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第13戦 ベルギーGP

ベルギーGPプレビュー

Honda Racing F1 Teamは今週末、第13戦ベルギーGPを戦うべく、スパ・フランコルシャンへと向かう。ここは1950年のF1GP発足時からカレンダーに組み込まれた、最古のGPサーキットの1つである。そしてモンツァと並んで最も高速、かつ難易度の高いコースの1つとしても有名である。

最初期のスパは一周14.9kmの長さだったが、その後、何度もレイアウト変更を受け、現在は7.004kmまで縮められている。それでも現在のGPサーキット中、最長である。さらに、アルデンヌ山脈の自然な起伏を生かしたレイアウトには、オリジナル・コースの多くの特徴が残されている。その結果、高速かつリズミカルなこのコースは、多くのF1ドライバーの称賛を集めている。

Hondaの両ドライバーは、ともにスパで表彰台に上がった経験がある。最近では、2005年の雨で中断されたレースで、ジェンソン・バトンが3位表彰台を獲得した。またルーベンス・バリチェロは1994年、ここで自身初のポールポジションを得ている。

テクニカル・チャレンジ

スパは長年にわたってレイアウトが大きく変わっていないため、各チームは十分なデータを持っている。しかし、だからといって、コース攻略がたやすいわけではない。

スパの一周には、あらゆる種類のコーナーが配置されている。さらに長い直線もあり、空力的に最適なセットアップを探すのは非常に難しい。通常は、ターン5から14までの曲がりくねった第2区間で速いマシンが、アドバンテージを得ることが多い。そのセットアップをもとに、直線の多い第1、第3区間に合わせ込んでいけるからである。逆に、もし第2区間でバランスが悪い場合、さらにウイングを重くするしかない。すると第1、第3区間でタイムが出せないという悪循環に陥ってしまう。

ブリヂストンはここにハードと、ミディアムの2種類のスペックを持ち込む。このコースではどのチームも、グレーニング(ささくれ磨耗)の心配をする必要はないだろう。高速コーナーが連続するレイアウトのため、ブレーキングにおいて最も易しいコースの1つとなるはずだ。

スパといえばオー・ルージュがあまりにも有名だが、2006年のV8・2.4リッターエンジンの導入以来、このコーナーは7速全開で容易に駆け抜けられるようになった。とはいえ、この急坂ではステアリングを切りすぎて、スピードを殺さないよう注意する必要がある。さもないとレ・コンブに向けての長い直線で、大きなタイムロスを喫してしまうからだ。

 エンジン全開率:68%
 ブレーキ:低
 ダウンフォースレベル:中、5/10
 タイヤ:ミディアム/ハード
 タイヤの使い方:ミディアム
 平均速度:230km/h

チームトーク

ロス・ブロウン|Honda Racing F1 Team チームプリンシパル

―ベルギーGPに向けての改良に対して、どれほどの期待を持っている?
「この夏休みの間、RA108はかなりの進化を遂げた。しかし、残念ながら前戦バレンシアでは、それを予選やレースの速さに結びつけることができなかった。今回のスパでの我々の目標は、この改良をまずは予選結果に反映させることだ。それがひいては、ジェンソンとルーベンスがレースで上位フィニッシュできることにつながるからだ。さらにモンツァテストで、新しいブレーキシステムを試した。バレンシアでルーベンスが見舞われたトラブルは、これで解決できるはずだ。さらに、中レベルのダウンフォースを要するスパ向けの空力スペックも持ち込む」

―スパ・フランコルシャンならではの、難しいポイントは?
「スパは最も伝統あるサーキットの1つで、私自身大好きなコースだ。高速で、しかも難易度が高いために、ドライバーたちにとっても非常に攻めがいのあるコースになっている。それはエンジニアにとっても同じだ。もし正しくクルマを仕上げられれば、すぐにタイムに跳ね返る。オー・ルージュの脇で、F1マシンが全開で駆け上がっていくのを間近に見ると、いまだに髪の毛が逆立つほど興奮する。ここでは、変わりやすい天候も重要な要素となる。これまでも、天気がどんでん返しを演出してくれたレースは何度もあった。今年のHondaマシンも、ウエットの方がいいパフォーマンスを発揮できている。その意味でも、不順な天気を嫌がる理由はないよ」

ジェンソン・バトン

―ベルギーGPへの抱負は?
「僕も含め、あらゆるドライバーが、あの美しいスパで走ることを楽しみにしている。自然に囲まれていて、雰囲気がすばらしいだけじゃなく、運転していても最高だ。あれだけ攻めがいのあるコースは、ほかに鈴鹿とシルバーストーンぐらいだ。有名なオー・ルージュでは、丘の底でマシンが路面を打って、そこから一気に駆け上がっていく。あの感触は、一生忘れられないだろう。ドライ路面でさえすごいから、雨のときには正気のさたとは思えない。今年のHondaマシンは雨の状況で戦闘力を発揮できている、スパの変わりやすい天候は大歓迎だよ。コースの反対側で雨が降っていても、こちら側は完全ドライなんてことは、スパでは珍しくない。どんな状況になっても、すぐに対処できるようにしておかないとね」

ルーベンス・バリチェロ

―バレンシアではいろいろなトラブルに見舞われたが、ベルギーではいいレースが見せられそうか?
「今回のモンツァ・テストはいい感じだったし、バレンシアでのブレーキトラブルも解決できたと思う。スパは全GP中、最良のサーキットの1つだ。天候がレース展開を大きく左右するし、抜き場所もある。必ず、面白いレースになると思う。高速で流れるようにスムーズなこのコースをF1マシンで走るのは、本当にほかでは得がたい経験だ。トップギアから一気に落とすコーナーが少ないおかげで、タイヤやブレーキ、エンジンにはさほど大きな負担はかからない。ダウンフォースは中レベルで、モントリオールと同じくらいだ。ただし天候によっては、さらに重いダウンフォースに変えられるよう、いつも準備しておかないといけない。それからスパは全GP中最長のコースだから、フリー走行や予選でコースに出るタイミングも、すごく重要だ」

アレックス・ブルツのコースガイド

スパは昔ながらのコースレイアウトで、それがすごくいい感じだ。望むべき要素は、ここにすべてある。大きな起伏、高速コーナー、長い直線。天候はまったく予測できないけれど、スパに行くのはいつも楽しみだ。太陽が照っていたかと思えば、10分後には大雨なんてしょっちゅうで、それもまたスパの魅力だ。

一周はすごく長く、そして速い。低速なのはターン1のラ・スルスぐらい。そしてここでの立ち上がりでは、とにかくスピードを乗せないと。ここからオー・ルージュの先のレ・コンブまで、ほとんど全開だからだ。確かにオー・ルージュはV8エンジンになってから、全開でいけるようになった。でもステアリングを切りすぎると、路面との摩擦で簡単に減速してしまうんだ。

レ・コンブまでの直線は、7速全開だ。そしてコーナー左側の縁石に達するまで、決してブレーキを踏んではいけない。だいたい、60メートル手前ぐらいだ。右左右と連続する複合コーナーは、それぞれがリンクしている。だから最初の右で攻めすぎると、あとの2つでラインを乱してしまう。これで簡単に、コンマ5秒は失う。

ターン8のリバージュまで下る間に、5速まで上げる。そしてヘアピンのブレーキングで、2速に落とす。ここはものすごく滑りやすい上に、ブレーキングポイントにあきれるほど大きなバンプがある。だからここでクルマをしっかり減速させるのは、すごく難しい。いかにセットアップをがんばっても、ここでアンダーステアになるのは仕方ない。立ち上がりはわずかに逆キャンバーで、トラクションコントロールの付いていない今年のクルマではリアが暴れ、ドライバーが格闘する姿が見られるはずだ。

ターン9は4速の、きわめて速いコーナーだ。マシンを安定させるため、ブレーキはちょんと触る程度に。すぐさまターンインして、クリップで縁石に乗り、スムーズに立ち上がっていく。ここでは突然クルマの挙動が変わりやすく、なのにランオフエリアはないに等しい。そのため、相当慎重に攻める必要がある。

次のプーオンは、すごく速い左の複合コーナーだ。予選では6速でここに達して、わずかにブレーキング。ハーフスロットルのまま、コーナリングしていく。ここは一周のうちで、一番難易度が高いコーナーかもしれない。長いコーナリングの間、ずっとマシンの限界を探っている感じだから。クリップの通過速度は実際には時速230km程度だけれど、もっとずっと速く感じる。

ごく短い直線のあと、ファーニュのシケインに到達する。ここの路面はすごくグリップがあり、そのままの勢いで縁石に乗って、スピードを維持する。再び短い直線を抜けると、ターン14、そして15のスタブロが待ってる。ここも滑りやすいけれど、立ち上がりの速度がすごく大事だ。ここからバスストップまで、ずっと全開だ。3速でコーナリングして、縁石を目一杯使って立ち上がっていく。

ブランシモンの左コーナーも、全開。その先のバスストップシケインは2006年に改修されて、すっかり遅くなってしまった。最初の右はクリップが後ろの方で、立ち上がりはトラクション不足と格闘することになる。個人的には、全開で立ち上がっていけた昔のバスストップの方が、好きだ。ガードレールにギリギリまで迫りながら全開加速していくあのスリルは、たまらない。

ベルギーにおけるHonda

・Hondaのベルギーでのビジネスは堅調に推移し、2007年の四輪車販売は2004年以降伸びており、二輪車市場では17%のシェアを占め、マーケットリーダーとなっている。また、芝刈機(ガソリン機)市場では25%のシェアを誇る。
・ベルギーにある工場では、この国でも最大級といえる、1万3000m2のソーラーパネルを利用した屋根を使用。