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第14戦 イタリアGP

イタリアGPプレビュー

Honda Racing F1 Teamは今週末、第14戦イタリアGPを戦うべく、ミラノ郊外のモンツァへと向かう。全長5.793kmのアウトドローモ・ナチオナーレ・ディ・モンツァ(モンツァ・サーキット)で行われる53周のレースは、今季のヨーロッパラウンド最後のGPでもある。

モンツァはまた、今年のGPカレンダーの中で、最も歴史あるサーキットの1つで、かつ、最も高速なコースである。1922年に建設され、1950年にF1GPが行われて以来、1980年を除いて、毎年イタリアGPの舞台となってきた。有名な45度もの急バンクこそ、1961年以来使われていないが、4本の長い直線を持ち、最高時速340km、平均速度も時速250kmを超えるこのコースは、スピードの殿堂と呼ぶにふさわしい。

Hondaは、第1期、2期で、これまでにモンツァで通算6勝している。そして最近では2004年に、ジェンソン・バトンが3位表彰台に上がっている。ルーベンス・バリチェロはここで、2002年と2004年の2度、優勝経験がある。

テクニカル・チャレンジ

モンツァ攻略のカギは、エンジンパワーと空力性能である。そのためチームは、特別仕様の非常に低いダウンフォースの空力パッケージを用意する。今季、最も遅いサーキットと比較して、約30%もグリップを失うことになる。

セットアップで難しいのは、時速300km超からの急減速、そしてコーナー立ち上がりでのマシンバランスである。今季から導入された共通ECUは、この部分でのパフォーマンスに大きな影響を与えている。タイムを削るためには、低ダウンフォースでの安定したマシンバランスが最優先だ。また超高速で走行するのと同時に、3個所のシケインでしっかり縁石に乗る必要がある。そのため車高は、ある程度確保しなければならない。

重要なコーナーは2つ。レズモの2つ目と、パラボリカである。ともにその先に長いストレートが控えており、クリップにつく前に十分にパワーを落とし、きれいに立ち上がっていかなければならない。

 エンジン全開率:75%
 ブレーキ:ミディアム
 ダウンフォースレベル:低、1/10
 タイヤ:ミディアム/ハード
 タイヤの使い方:低
 平均速度:250km/h

チームトーク

ロス・ブロウン|Honda Racing F1 Team チームプリンシパル

―モンツァ攻略の上で、RA108のセッティングで、難しい部分はどこか?
「モンツァほど低ダウンフォースでのセットアップが要求されるサーキットは、ほかにはない。そのため、ここだけの特別仕様のパーツは、膨大な数になる。直線で時速340kmに達するには、ドラッグをできるだけ減らさなければならない。当然フロントとリアの両ウイングは、非常に小さいものを使う。ノーズ上のウイングも、取り外すことになるだろう。エンジンカバー、バージボード、そのほかの空力デバイスもそれぞれ分析を加え、必要ならなくすか、サイズを小さくする。ここは長い直線からのフルブレーキングも少なくないので、ブレーキ面でも厳しい。路面もバンピーで、縁石にも乗る。そこを低ダウンフォースのマシンで走るため、サスペンションの働きが、非常に重要となるだろう」

ジェンソン・バトン

―イタリアGPに向けての抱負は?
「モンツァでのレースは、いつも楽しみにしている。イタリアのファンの、レースにかける情熱はものすごい。この週末、マシンを速くする作業に没頭していても、サーキット周辺の興奮や熱気はガンガン伝わってくる。それにモンツァは、レースの歴史そのものだ。以前、旧コースのバンクを歩いたことがあるのだけれど、ここでレースを戦ったドライバーたちのことを、心の底から尊敬するよ。ここはほかのGPコースとは、全く違うコース特性を持っている。超高速だし、直線で最高速を得るために、できるだけダウンフォースを削る。

一周の中では、アスカリが一番好きかな。ドライブしていて、ここが一番楽しいよ。パラボリカもいい。特に、予選でマシン性能を最大限に引き出さないといけないときはね。ブレーキもできるだけ遅らせる。でも、少しでもブレーキングが遅過ぎると、すぐにコースを飛び出して、壁が待っていることになる。逆に思い通りの攻略ができたときは、最高の気分だ。スタート直後の1コーナーも面白い。時速290kmから時速80kmまで急減速しながら、20台のマシンがいっせいに押し寄せる。しかもタイヤは冷えていて、すごく滑りやすいんだ」

ルーベンス・バリチェロ

―ここで、2度の優勝経験があるが、モンツァを速く走るためのカギは?
「モンツァは特別なサーキットであり、ここでレースを戦えるのは、本当に名誉なことだ。ましてや優勝した2002年と2004年の経験は、忘れられない思い出になっている。全GP中最速なだけに、エンジンパワーはいくらあっても足りない。一方で、ストレートでのスピードを確保するために、できるだけダウンフォースを削る必要がある。そのため、本当に重要なことは、安定した挙動だ。急減速して縁石に乗る際にも、できるだけアンダーステアの出ないマシンが理想だ。そしてレティフィーロやロッジアのシケインからの立ち上がりには、十分なトラクションもほしい。ここは重要な、抜きどころでもあるからだ。ただし最新の空力性能を備えた今のF1では、なかなかスリップストリームにつけないことも確かだ」

アレックス・ブルツのコースガイド

モンツァには、特別なものがたくさんある。独特なマシンセッティング、熱狂的なファンたちの歓声、そびえ立つような旧バンクコース、そしてその名前そのもの。そのすべてが、僕は好きだ。今やF1カレンダー唯一の超高速コースだし、すべてのことが、とてつもない速さで起きる。年中レースをしていても、これに慣れるには数周はかかる。

ドライビングそのものでいっても、モンツァは信じられないほど面白いものが混じり合っている。マシンを壊すのもいとわないぐらい、縁石にアグレッシブに乗っていく一方で、同時にダウンフォースが極限まで削られているから、スロットルワークはものすごく細心に行わないといけない。

ターン1は、ブレーキングがすべてだ。時速340kmまで伸びている車速を一気に減速するから、どうしても速度を落としきれないことが多い。ここでは縁石をうまく使わなければならない。この出口は、とにかくきれいに立ち上がることを心がける。そこからクルバ・グランデを経て次のシケインまで、長い直線が続くからね。2つ目のシケインのブレーキングポイントは、路面がすごく荒れている。そして縁石は、ジャンプするように乗り越えていく。最高に面白い。

2つのコーナーがあるレズモには、4速で進入する。コーナーは両方とも、すごく滑りやすい。最初の方はややバンクがかかっているから、コーナリング途中はアンダー、出口でオーバーが出やすい。2つ目はリズムに乗って、立ち上がりに集中することが重要だ。

次がアスカリの上り。GPサーキットのコーナーで、最良の1つだろう。路面がバンピーだから、ブレーキングは難しい。ひとたびターンインを開始したら、すぐに内側の縁石にジャンプする。そのまま回転数を落とさないようにしながら、次の右左を攻めていく。簡単に全開でいけるけれど、アンダーステアかダウンフォースがつきすぎる傾向に陥りやすい。それを避けるために少しでもスロットルを戻そうとすると、今度は大きくタイムロスしてしまう。

最終コーナーのパラボリカは、できるだけブレーキングを遅らせる。大体60m手前で、ブレーキをけ飛ばす。そして7速から4速まで落とす。進入では、挙動は相変わらずすごくナーバスだ。そして、クリップにつく前から、スロットルを踏んでいく。この時点では、出口の白線のどのあたりに達することになるか分からないんだ。何度走っても、ドキドキするよ。

イタリアにおけるHonda

・2007年のイタリアでの乗用車販売は2万6000台を超え、1990年のHonda Automobili Italia S.P.A.創設以来、最多となった。一方、二輪車市場においては、モーターサイクルの販売台数が15万2000台、スクーターは27万8000台に達し、21%のトップシェアを誇る。
・四輪車の輸入販売拠点であるHonda Automobili Italia S.P.A.はベローナにあり、99のディーラーを持ち、152の販売店、24の認定サービスショップがある。