかったですし、その発表がホームグランプリ直前というのもうれしかったです。チームは僕を100%信頼してくれていて、McLarenもHondaもサポートしてくれているということを改めて感じました。

ストフェル・バンドーン

この発表は、今シーズンで取り組んできたことに対して自信を与えてくれるものでした。だから、その自信を胸にレースウイークに入れるのもありがたかったですね。ホームグランプリでは、ファンの応援もひときわ大きくなりますし、家族や友人もいつもよりたくさん来てくれます。そんな中でこの発表ができたのは、とてもよかったです。

レースウイーク中はサーキット近くの一軒家に滞在しました。ここにトレーナーのエリオットも一緒に泊まり、レースに向けて集中力を高めたり、逆に緊張をほぐしたりといった手助けをしてくれました。その手法はさまざまで、トレーニングによるものもあれば、2人でくだらない話をしながら過ごす時間もありました。

木曜日からはサーキット入り。ホームレースだけあって、メディアの関心も多く向けられているのを感じました。でも、それは僕にとってはポジティブなプレッシャーなんです。こうした舞台で多くの注目を集めるのはいいことだと思っています。これまでのスパでのレースでは、応援してくれる人たちによって特別な力が発揮できると感じていましたが、今回もそうでした。

Honda Racing Insights

僕らのマシンパッケージとの相性を考えると厳しい戦いになるとは思っていましたが、Hondaは両マシンにアップグレードしたパワーユニットを持ち込んでくれました。ただ、それによって僕の場合はグリッドペナルティーを受けることになってしまったので、いつもより厳しい戦いを強いられることに。そのため、走行プランを予選ではなくレースでのペースを向上させるプログラムに変更しました。Hondaのパワーユニットエンジニアで僕の担当である小林大介さん(僕らは“コバ”と呼んでいます)は、ミーティングの際にこの週末のPUの使い方に関するマニュアルを説明してくれました。

アップグレードによって、僕のホームグランプリはほろ苦いものとなってしまいました。でも、僕らは開発を推し進め、競争力を高めるためにも新たな要素を持ち込まなければなりません。グリッド後方からスタートすることになってしまったのは残念でしたが、目の前の一戦でなく、シーズン全体を考えなければならないのです。

ストフェル・バンドーン

金曜のFP1とFP2の間にはマシン調整を行う時間がありますが、その間にもスポンサーの対応を少ししました。FP2のあとにはまたミーティングをして、さらにメディアのインタビュー、そこからドライバーズブリーフィングに向かいました。このブリーフィングの内容はレースごとに変わります。すごく短いときもあれば、レギュレーションやヘイローのような新要素について話すときには長時間に及ぶこともあります。

ブリーフィング後、また少しエンジニアと話し、走行後になにを変更したのかを確認しました。それを持ち帰り、翌日までにきちんと把握しておかなければなりません。

土曜に行われたFP3でも引き続きレースペースの向上に注力しました。そして、午後の予選では、フェルナンドとお互いのトウ(前を走るマシンが風除けになって、後ろのマシンのトップスピード向上を助けること)を使い合って、Q1を突破。好調さを示す10番手につけました。Q2では再びフェルナンドをアシストしましたが、僕自身は決勝で20番グリッドからスタートすることが決まっていたので、計測ラップを行いませんでした。予選後の夜には、さらなる取材対応とエンジニアとの打ち合わせが待っていました。

日曜のレースに気持ちをすべて向けられたのは良かったですね。後方グリッドからのレースは厳しいものになると思っていましたが、何千人ものファンが早くからサーキットに詰めかけているのを見て、胸が高鳴っていきました。レース後に知ったのですが、今年のスパの観客数は過去最高だったそうです。

ストフェル・バンドーン

多くのオランダ人ファンと同様に、僕たちMcLaren-Hondaのメンバーもオレンジ色のウエアを着ていました。でも、こちらは8月30日に迎えたブルース・マクラーレンの生誕80周年を記念してこのカラーだったんです。そのスペシャルTシャツを着て戦略ミーティングを行い、レースプランを決めると、ドライバーパレードの時間になりました。スパ・フランコルシャンが満員のファンで埋まる景色は、まさに圧巻でした。

レースは予想通り厳しい戦いになりました。スタートをうまく決めて17番手まで上がりましたが、ストレートスピードが伸びず、オーバーテイクもディフェンスも難しい状況でした。それでも、14位でチェッカーフラッグ。セーフティカーに助けられた面もありました。

ストフェル・バンドーン

こうした厳しいレースからも、学べることはあるものです。レース後にはまたミーティングを行い、コバは新スペックのパワーユニットについて、パワーやドライバビリティ―、加速性などさまざまなフィードバックを求めてきました。

机上の理論と僕のフィーリングが異なることもあります。それは、シミュレーターではクリアラップのみで、レース中のバトルまでは再現できないからです。だから、僕は自分の言葉で、実際のレースにおける強みと弱みを伝えなければなりません。

ベルギーGPの1週間後には、連戦となるイタリアGPが控えていました。だから、レース後のミーティングが終わったらすぐにリセットして、次のモンツァに向けた準備を始めなければなりません。

こうしてF1を転戦する日々がまた続いていきます。でも、僕たちは決して歩みを止めたりはしませんよ。

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