モータースポーツ > F1世界選手権 > 第17戦 中国GP プレビュー
第17戦 中国GP

中国GPプレビュー

Honda Racing F1 Teamは、第17戦中国GPを戦うべく、富士スピードウェイから中国・上海へと向かう。同市中心部から40km離れた郊外にある上海国際サーキットは、一周5.451km。レースは全56周で戦われる。

コースは2002年、ヘルマン・ティルケによって設計され、翌年、沼沢地に建設された。このため地盤強化の目的で4万本もの脚柱を埋め込み、それからようやく工事に着手した。コースレイアウトが漢字の「上」を描いていることでも有名で、ピットレーンやパドック、メインビルディングといった施設の充実ぶりも、群を抜いている。

記念すべき1回目の中国GPは、2004年9月に開催された。この時は、現在、Hondaのチームメート同士であるルーベンス・バリチェロとジェンソン・バトンがレースをリードし、1、2位に入っている。また、バトンは過去2年で入賞を果たしているが、技術的にも非常に難易度の高いコースで、両ドライバーも走って楽しいと高く評価している。

テクニカル・チャレンジ

富士スピードウェイ同様、ここもグリップ重視の低速区間と、直線に代表される高速区間との兼ね合いが、セットアップの肝になる。2速で抜けていくコーナーが5つある一方で、十分な最高速も出さなければならない。となるとウイングを軽めにして、ドラッグ(前面抵抗)を減らす方向になりそうだ。高速コーナーも富士よりは多いとはいえ、マシン本来のバランスの良し悪しが、タイムに大きく影響するだろう。

重要なコーナーは、やはり低速区間である。これらに費やす時間の方が、絶対的に長いからである。しかし同時に、長く回り込む1コーナーや、ターン7、8の6速高速シケインは自信を持って攻めていくことが、タイムアップにつながることも事実である。最近のレースでは、雨が重要な役割を果たすことがある。局地的に天候が変わりやすい上海でも、予想外の事象に対応する必要がありそうだ。

 エンジン全開率:55%
 ブレーキ:中
 ダウンフォースレベル:中/高、7/10
 タイヤ:ミディアム/ハード
 タイヤの使い方:中
 平均速度:203km/h

チームトーク

ロス・ブロウン|Honda Racing F1 Team チームプリンシパル

―中国GPは、どんな週末になりそうか?
「母国GPの日本を終えて、次の中国はシーズン最終戦の1つ前のレースとなる。セットアップやダウンフォースレベルは、富士スピードウェイとほとんど同じだが、ウイングはやや重めになるかもしれない。一方で、ここはかなり長いコーナーがあるために、ブリヂストンは富士より1ステップずつ硬い、ミディアムとハードタイヤを投入する。この方が耐久性に優れ、タレにくいということだ。富士では非常に苦戦したが、中国GPでも決して楽観的な考えは持っていない。これは2008年の開発を切り上げ、2009年に集中したためでもあるが、その決断は、間違っていないと信じている。この週末は、変わりやすい天候という予報が出ている。そうなればコース上でいくつかの混乱が生じ、いっそうエキサイティングな展開になるだろう」

ジェンソン・バトン

―去年の中国GPでは、5位入賞を果たしました。サーキットには、どんな印象を持っていますか?
「レイアウトは、すごく気に入っている。非常に難易度が高いだけでなく、走っていて楽しい。多くの高速コーナーは攻めがいがあるし、2本の長いストレートでは、十分な最高速も要求される。ほかのグランプリサーキットとずいぶん違うだけでなく、抜き場所もいくつかある。特に1コーナーと、裏のストレートの入り口が、狙い目だ。フリー走行では、とにかく適切なダウンフォースレベルを見つけなければならない。なぜなら、いろんな特性のコーナーと直線との兼ね合いが、それで決まってしまうからだ」

ルーベンス・バリチェロ

―第1回目の中国GPを制したが、ここでいいタイムを出すカギは?
「最初の中国GPを勝てたこともあって、もちろんここにはいい思い出がたくさん残っている。サーキット自体、直線と低中高速コーナーが絶妙なバランスで配置されていて、すごく面白いし、技術的な難易度もすごい。特筆すべきは、ものすごく長く回り込んでいるコーナーが、2つもあること。具体的には、ターン1とターン13だ。ここを速く走るには、とにかく空力バランスに勝ることだ。また、2本の直線で十分な最高速を出せると同時に、コーナリング中の安定性も要求される。天候も重要な要素だから、週末の予報は気をつけて見なければならない」

アレックス・ブルツのコースガイド

上海の街自体は、あわただしくて、渋滞もひどく、正直大ファンというわけではない。でも上海国際サーキットはすばらしい設備を持っているし、このコースはドライバー、エンジニア双方にとって、非常に攻めがいがある。

レイアウト自体は、典型的なティルケスタイルと言っていい。各コーナー、あらゆる性格のものがそろっているからだ。まずターン1、2は、いつまでも終わらないんじゃないかと思えるほどの、右回りの「ネバーエンディング・コーナー」だ。長い直線を抜けて、時速約300kmでここに到達する。でもブレーキを踏むのは、ターンインを始めてからなんだ。ただしドンと踏まずに、長く踏み続ける間に、2速まで落としていく。コース全体で言えることだけれど、ニュートラル特性のマシンの方が、このサーキットは速い。でもそういうセッティングだと、ここはオーバーステアになりやすい。

ターン3へのアプローチは、下り坂を少しジャンプする感じ。この左はギアレシオによるけれど、1速か2速で抜ける。すでに最初の長いコーナーで、タイヤには相当のストレスがかかっている。だからここは、すごく滑りやすい。きれいに立ち上がって行くことも難しいけれど、それができないと次の全開のターン4、5、そしてそれに続く長いストレートで、タイムロスしてしまうんだ。

ヘアピンのターン6で一番難しいのは、正確なブレーキポイントで減速すること。なにしろ時速300kmで、ここにかっ飛んで来るからね。クリップについたら、できるだけ早くスロットルを開けたいところだ。そうやって速度を乗せて、次の右左の高速シケインに行きたいからだ。ここは6速全開。タイヤがしっかり路面をつかんでいることが、感じられるはずだ。

シケインを立ち上がったら、すぐに左の複合コーナー、ターン9、10が迫ってくる。ここはすごく大事なコーナーだけれど、最初の3速での左の進入がうまくいけば、たいていは大丈夫。2つ目の左は、ほぼ全開。ただしライン取りは、正確にしないと台無しだ。トラクションコントロールがない分、ここは去年よりは挙動が乱れやすそうだ。

6速に上げてすぐ、90m表示で減速して、タイトな左コーナーに飛び込む。もしここの縁石に乗れるようなセッティングだと、最初のセクターでは足回りが柔らか過ぎるはず。だからあえて縁石に乗らない方が、いいと思う。ここでコンマ5秒はロスするけれど、ほかの区間で十分取り返せる。このコーナーは、シルバーストーンのクラブコーナーをほうふつとさせる。右にステアを切って、あとはスロットルでコントロールしながら、出口まで向かうところがそっくりなんだ。

ターン13はバンクがついた、長い右コーナーだ。ここを全開で行くのは難しくないけれど、安易なステアリング操作はタイヤを壊してしまう。その先には、このコースで一番長いストレートが待っている。そしてヘアピン手前、時速320kmまでスピードが乗ったところで、フルブレーキングだ。ここが、最大の抜き場所だろうね。でもブレーキングでミスすると、簡単にコンマ2秒は失ってしまう。クリップにつけることに、集中することが重要だ。

ターン15を全開で抜けると、すぐに最終コーナーがやって来る。ここはすごく面白い。ちゃんとリズムに乗って走れれば、コーナリング中かなりのスピードを維持できるからね。そしてここを立ち上がれば、再びメインストレートというわけだ。

中国におけるHonda

・中国の自動車市場は成長を続け、2007年Hondaの販売台数は42.8万台(前年比:131%)。 さらに、2008年販売計画49万台(前年比:117%)と市場は堅調に推移している。

・特に、 今年にフルモデルチェンジしたアコード(1月)、フィット(欧州名Jazz、7月)に加え、シビック、CR-V、アキュラMDXなどの販売が好調である。