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第12戦 ヨーロッパGP

ヨーロッパGPプレビュー

Honda Racing F1 Teamは、今週末、第12戦ヨーロッパGPに挑む。舞台は、初のF1レースが開催される、スペイン・バレンシア市街地サーキット。一周5.440kmの新コースはヘルマン・ティルケが設計した。昨年のアメリカスカップ(国際的なヨットレース)の拠点となったフアン・カルロス1世マリーナを取り囲むようにデザインされ、全57周のレースを戦う。

ヨーロッパGPという名称が使われたのは1997年が最初で、そのときはスペインのバルセロナとヘレスの2個所でF1が行われたが、バレンシアでの開催は今回初めてとなる。バレンシアは、各チームにとってはなじみの地名である。冬の間、市内から20kmほど離れたリカルド・トルモ・サーキットで、ひんぱんにテストを行うからである。しかし、ここでグランプリを開催するには、大規模な施設改修が必要となる。そこで市内の沿岸地区に、新たな市街地サーキットが設けられた。

この市街地サーキットは25のコーナーを有し、コース幅は狭いところで14メートルとなっている。そのレイアウト特性と安全性の高さは、他のF1サーキットに引けを取らない。市街地コースでありながら時速300kmを超える区間でも、十分なエスケープゾーンが設けられている。

テクニカル・チャレンジ

Honda Racing F1 Teamは、このGPに備えてあらゆるデータを参考にした。このサーキットでは、7月最終週にF3のレースが行われている。これは、このサーキットで初めて行われたレース。このデータと、F1スペインGPの開催地、カタルニア・サーキットでのF3のデータを比較して、そこからRA108の基本セッティングを構築していった。

さらに、これらのデータはギアレシオやダウンフォースレベルを確かめるべく、コースシミュレーションデータにも取り入れられた。このコース特性から導き出されたマシンの技術要求は、ホッケンハイムのそれに近いことがわかった。

もちろんそれ以外に、実際にバレンシアで走行しないことには、出ない答えも少なからずある。たとえば新しいアスファルト舗装のグリップレベルなどは、初日に走るまではわからない。最適なマシンバランスを得るために、ドライバーからのフィードバックが非常に重要となるだろう。

 エンジン全開率:68%
 ブレーキ:高
 ダウンフォースレベル:高、7/10
 タイヤ:ソフト/スーパーソフト
 タイヤの使い方:ミディアム
 平均速度:200km/h

チームトーク

ロス・ブロウン|Honda Racing F1 Team チームプリンシパル

―未知のバレンシアを戦うにあたり、チームはどんなアプローチをしているのか?
「このサーキットを臨時のレース開催地とみなす人々もいる。しかし、実際にはきわめて入念に準備され、建設された“パーマネントな”市街地サーキットといえる。非常に高速で、流れるようなコースだ。これは例えば、我々が見慣れたモナコなどとは異なる。

ここではすでにスポーツカー・レースやスペインF3が行われており、そこから何が得られるのか、両レースのデータを取り寄せた。2つの高速コーナーでのダウンフォースは中から低レベルで非常に難易度が高く、面白いレースになりそうだ。コース攻略を考える上で重要な要素は、かなりの強い風が予想されることだ。アメリカスカップが開催されたのは、まさにその理由も大きかったはず。最適なマシンバランスを得るには、かなり難しい作業が必要だ。技術的にも大きな挑戦となるこの週末を、本当に楽しみにしている」

ジェンソン・バトン

―このコースでのレースは、どのような展開が予想されるか?
「最初に考えるのは、今まで走ったことのないサーキットだということ。しかも、コース中がバリアで囲まれているんだ。でも、バレンシアでのレースは、今からワクワクしている。街自体が非常に美しいし、その中をF1マシンで走れるなんて最高だ。ほかのチーム同様、僕らもファクトリーのシミュレーターで、ずいぶんコースの習熟を行ってきた。もちろん実際に走るのと比べれば、マシンからの感触で足りない部分もある。でも距離感やブレーキングポイントは、これで十分に把握できる。F1カレンダーにはモンツァやスパ、シルバーストーンのような高速コースもあれば、モナコ、ハンガリーのような低速コースもある。バレンシアは恐らく、その中間というところだろうか。その特性に加えて、コース全体がバリアに囲まれているわけだから、一瞬も集中を途切らせられないだろう」

ルーベンス・バリチェロ

―バレンシアに向けての抱負は?
「新しいサーキットを走るのは、いつだって興奮するものだ。特にそれがバレンシアのような、市街地サーキットならなおさらだ。事前にできるだけの準備を重ねてきたとはいえ、木曜日にエンジニアたちとコースを歩き、金曜日に実際にマシンで走るときの感触は、コースを理解し、グリップレベルを見極める上で、重要なポイントとなる。未知のコースでは、ドライバーのフィードバック能力もすごく重要になる。エンジニアたちはそれを基に、マシンをチューンナップしていくわけだから。準備は万端で、ポイント獲得を期待したい。この週末は暑そうだから、肉体的にも過酷なレースになりそうだ。この美しい街が、僕は前から大好きだった。ここでのレースで、新たなF1ファンが増えればいいなと思う」

アレックス・ブルツとマイク・コンウェイのコースガイド

アレックス・ブルツ

「2000年にバレンシアで初めてF1テストを行ったときのことを、今でもよく覚えている。あのころはこぢんまりとした町だったのが、それから急速に発展して、今やスペインを代表する最先端の都市になった。見どころがあり、常に変化し続けている。ここではサッカーやアメリカスカップなど、大きなスポーツイベントも開催される。これらのスポーツが開催されていることは、F1にとっても、いいことだ。間違いなく、みんなが大好きなグランプリになるはずだ。

未知のコースというのはドライバーにとっては、いつも大きな挑戦だ。そして今回の場合は、市街地サーキットという要素も加わる。走り始めは路面が汚れていて、滑りやすいだろう。セッション中は、決して一気に加速しようとしないことだ。コースはバリアに囲まれているから、1つのミスが命取りになってしまう。僕個人は市街地サーキットが大好きだし、週末のレースはきっと最高に楽しいはずだ」

マイク・コンウェイ

「このコースでは、ハンガリーGP前のGTスポーツカーレースを戦った。高いコンクリート壁がそびえているところが、同じ市街地でもモナコとは違う印象だが、攻めがいのあるサーキットであることはいうまでもない。ターン1は、縁石を使った右コーナー。F1なら、全開で抜けていくだろう。そしてターン2で、急減速。2速に落として、右にステアリングを切る。ターン3は4速、そして5、6のコーナーを経て、橋の進入地点にさしかかるターン8のブレーキング直前には、7速まで加速する。

このコーナー付近は小さなバンプがある。特に、ウエット路面だとかなりすべる。そこから90度の右コーナーを抜けると、長いストレートが控えている。予選アタックのときは、ここで遅いクルマに引っかかってタイムロスする恐れがある。加速ポイントだけに、マーシャルに注意を払う必要がある。

ターン12で、ハードブレーキング。ここは目の前に信号があって、建物もそびえている。いかにも市街地を走っている、という気分になれる区間だ。そこから左左と抜けて、すぐに4速90度のターン14だ。そこから再び長いストレートが続く。突き当たりは、マニクールのアデレイド・ヘアピンを思わせるようなコーナーだ。ここは間違いなく、オーバーテイクポイントになるだろう。

そこからの最終区間は、いくつか高速コーナーが控えている。でも最後に、かなりタイトな左コーナーが待っている。立ち上がりでスピードを乗せることに集中して、スタート・フィニッシュラインへと向かうんだ」

スペインにおけるHonda

・スペインでは、二輪製造販売を行うモンテッサ・ホンダ・エス・エーが1986年からビジネスをスタートし、四輪販売を行うホンダオートモービルズエスパーニア・エス・エーは1988年に設立された。現在、二輪、四輪、汎用、ロジスティック、ファイナンスの5つのビジネスを行う。
・2007年には2万6250台の四輪を販売して、記録を更新した。

スペインでの「earthdreams」プロジェクト

チームは、F1を通じて地球環境の改善を呼びかける「earthdreams」活動の一環として、イギリスGPに引き続き「earthdreams experience」という高さ12mあるドームを、バレンシアにあるモーターボックスセンターに設置し、8月21日(木)にオープンする。ドーム内は、180度にわたり5面ものスクリーンを備えたシアターとなっていて、Honda F1の歴史と世界各地で展開中の「earthdreams」プロジェクトの活動内容を映像を通じて紹介する。