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第16戦 日本GP

日本GPプレビュー

Honda Racing F1 Teamは今週末、第16戦日本GPを戦うべく、富士スピードウェイへと向かう。サーキットは東京から約100km。創業者の本田宗一郎が1906年に生まれた故郷からもほど近い。

スピードウェイという名前が示す通り、もともとこのコースはオーバルコースとして設計された。しかし、その後設計変更され、1965年にロードコースとして完成した。その当時のレイアウトでは、1976年から2年間、F1が開催されている。そしてヘルマン・ティルケによるデザイン変更を含め、大々的な改修を行い、2007年にほぼ30年ぶりに、グランプリサーキットとして復活した。現在は一周4.563km。そして1.5kmものメインストレートが、最大の特徴である。

Hondaはこれまでに1988年と1991年の2度、自国日本GPを制してきた。さらに現在のレースドライバー2人も、日本ですばらしい成績を残している。ルーベンス・バリチェロは2003年の鈴鹿で優勝。ジェンソン・バトンは2004年に表彰台に上がり、2005年には最前列からレースをスタートしている。

レースの週末に先立って、バトンは東京・お台場で開催された、毎年恒例のモータースポーツジャパン2008に参加。RA108のデモランを行い、数万人のファンがF1の走りを味わった。

テクニカル・チャレンジ

このサーキットでのセットアップは、直線での最高速と低速コーナーでのグリップを、いかに両立させるかにある。1.5kmもの長さのメインストレートがある一方で、1、2速で攻めるコーナーが連続するため、ドラッグレベルを考慮しなければなれない。

このため、富士スピードウェイを走るマシンは、ほかのダウンフォースレベルの高いコースよりもスライドしやすい。つまり、ドライバーにとっては、バランスを取ることがより難しくなる。連続するコーナーとキャンバー変更に最もうまく対応できるマシンが、最速で走れるといえるだろう。

ドライバーから見ると、多くのコーナーが相互に連係している。したがって1個所でミスを犯すと、次のコーナーにも響いてしまう。特に重要なコーナーを挙げるとすると、まず複合クリップの右コーナーであるターン5。そこからすぐにヘアピンへとつながるため、立ち上がりに失敗すると大きくタイムロスしやすい。これはラップ終盤も、同様である。最後の2つのコーナーでは十分なリズムを保ち、ピットストレートに向かってきれいに立ち上がっていく必要がある。

 エンジン全開率:57%
 ブレーキ:低
 ダウンフォースレベル:中/高、7/10
 タイヤ:ソフト/ミディアム
 タイヤの使い方:中
 平均速度:202km/h

チームトーク

ロス・ブロウン|Honda Racing F1 Team チームプリンシパル

―日本GPへの想いは?
「Hondaにとっては一年のハイライトというべきイベントであり、日本の多くのファンの前で戦えることに、大きな誇りを感じている。私個人はHondaチームの一員として初めての日本GPであり、さらに富士スピードウェイも初体験だ。だからこの週末が、非常に楽しみだ。サーキットは去年の開催前に大規模な改修を行っており、施設やコースレイアウトは実に印象深い。全体の3分の2までは高速区間で、そこからは低速区間が続く。さらに去年は霧に加えて、台風のような悪天候にも見舞われた。富士山の近くという地理条件からしても、今年も変わりやすい天候が予想される。それがどれほどの影響を及ぼすか、そしてそれにいかに対策を講じるかを、しっかり見極めることが必要だ」

ジェンソン・バトン

―Hondaの母国でのGPは、楽しみなのでは?
「日本GPはチームにとって、イギリスに次いで今年2つ目の母国GPであり、とても特別なレースだ。日本のチームに所属しているということで、いつもすばらしい応援をしてもらってきた。ファンがものすごく熱心で、会場には熱気が渦巻いている。とはいえ、僕にとっての本当の日本GPは、やはり鈴鹿だ。何といっても、世界最高のサーキットの1つだ。来年戻ることが、待ち遠しくてならない。ただ、去年の富士スピードウェイも、僕は十分楽しめた。低速と高速の混在したレイアウトも、なかなか悪くない。多くのコーナーはクリップポイントが奥に回り込んでいて、これはほかではなかなかお目にかかれない。GPウイークの前は、お台場のイベントにも参加するし、すごく忙しい1週間になりそうだ。でも東京のど真ん中で、RA108をドライブする姿を、多くのファンが間近で応援してくれる。毎年のことながら、すばらしい体験だ。そして火曜日には東京のHonda本社で行われる記者会見に出席し、その後、富士に向かうことになっている」

ルーベンス・バリチェロ

―去年初めて体験した富士スピードウェイについて、どう思ったか?
「初めて走った富士スピードウェイは、コースそのものが非常に印象的だったね。中盤まではリズミカルで、それが終盤はタイトな、攻めがいのあるコーナーの連続になる。事前に思っていたよりずっと、面白いサーキットだった。ただしドライ路面での走行がすごく限られていたし、レース自体はびしょ濡れの中で行われた。だから通常のGP週末との比較は、ちょっと難しい。ただ、何個所か抜くポイントがありそうだ。日本自体は、来るたびに楽しい思い出を作っている。それに何といっても、Hondaの母国GPだからね。Hondaドライバーとして、いつもすばらしい歓声を受ける週末だ。日本のF1ファンは、本当に熱狂的だから」

アレックス・ブルツのコースガイド

富士スピードウェイはドライバーにとって、大きな挑戦だ。もっと高速で、度胸の必要な鈴鹿より、恐らくいいタイムを出すのは難しい。ここではマシンを、より優しく扱ってあげる必要がある。特に終盤の低速区間では、ほんの少しのミスがすぐにコンマ5秒のロスにつながるからね。

なぜそこまで厳しいかといえば、通常よりダウンフォースを削った状態で走るからだ。低速コーナーが連続しているからといって、モナコレベルのウイングを付けるわけにはいかない。それでは1.5kmの直線で、後れを取ってしまう。路面がもともと滑りやすい上に、空力的にもグリップが望めない。つまり、そこかしこにワナが待ち受けているサーキットというわけだ。

ターン1に突っ込むときには、速度は時速306kmまで伸びている。ブレーキングポイントは、100mボードのすぐ前。同時に7速から1速まで、一気に落とす。コーナーはやや下りで、だから車輪をロックさせて、クリップポイントを逃しやすい。出口に向けては、アクセル全開。ターン2を抜けて、ターン3に到達する。この左コーナーは、かなり難易度が高い。タイムを稼ぐには、イン側の縁石に思いきってぶつかっていく必要がある。もし10cmでもクリップを外したら、出口で草の上にはみ出してしまう。

次のターン4、5は、このコースで最良の右コーナーといっていい。複合クリップで、普通は5速で抜けていく。コーナー中盤でややスロットルを抜けば、左フロントタイヤへの負担が軽減される。そしてより簡単に、マシンがイン側に寄ってくれるはずだ。そうすれば次の左への進入が、いっそうやりやすくなる。いずれにしてもかなりの高速コーナーだから、すごいGフォースがマシンと身体にかかる。それがものすごく、楽しいんだ。

3速のターン6は上り坂の頂点にあるので、完全にブラインドだ。もしターン5の出口で十分に右側に寄せていられたら、かなり速いコーナリングスピードが期待できる。ターン9までは、ほぼ全開。そしてターン10のシケインには、1速まで落として突っ込んでいく。グリップは、イン側の方がいい。つまり、かなり狭いラインしか使えないということだ。そこから次の左に向かうまでに、わずかに加速する。ここは出口がひどく滑りやすい。2速に上げても、簡単にホイールスピンするだろう。そこからターン12までは、トラクションコントロールのない今のマシンでは、ひどく扱いづらいコーナーになっているだろうね。

そして最終区間にある4つのコーナーは、すべてが連動している。最初の1つでミスすれば、そこでの失速が最終コーナーまで響いてしまうんだ。だからラインを正確にたどっていくことが、すごく重要になる。最初のターン13は、丘の頂上越えからアプローチが始まる。リアは一気に軽くなるから、3速の右コーナーでそんなに速くないにもかかわらず、細心のマシン操作を心がけないといけない。そして左コーナーに突っ込んで、ターン16の最終コーナーへと駆け上がっていく。立ち上がりでスピードを乗せるよう、リズミカルにクリアしないといけない。

富士スピードウェイの週末は、天候が大きな要素となる。去年はずっと雨続きだったし、今年も3日間ドライ路面というのは考えにくい。でも個人的には、あまり曇り空にはなってほしくないね。青空を背景に雄大な富士山を眺めるのが、大好きだから。過去に何度かそんな風景を見たことがあるけれど、地球上で最も見事な山の1つだと思う。毎朝起きて部屋のカーテンを開けるとき、窓の向こうに富士山が姿を見せているか、あるいは雲に隠れてしまっているか。今年もそのたびにドキドキするだろうね。

日本におけるHonda

・Hondaは1948年、本田宗一郎が静岡県浜松に創設した小さな町工場が出発点だった。その後60年の間に、世界的な企業に成長し、従業員(連結)は現在17万8000人。
・2007年には国内で62万台以上の乗用車、33万台のオートバイを販売。2009年に小川エンジン工場が、2010年に年産20万台規模の寄居四輪車工場が埼玉県に新たに稼働する。
・世界をリードする次世代の燃料電池車「FCXクラリティ」が、国内で2008年秋にリース販売を開始。また、7月に開催された北海道洞爺湖サミットに提供され、2008 INDY JAPANのオフィシャルカーにも採用された。
・Hondaは、鈴鹿と茂木にサーキットを保有。2009年の日本GPは、改修を経た鈴鹿サーキットで再開される。
・ツインリンクもてぎでは、毎年IRLとMotoGPが開催される。併設のHondaコレクションホールには、Hondaの輝かしい軌跡をたどれる350台以上の量産車やレーシングカーが展示されている。

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